第75話 奴隷マネージャー(2)

飯島は嗜虐的な笑みを浮かべる。
「嫌なら別に構わないぞ。こちらも何も無理に雇う必要はない。お前がどうしてもマネージャーになりたいというからこうやって忙しい時間を割いて面接をしているんだ」
「う……」
貴美子はぐっと言葉に詰まる。
今はなんとしてもマネージャーに雇ってもらう必要がある。それが出来なければ、貴美子の恥ずかしい姿を撮影した写真が大学の同級生、高校の同窓生、空手道場の仲間など貴美子の携帯電話に登録されたアドレス全てに一斉に送信されるのだ。
「わかりました……着させていただきます」
飯島は満足げに頷く。
「もったいぶらずに最初からそういうんだ。それでは業務の内容だが……」
飯島は部室に置かれた黒板にチョークを使って何事か書き始める。黒板には部員の書いたであろう稚拙な女性器の落書きが消されないまま隅のほうに残っている。
「練習時間は早朝が7時から8時まで。放課後は3時30分から6時まで。マネージャーは練習開始最低1時間前に部室に来ること。業務終了は後片付けなどの関係で練習終了の1時間後になる。つまり拘束時間は朝は6時から9時まで、午後は2時30分から7時までの1日合計7時間30分となる」
貴美子は泣きそうな気分になった。これからずっと1日7時間半の労働を強制されるのだ。9時から2時半までは時間が空いているとはいえ、これでは大学の授業はろくろく受けることが出来ないだろう。
「練習時間は、まったく部員と同じように扱うからそのつもりでいろ」
「えっ?」
貴美子は驚いて聞き返す。
「ど、どういうことですか?」
「練習中はマネージャーは手持ち無沙汰だ。だからといってぼおっとしていられたんでは部員のやる気にもかかわる。マネージャーとしての仕事がない時は、部員と同じように練習を受けてもらうから覚悟しておけということだ」
飯島は再びにやりと残酷な笑みを浮かべた。
「もちろんその間に用務員補助としての仕事が入ることもある。村田という70近い爺さんの用務員がいる。名前が清作というので生徒からはもっぱらセイサクじいさんと呼ばれている。そのセイサクじいさんがお前の上司だ」
貴美子はあまりのことにふっと気が遠くなる。汗臭い高校野球部のマネージャーとして働かされるだけでなく、用務員の手伝い、そして部員と同じような練習まで強制されるのだ。
むろん、それが終わってももし龍から呼び出しがあったら断る訳には行かない。龍は貴美子の疲労などお構いなしに、マッサージや鍼を駆使して貴美子の肉体を責め立てるだろう。
このような生活にどこまで耐えることが出来るだろうか。いや、それ以前に悲劇的な破綻が来るのではないだろうか。
「俺から言うことは以上だ、わかったか」
「はい……」
貴美子は仕方なく答える。
「返事がなってない!」
飯島のビンタが貴美子の頬に飛んだ。
「あっ!」
力を抜いてはあったがそれでもその衝撃は激烈で、貴美子の身体は勢いで半回転する。
「ぼ、暴力なんて……」
抗議の声を上げようとする貴美子に、飯島の雷のような声が飛ぶ。
「これくらいのことを暴力だと騒ぐようじゃ、とてもマネージャーは勤まらないぞ。練習時間は部員と全く同じように扱うと言ったはずだ。当校では指導の意味を持つ体罰はむしろ奨励されている」
「なんてこと……」
貴美子は恐怖のあまり背筋に寒気に似たものが走る。
「はい、わかりました、飯島先生と大声で返事をするんだ。わかったか!」
「はい、わかりました、飯島先生」
貴美子は泣き出しそうになるのをぐっとこらえて答える。
「わかったら今から校内の挨拶回りだ。すぐに制服に着替えろ」
飯島は床に散らばった扇情的な服を指さす。
「ここで……ですか」
「当たり前だ。いっておくが、部室には女子用の更衣室などない。ここで着替えるのが嫌なら男子生徒に交じって部員用のロッカールームで着替えろ。愚図愚図言うならもう一発ビンタを食らわせるぞ」
「ここで着替えます……」
貴美子はしかたなくジャケットを脱ぐと、タンクトップに手をかける。露わになったストラップレスのブラジャーは女子大生らしい清楚なものである。
次にミニスカートを思い切って脱ぐ。ブラジャーとお揃いの白いショーツは、高級感のあるレースがあしらってある。下着姿になった貴美子からはむしろ脱ぐ前よりも本来の清純さが感じられ、飯島は急に胸が高鳴るのを感じ出す。
(蓮っ葉な格好に目を眩まされていたが……こいつは大した美人じゃないか……)
香織と龍に対して交わした約束では、貴美子をA工業高校の中で合法的な範囲で出来るだけ多くの人間の前で辱め、また自ら露出的な行為を演じさせ、淫乱娘の評判を確立させるというものだった。その報酬として飯島は、龍や香織の管理の範囲内で貴美子を抱くことが出来る。
香織たちの提案はどう考えても剣呑なものであり、飯島もさすがに簡単に乗る訳には行かなかったが、香織に対しては一応了解の返事をし、実際は貴美子に会ってから様子を見ながら行動を決めようと考えたのだ。
慶応の美人女子学生を意のままに従わせるというだけでも、飯島にとってエリートコンプレックスの解消と嗜虐趣味の充足という一石二鳥の効果があり、極めて魅力的な提案である。
今までの面接の様子では貴美子は龍に何か弱みを握られているのか、こちらの言うことに抵抗を示しながらもさほど大きな反発とはならないまま従っている。この様子ならこちらはさほど大きなリスクを負わないまま、かなり楽しむことが出来るのではないかと飯島は考え出していたところだ。
しかし一方で、清楚な下着姿で飯島の前に立ち、羞じらいに頬を染めている貴美子を見ていると、飯島はずっと忘れていた感情が湧き上がって来るのを感じていた。それは「この女をなんとか自分だけのものにしたい」という危険なものである。
35歳の飯島は7年前に結婚した同い年の、隣の市の高校でやはり教師をしている妻との間には子供もなく、夫婦仲は早くも冷えている。飯島の風俗通いに妻が愛想を尽かしたからそうなったのか、それとも仲が冷えたから飯島が風俗にのめり込んだのかははっきりしない。
そうはいっても貴美子に対して抱いた感情は、飯島の社会的基盤である教師という職業、また妻との関係を揺るがしかねないものであった。
「何をぼんやり突っ立っているんだ。早くしろっ」
飯島はそんな思いを振り払うように貴美子にわざと冷たく言い放つ。
「はい……飯島先生」
「言っておくが勤務中はブラジャーの着用は許さん。常にノーブラでいるんだ」
「はいっ! 飯島先生」
貴美子は一瞬顔をしかめるが、覚悟を決めたようにブラジャーとショーツを脱ぎ全裸になると、顔から火が出るような羞恥をこらえながら、用意された赤いTバックのパンティを素早くはく。貴美子の形の良い裸の乳房がブルンと揺れるのを、飯島は陶然とした表情で眺めている。

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