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2.山崎探偵の懊悩(2)

(わ、忘れます──あの人のことは、もう言わないで)
京子のすすり泣きの後、男の勝ち誇ったような声が続く。
(よく言ったわ。京子。ご褒美に京子のお好きな方法で責めてあげるわ。ねえ、一番いいのを教えてよ)
(は、恥ずかしいわっ)
京子は生々しい声をはりあげる。
(遠慮しなくていいのよ、さあ、京子)
やがて京子は、激しくすすり泣きながら、(ね、ねえ、あ、あなた──)と喘ぐように言う。
(何なの、京子)
(――お、おねだりしていい?)
(ああ、いいわよ。さ、早くおっしゃって」
(お願い。お、お尻の穴も一緒に、いじめてほしいの――)
息も絶え絶えといった感で、そんなことを口にする京子。良く言えたわね、京子という男の声。やがて京子の激しい吐息が聞こえてくる。
(いかが。お気に召して? 京子)
(――ああ、京子、幸せ、幸せだわ)
(私達だって幸せよ。だって、京子がこんなに愛液を垂れ流すなんて――フフフ、まるで堰が切れたみたい)
ああっ、ああっ、という京子の断続的な悲鳴が響く。
(どう、京子、大きな穴と小さな穴を同時に責められるって、最高の気分でしょう)
(は、はい──)
(フフフ、京子って、随分、悩ましい音を立てるのね。ね、聞こえるでしょ、京子)
(――聞こえるわ。ああ、は、羞ずかしい――)
(ねえ、京子。もうおねだりすることはないの。何とかおっしゃいよ)
(――お二人にお任せするわ。京子を、うんと、うんと羞しい目に合わせて)
(ほんと? 何をしてもいいのね)
(いいわ。お好きなようになさって)
京子の甘えるような声が聞こえる。
山崎はテープレコーダーから響く京子の声を聴きながら机の上の封筒の中から十数枚の写真を取り出す。それはすべて京子をモデルにした猥写真であった。
素っ裸のまま大股開きで立小便をさせられている京子。妹の美津子とともに木製の俎台の上に載せあげられ、グリセリン浣腸を受けている京子。号泣しながら男があてがう便器の中に排泄行為を演じている京子。
胡座縛りにされ、剃毛を施されている京子、遠山夫人とともに淫らなレズビアンの演技を強制されている京子。そして麻縄で堅く縛り上げられ、二人の男に前後から絡まれている京子──。
初めの方の写真では、京子の顔は一様に口惜しさや汚辱といった感情に歪んでいる。しかし山崎は徐々に、京子の表情に自らに加えられる恥辱の行為を受け入れようとするかのような積極性が浮かんできているのに気づいていた。

(ああ、あなたっ、許してっ)
テープレコーダーから、山崎が聞いたこともないような京子の女っぽい悲鳴が響く。
(どう、張り型とガラス棒でVとAの両方を責められる気分は)
(たっ、たまらないわっ!)
ううっという京子の鋭い呻き声。
(京子ったら、すっかり淫らになっちゃって)
(フフフ、どう。あとでこれを聞く社長は、きっと、びっくりするわ)
男たちのクスクス笑いと、京子の舌足らずの悲鳴。山崎はいつの間にかデスクに坐ったままズボンを下ろし、猛り立った逸物を引き出すと、片手で扱いている。
「きょ、京子──」
山崎が京子の名を口にしたとき、テープレコーダーから京子の耐えかねたような声が響く。
(ね、ねえっ!)
(どうしたの、京子。何かおねだりしたいことがあるの? 遠慮なくおっしゃいな)
(――も、もう我慢できないっ。ねえ、ねえっ、京子、気を、気をやっていい?)
絶頂に達することすら男たちの許可が必要なのか、京子は切羽詰った声で男たちにねだる。
(ふふ、京子嬢、二回目の陥落ね。いいわ、その代り、三回目と四回目は、私達二人と本格的にセックスするのよ。自分だけいい気分になって、私達のことを考えないっていうのは、いいこととはいえないものね)
(――わ、わかっています――京子、春太郎さんと夏次郎さんに抱かれますわ)
京子の震えるような涕泣が洩れる。
(さあ、京子、それなら、さっきもいったようにこうなったら可愛い女の子に変身して、いく、いく、と女っぽい声を上げて気をやるのよ)
(わっ、分かりましたっ)
京子は切羽詰まったような声でそう告げる。
(ああ、京子っ、もう駄目です。いくっ、ああ、いくわっ!)
テープレコーダーから響く京子の絶叫と共に、山崎は大量の白濁を放った。

欲望を放出した山崎の胸は、やがて激しい自責の念が込み上げる。
(俺は何をしているんだ──)
恋人が寝取られる様子を聴きながら自慰行為に耽るなんて最低の男だ、俺は。
(京子──)
いったい京子は今、どこでどうしているのか。
もちろん山崎は、京子がすべて自らの意思でこのような汚辱の言葉を吐き、淫らな行為を演じたとは思えない。しかし、あの勝気な京子からこんな屈辱的な言葉を引き出したということが、誘拐者たちの底知れぬ不気味さを感じさせる。これほどまでに恐ろしい連中の手に落ちた京子は、もはや以前の京子ではあるまい。
(京子はもう戻ってこないのか──)
山崎は汚れ物を始末すると、洗面所の前の鏡を覗き込む。そこには先ほど事務所を尋ねてきた折原源一郎以上に憔悴した男の顔があった。
(俺も、折原博士も同じ寝取られ男か──)
山崎は自嘲的に呟く。
折原珠江と千原美沙江の失踪は、静子夫人から端を発する一連の美女誘拐事件の流れの中にあると直感していた。静子夫人は折原珠江同様、千原流華道の熱心な後援者であり、珠江とは親友の仲と言ってよい。また、千原美沙江自身も静子のことを姉のように慕っていたのだ。
しかし、山崎にはもはや折原の依頼に応じて調査に動く気力を無くしていた。
(どうにでもなるがいい、もう、俺の京子は戻ってこないのだ)
山崎がソファに座り込むと自嘲的にそう呟く。再び煙草を咥えた山崎が目を閉じたとき、事務所の扉が開く気配がした。
「お兄さん──」
山崎が振り向くと、そこには妹の久美子が立っていた。久美子の後ろには品の良い女性が二人、当惑したような表情を山崎に向けていた。
「お客様よ。六本木の駅で一緒になって、ここまでお連れしたの。こちらはお兄様もご存知の──」
「村瀬美紀です。御久しぶりです、山崎さん」
洋装の美女が頭を下げる。続いて和服を着こなした日本風の美女が「千原絹代と申します。はじめまして」とお辞儀をする。
山崎は慌てて煙草を消すと、ソファから立ち上がった。

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