一昨年の夏ごろから私たち夫婦に起こった事件について書かせていただこうと思います。実話6割、妄想4割といったところですが、よろしければお読みください。
私、45歳、妻、紀美子42歳、見合いで結婚して18年になります。夫の私が言うのもなんですが妻ははっきりした顔立ちの美人で会った途端に気に入り、一ヵ月後にはプロポーズをしていました。
その後2人の子宝に恵まれ、まずまず夫婦仲は円満に推移してきたのではないかと思います。
紀美子は容姿が優れているだけでなく気立ても良く、料理も上手で、本当に良い妻を得たものだと思い、私も結婚してからは浮気することもなく妻一筋で過ごしてきました。
妻についてただひとつ物足らなかったことは、セックスが淡白だったことです。
妻は結婚する時は処女で、私もあまり経験がなかったため新婚初夜は上手くいきませんでした。
その後悪戦苦闘の末、やっと結ばれたのは新婚旅行の最終日でした。その時の体験がかなり苦痛だったのか、妻はその後ずっとセックスに対しては積極的になれませんでした。
2人の息子の妊娠と子育て中は数ヶ月に一度という具合で、今なら完全なセックスレスといって良いでしょう。私もなんとなくそんな状況に慣れてしまい、子育てが一段落してからも夜の生活は1、2ヶ月に一度という間隔でした。
私は人並みに性欲はある方ですので、妻とのセックスだけでは欲望を解消することが出来ません。それでずっと妻に隠れて自分で処理してきたのですが、40歳を過ぎる頃から、急に焦りのようなものを感じ始めました。
年を取ると性欲は衰え、いずれセックスは出来なくなります。男としての自分の一生を考えた場合、これで良いのだろうかという気持ちが生まれてきたのです。
元気なうちにもっとたくさんの女を抱いてみたい。かといって素人に手を出すのは危険ですし、そもそも妻を裏切るようで気が進みません。
そこで風俗なら良いと自分に言い聞かせたというわけではないのですが、結婚以来足を踏み入れていなかったソープランドへ行ってみることにしました。
久しぶりのソープランドでの体験がどういうものであったかはこの物語の本筋とは関係ありませんので詳しくは書きません。しかし結婚前に行ったようないかにも欲望処理の場所(当時は「トルコ風呂」と呼ばれていました)といった感じではなく、昔からは考えられないような若い綺麗な女の子が、恋人のようなサービスをしてくれるのにすっかりはまってしまいました。
その頃収入が増えて生活に余裕が出来てきたこともあり、かなり頻繁に通うようになりました。何人かの馴染みの女の子も出来、妻とのセックスもますます疎遠になりました。
一昨年の夏のある日、長めの海外出張とその後体調を崩したりでしばらくご無沙汰行ってしていた店に足を運びました。その日初めて付いた女の子がにこやかに挨拶し、おもむろに私の服を脱がせ、フェラチオを始めようとしたときに妙な顔をしました。
「どうしたの?」
「うーん……」
女の子は首をかしげながらしばらく私の陰毛をかき分けるようにしていましたが、やがて顔を上げました。
「お客さん……ケジラミがあるよ」
「えっ?」
女の子は器用に指先を使い、小さな白いものをつまむと私に見せました。
「ほら……卵」
想像もしなかった展開に私は動揺しました。
「まだほとんどいないから、すぐに薬を使えば大丈夫だよ」
「そう……ごめんね」
故意ではないですが、もう少しで大事な商売道具(?)をしばらくの間使い物にならなくするところでした。私は恐縮しました。
「前にこの店にきたのはいつ?」
「ここはしばらく来ていないな……あ、別の店に一ヶ月半くらい前に行ったけど」
「それは違うわね……そこでもらったんなら、もっとひどくなっていると思う。これだと10日か2週間くらいかな?」
女の子はそう言いながら私に服を着せていきました。
「良くなったらまた遊びに来てね」
部屋を送り出された私は入浴料を全額返却され、さらに店の車で駅まで送ってもらう途中、店員さんに薬局で薬まで買ってもらいました。私がその間考えていたのは、どこでケジラミを移されたのだろう、ということでした。
ちょうど私は2週間前、妻と久しぶりにセックスをしていたのです。
家に帰った私は動揺が収まらず、妻の顔をまっすぐ見ることが出来ません。
「今日は遅くなるんじゃなかったの?」
「ちょっと予定が変更になって……」
下手な言い訳をすると食事もそこそこに自室に向かい、インターネットで「ケジラミ」について調べます。
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『ケジラミ』
原因:ケジラミという寄生虫が性的な接触により感染。まれに衣類、寝具を介して感染する。
潜伏期間:1~30日間
診断と治療:
・ ケジラミの卵を検出する。
・ スミスリンパウダーかスミスリンシャンプーを使い約10日で治ります。だが卵には効かないので、孵化にかかる1週間程度の間隔を空けて数回行う必要がある。
・ 陰部を剃毛して軟膏を塗る。また卵の孵化の時期を待って殺虫する。
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スミスリンパウダーもスミスリンシャンプーもソープの店員さんに買ってもらっています(むろんお金は払いましたが)。泌尿器科に行く代わりにソープでケジラミの診断と治療をしてもらったようなものです。
しかし私は「性的な接触により感染」という言葉が頭から離れませんでした。
自分ではまったく気がつかなかった、つまり痒みがなかったわけですから出張前に行った別の店で移されたという可能性は低いことになります。すると誰に移されたか……?
「まさか……妻から」
ここ一ヶ月半の間で私が性的な接触を持ったのは妻だけです。果たしてケジラミは妻から移されたのか、もしそうだとしたら、妻は誰から移されたのか?
「紀美子が浮気……?」
私の頭の中で一つの仮説が言葉の形をなしました。
いや、それはソープの車で送られる途中、ずっと頭の中にあったことです。まさかそんなことはと否定していたのですが、「妻の浮気」という言葉が急に私の 胸を締め付けてくるような感覚に襲われました。
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