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一.長寿化の秘密 3.読者参加型でアイデア募集

 奇クという雑誌の性格がそもそも読者参加型であった、というよりも、ほとんどの原稿は投稿で占められていた。著名な『家畜人ヤプー』もそうだし、奇クの隠れた名作である未完の大長編『大噴火』(千葉青鬼氏作)も投稿原稿である。『花と蛇』も奇クの持つこの性格をフルに活用している。
 読者参加型の小説としては近年では筒井康隆氏の『朝のガスパール』が有名である。筒井氏の作品は、一方的に小説を消費するだけの存在であった読み手に対し、作り手サイドからいわば意図的に挑発行為を仕掛けたものだが、『花と蛇』は自然発生的に読者参加型となっている。
 しかし『花と蛇』にしても読者にある意味で挑発行為を仕掛けたものであることには変わりないかも知れない。知的に挑発したか性的に挑発したかの違いこそあれ。

 奇クの誌上で読者によって提示されたアイデアで作品上で実現された主要なものには、以下のようなものがある。

1.銀子の静子夫人に対する恋愛感情(昭和39年11月号 畑藤三人氏)
2.「令嬢」および「美少年」の登場(同12月号 畑村信一氏)
3.京子への(2度目の)浣腸責め(昭和44年7月号 結城志運氏)

 団氏の数多くの作品の中では、『花と蛇』は物語としての完成度は必ずしも高くない。筆者は、個人的には『鬼ゆり峠』が氏の最高傑作だと考えている。特に、予定されたクライマックスである主人公、浪路と菊之助姉弟の最期に向かって緊張感を高めていく、物語後半部の描写は素晴らしい。また描写そのものの緻密さ、繊細さでは『夕顔夫人』、あるいは『肉の顔役』の方が上であろう
 しかしながら、団氏の代表作といえばいまだに『花と蛇』が筆頭に掲げられる理由は、その圧倒的な長さや、連載中の人気、その後のSM小説界における影響度だけではなく、この作品が持つ一種独特の妖しい雰囲気により、同氏の作品中ひときわ異彩を放っているからであろう。これは『花と蛇』が他の作品群と違い、純粋にその道が好きな奇クの読者との共同作品であったせいであることが一因であることは疑いない。

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