「お、お待たせしました。皆様、それでは私、野島京子と……」
「村瀬小夜子は、皆様のお情けによりここに、同性愛の絆を結ばせていただきますわ」
そう言うと京子と小夜子は向かい合い、立位のまま互いの背中に手を回してしっかりと抱き合う。
「ああ、小夜子さん……」
「京子さん」
京子と小夜子はそれぞれ、相手の覚悟を確かめるように見つめ合うとそっと唇を近づけ、接吻を交わす。その瞬間葉桜団のズベ公たちはわっと黄色い声を上げて二人をからかう。
「よっ、お似合いだよ。お二人さん」
「そんな甘っちょろいキスじゃ駄目だよ。しっかり相手の舌を吸い合うんだ」
京子と小夜子は声の方向にちらりと目をやると、そんな野次に反発するかのように強く抱き合い、互いの唾をすすり合うような熱っぽい接吻を演じ始める。
「小夜子さん……」
「京子さん……」
お互いが呼び合う声も心なしか艶を帯びてくる。そんな二人の変化に気づいた桂子が京子と小夜子に声をかける。
「二人はもうレズビアンのコンビになることを誓ったんだから、小夜子さん、京子さんなんて他人行儀な呼び方はおかしいわ。さしずめ京子がタチ、小夜子がネコという役割だろうから京子は小夜子を呼び捨てにして、小夜子は京子のことを『京子お姉様』と呼ぶのよ」
わかったら返事をしなさいと言いながら桂子が青竹で二人の背を軽く叩くと、京子と小夜子は「わ、わかりました」と声を揃える。
「きょ、京子お姉様……」
小夜子がキラキラ光る瞳を京子に向ける。京子はそんな小夜子の神秘的なまでに美しい瞳の色に、思わず胸がときめくのを感じる。
静子夫人の黒く澄んだ瞳に比べ、小夜子のそれは薄茶色で、外国人の血が混じっているのではないかと思うほどである。それは透き通るような白い肌の色とあいまって、小夜子が実は抱き締めると壊れてしまう磁器の人形ではないかと錯覚するほどである。
「小夜子……」
京子が思わず桂子に強いられるまま小夜子の名を口にすると、小夜子は長い睫毛をフルフルと震わせながらその澄んだ泉のような瞳を潤ませる。京子は思わず小夜子を抱き締め、薔薇の花びらを思わせる唇に激しい接吻を注ぎ込む。
「あっ、あっ、お姉様……」
小夜子は京子の腕の中で軽く身悶える。
「小夜子はおっぱいが敏感だって聞いたわ。おっぱいを十分に攻めてやりなさい」
桂子の声に京子は頷くと、自らの豊かな乳房を小夜子の柔らかい乳房に押し当てる。
「あ……うん……」
小夜子の口からため息に似た声が漏れる。しばらく二人の美女は乳房と乳房を押し付け合うようにしながら見事な裸身をうねり回す。
やがて京子は口元に微妙な笑みを浮かべると小夜子から少し身体を離し、自らの乳首で小夜子の乳首をくすぐるようにする。たちまち小夜子の花の蕾を思わせる乳首はほんのりと薄紅色に染まり、堅く尖っていく。
「ああ……」
小夜子はもはや立っていられなくなったのか、畳の上にがくりと膝をつく。京子はそんな小夜子をゆっくりと引き起こし、赤い布団の上に誘う。
毒々しい色の布団の上に白磁の裸身を横たえた小夜子は、素肌に改めて観客たちの視線を感じると急に自意識が蘇って来たのか、顔を覆ってすすり泣きを始める。
「何よ、いざと言う時に辛気臭いわね」
眉を吊り上げ、二人の方へ歩み寄ろうとする銀子の手を桂子が「待って」と押さえる。
「小夜子」
京子が小夜子の上に覆いかぶさるようにしながら、ウェーブのかかった小夜子の髪を片手で優しく撫でる。
「泣かないで、小夜子」
京子は小夜子の目尻に唇を当てると、あふれ出た涙をそっと啜る。小夜子は悲痛な表情を京子に向け、涙をこらえながら「ごめんなさい、お姉様」と呟く。
「小夜子っ」
京子はそんな小夜子に本当の妹のような、また年下の恋人のような愛しさを感じ、小夜子の身体をひしと抱き締める。
「ああっ、お姉様っ」
小夜子もまたかつて静子夫人に愛された時のような切なさと愛しさが込み上げて来たのか、悦びの混じった声を張り上げると、大胆にも自らの下腹部を京子の下腹部に押し付けて行く。
「あ、ああっ、小夜子っ」
「ううっ」
京子は突然の小夜子の淫らな行為に狼狽えて身体を引こうとするが、小夜子はそうはさせじとばかり強く京子にしがみつく。小夜子と京子の無毛の秘部がぴったりと重なり合い、うねり合う。
「小夜子ったら、あんなに大胆なことができるのね。驚いたわ」
「まったくだわ。あの京子がたじたじになっているわ」
銀子と朱美が感心したように言い合うと、桂子が「小夜子は静子と同じ、生まれながらのスターよ」と呟く。
「何だって?」
銀子は怪訝な顔をして桂子の顔を見る。
「静子がレズビアンのプレイで本当に夢中になったのは小夜子を相手にした時だけよ。京子と小夜子のコンビもきっとうまく行くはずだわ」
桂子は憑かれたような目を京子と小夜子に向けながらそんなことを口にする。銀子と朱美はそんな桂子の変貌ぶりに思わず顔を見合わせるのだ。
女同士の同性愛行為を「貝合わせ」などということがあるが、京子と小夜子が今演じているそれは、まさにその言葉にふさわしいものだった。二人の美女は大胆に股を開き、無毛の秘部と秘部を重ね合わせながら妖しく裸身をうねらせている。小夜子の陰裂には京子の花唇が、京子の陰裂には小夜子の花唇が深々と食い込み、二つの秘貝がまるで一体になって蠢いているのが観客の目になんとも淫靡に映ずるのだ。
「ああっ、さ、小夜子っ」
「お姉様っ」
京子と小夜子はもはや観客の視線も、卑猥な野次も気にならなくなったのか、女同士の淫らな行為に完全に没入している。桂子が口元に微笑を湛えながら京子と小夜子に近づき、何事か囁きかけると二人の美女はは素直に頷き、大胆にも身体の向きを変えてシックスナインの態勢をとる。
京子が小夜子の秘奥に顔を埋め、唇での愛撫を注ぎ始める。小夜子は暫くの間、花芯の先端を京子の唇で愛撫される甘痒い快感を味わうようにうっとりと目を閉じていたが、やがて目を開き、妖しい笑みを浮かべると両手の指で京子の秘奥を思い切り開陳する。
「あ、ああっ、な、何をっ」
熱く熟した秘奥がいきなり外気に晒されるひんやりとした感触に京子は狼狽えたような声を出す。小夜子はそんな京子の狼狽にも構わず、その秘奥に顔を埋めると深々と舌先を差し込む。
「ああっ! さ、小夜子っ」
小夜子の絹のような感触の舌先で、秘奥をいきなり貫かれた京子は咆哮にも似た声を上げる。熱く熟した京子の女肉は少し冷めた途端、小夜子の舌技によって再び熱を持たされる。電流のように全身を貫く快感に、京子は小夜子への愛撫さえ中断してしまっているのだ。
52.姉と姉(16)

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