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変身(10)

「何だって? 何が申し訳ないんだ」
「あら、聞いていなかったんですか」
 妻が大きな目を丸くします。
「あなたは時々上の空になるんだから……北川(妻の実家の姓です)の父が急に明日から一時帰宅出来ることになったので、しばらく帰らせていただきたいんです」
「え?」
「母は一人で大丈夫だというのですが、やはり看病でだいぶ疲れているようで……食事やおトイレの世話も大変で……」
 妻の父はしばらく前から入退院を繰り返していました。正月には帰宅出来るはずが急に容態が悪化し、年末年始は病院で過ごすことになったのです。
 それがここ数日でだいぶ回復し、急に帰れることになったようです。義父はこれが自分の家で過ごせる最後の正月かもしれない(といってももう1月の8日ですが)と気弱になっているようです。
 私も義父には随分世話になっており、妻からそう言われると帰るなとは言えません。また、そう言う事情ならなおさら今日、修羅場を演じる訳には行かなくなって来ます。
 ひょっとして妻は私が何か気づいたことを察知し、義父の病気を理由に先手を打って来たのかも知れません。そこまで妻が腐ったとは思いたくないのですが、裏切りの証拠を見せつけられた私はそんなふうにも考えてしまいます。
「いいよ、帰っておいで」
「ありがとうございます」
 妻はパッと表情を輝かせます。
「いつまで帰るの?」
「勝手を言って申し訳ないのですが……水曜日まで……」
「わかった」
 明日は日曜日、明後日(10日)の月曜日は祝日です。その間ゆっくり今後のことを考える時間は取れます。
 私は今後妻に対してどのように対応するにしても、とにかく妻のことは全部知っておきたいと思いました。特に先月の温泉旅行。出発から野外露出プレイまで演じた妻が、旅館でどのような痴態を演じたのか、知らないままではいられないのです。私は明日と明後日で残りのビデオや写真をすべてチェックするつもりでした。
「今日も留守番をさせたのに、また不自由をさせてすみません」
 そんな気遣いを今までは妻の優しさからくるものだと思っていたのですが、今は素直には受け取れません。愚かな私を腹の底で笑っているのではないかと思ってしまうのです。
 私はいきなり立ち上がり、珈琲を飲み終えた妻の肩に手をかけます。
「どうしたの?」
 怪訝そうな表情を向ける妻の唇をいきなりふさぎます。かすかにチーズケーキの甘酸っぱい味がします。
「駄目……」
 私は妻を立たせると強く抱きすくめ、ソファの上に押し倒します。
「服が皺になっちゃう……」
 オレンジ色のブラウスに手をかけ、荒々しく剥ぎとろうとする私の手を妻は両手で抑えます。
「自分で脱ぐわ」
 妻は私の手をやんわりと払いのけてブラウスを脱ぎます。白いレースに縁取られたコーラルピンクのブラジャーが露わになります。いかにも高級そうなブラジャーですがそれほど淫らな感じはありません。
(今日は会っていなかったんだろうか……)
 私はブラのホックを外し、妻を上半身裸にします。妻の裸身を明るいところで見るのは久しぶりです。セックスのときも妻は恥ずかしがって、電気をつけさせようとはしません。あの男に対しては何もかも見せているのに。
 私は妻の身体に浮気の痕跡を探します。妻の柔肌のどこかにキスマークはないか、男に甘く噛まれた痕はないか……。
「そんなに見ないで……恥ずかしい」
 妻は両手で小ぶりの乳房を隠します。
(何が恥ずかしいだ……お前は「淫乱人妻」だろうが……)
「スカートを脱げ」
 妻は私の乱暴な口調に戸惑ったような表情を見せますが、素直にスカートを脱ぎます。
 妻のパンティはブラジャーとお揃いのコーラルピンクで、やはり綺麗なレースの縁取りがあります。私はそれに両手をかけて一気に引き下ろします。
「嫌っ」
 いきなり全裸にされた妻は悲鳴のような声を上げてしゃがみこみます。
「まっすぐ立て」
「あなた……今日はどうしたの? 変だわ」
「言うとおりにするんだ」
 妻は少し脅えた表情で私を見ると、言われたとおりに立ち上がります。しかし、両手でしっかりと前を隠したままです。
「隠すな。ちゃんと見せろ」
「そんな……」
「いうことが聞けないのか」
 妻はしょうがなく手をどけ、両脇に垂らします。私はいつの間にかビデオの中の男のような命令口調になっています。
 私は妻の正面像を丹念にチェックすると後ろを向かせます。背中からヒップにかけてのラインは妻の身体の中でもっとも私が好きな箇所です。思わず見惚れてしまいそうになりますが、当初の目的を思い出し、浮気の痕を探します。
 しかし結局、それらしい痕はどこにもありませんでした。
 妻は不思議そうな顔を私に向けています。私は心の中の動揺を誤魔化すように妻を抱きすくめると、ソファの上に押し倒しました。
「子供たちが帰ってくるわ……」
「今日は遅くなるはずだろう」
「夕食の支度をしなくちゃ……」
「後でいい」
(この女を抱けるのは今日が最後かもしれない……)
 私は先ほど、自分が妻を追求しなかった本当の理由がやっとわかりました。私が心から愛した女、妻ともう一度セックスがしたかったのです。修羅場を演じていたら妻を二度と抱くことは出来なかったでしょう。
「ああ……」
 うなじから胸元、そして乳首に接吻を注ぐと、妻は早くも切なげな声を上げ始めます。妻の秘部に手をやると、早くもそこはぐっしょりと潤っていました。
(どうしてこんなに濡れるのが早いんだ)
(今日も男に抱かれていたからじゃないのか)
 妻の愛液で濡れた指先で、硬く尖ったクリトリスをゆっくりと愛撫します。妻の喘ぎ声はますます大きさを増していきます。
「ああ……いいわ……」
(そんな顔を男にも見せていたのか)
(今も男に可愛がられていることを想像して感じているんじゃないのか)
 妻と男に対する腹立たしさが私の愛撫を荒々しくさせます。しかし妻はそんな私の乱暴さにもかかわらず、いつもよりも興奮するのが早く、振幅も大きいようなのです。
(男に仕込まれたからか)

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