「あ、ああっ、小夜子っ」
「お姉様っ」
徐々に高ぶりを示して来た京子は豊かな乳房を小夜子の形の良い乳房に押し付ける。小夜子は京子を追いかけるように敏感な乳首をくなくなと京子の肌にこすりつける。そうやって小夜子の官能が先行すると今度は京子が下半身の動きを止め、うっとりと目を閉じながら小夜子の攻勢に身を任せる。
「小夜子っ」
「お姉様っ」
完全にその官能を同調させた二人の美女は、互いに手を取り合うように淫らな崩壊に向かって突き進む。観客役のやくざやズベ公たちは京子と小夜子の見事な艶技にからかいの声をかけるのも忘れ、惚けたように見入っている。
二人の美女の予想以上の熱演ぶりに鬼源は満足げに口を歪める。静子夫人が戦列を離れたことで戦力低下が懸念された森田組の秘密ショーだったが、これでどうやら午前のトリにふさわしい出し物のメドがつきそうだ。
「あなたたちはもう夫婦なんだから、気をやる時は仲良く息を合わせるのよ。わかったわね」
桂子の声に京子と小夜子は「そんなことは念を押されなくても分かっている」とでもいうように、眉を軽くしかめながら頷く。相手が高まって来たのを知覚した京子と小夜子は互いの覚悟を確かめるように声を掛け合う。
「い、いいわね。小夜子。いくわよ」
「はい、いいわっ、お姉様っ」
京子は「くうっ」と何かを堪えるようなうめき声を上げ、直後に「ああっ、いくっ」と絶え入るような声と共に、引き締まった裸身をガクガクと震わせる。小夜子もまた京子の崩壊に引き込まれるように「わ、私も、いきますっ」と生々しい声を上げながら全身を痙攣させる。
巨大な張り型によって連結された京子と小夜子の女陰は激しい収縮を示し、淫具を伝って互いの興奮を相手に伝え合う。二人の美女はひしと抱き合い、共に絶頂を極めた感激に浸るように熱い口吻を交わす。京子と小夜子の熱演に声もなく見入っていた観客たちはそこに至ってようやく我に返ったように、見事なショーを演じた二人のスターに盛大な拍手を捧げるのだった。
野島京子と村瀬小夜子が同性愛の契りを結んだ日から二日後の夜、山崎久美子は村瀬美紀と千原絹代と共に歌舞伎町のスナック「どん底」で義子とマリを待っていた。
美紀の薔薇の花を思わせる華やかな美貌、絹代の菊の花を思わせるしっとりとした美貌、そして久美子の朝顔のような新鮮な美貌は、薄汚れた「どん底」の店内ではまさに掃きだめに鶴といった感じであり、カウンターの中のマスターはさっきから落ち着かない風情でしきりにグラスを磨いたり、棚の食器を置き換えたりしている。
「本当にうまく行くでしょうか」
絹代が小声で久美子に、今日何度目かになる問いかけを行う。
「大丈夫です。安心してください」
久美子もまた同じ答えを繰り返す。その様子に美紀が見かねたように口を挟む。
「絹代様、うまくいくかどうかは私達の演技にかかっているのです。しっかりしてください」
「演技……」
絹代は困惑したように眉を顰める。
「私、自信がありませんわ」
「もう、今になってそんなことを言われても困りますわ」
美紀が肩をすくめる。
「いいですか、絹代様は有名な小説家の奥様で名前は冬子。年齢は36歳。夫婦の間に子供はなし。最近ご主人がかまってくれないので身体を持て余している」
「そんな……持て余すだなんて」
絹代が頬を染める。
「絹代様のことではなくて、冬子のことですわ」
美紀が呆れたような声を出す。
「私はレストランの社長夫人で名前は夏子、年齢は39歳。いいですか、絹代様、間違えないでくださいね」
「はい……」
絹代はべそをかきそうな表情になる。
「美紀さん、絹代さんは多分大丈夫ですわ。設定が絹代さん自身とほとんど変わりませんから、自然にやれると思います」
久美子がそう言って美紀を宥める。
「それに冬子というのも偽名だと伝えていますから、仮に呼びかけられて一瞬自分のことだと分からなくてどぎまぎしても、それほど不自然ではありません」
「お二人の役割分担としては、美紀さんが積極的にリードする方で、絹代さんはモジモジしながら美紀さんに引っ張られるというふうにすると、上手くいくと思います」
「そうだといいけれど……」
美紀は不安そうに顔を曇らせる。
「それよりも、絹代様が36歳というのはともかく、私が39歳というのは無理がありませんか? 私はもう45歳のおばあちゃんなんですよ」
「とんでもない。それこそ絹代さんの演技以上に不安はありません」
久美子はそう言って首を振る。
「お二人とも30歳そこそこで十分通ります。私の姉と言っても信じてくれるでしょう」
「まさか」
「久美子さんったら、お上手ですわ」
美紀と絹代が声を揃えて笑う。
「それよりも……これからいよいよ葉桜団と接触するのですが、彼女たちから小夜子さんや文夫さん、美沙江さんを含め、捕らわれている人達の消息を耳にするかも知れませんが、どうかショックを受けないようにしてください」
「美沙江たちがひどい目にあっているというのですか?」
たちまち絹代の顔が不安で強ばる。
「いえ、まだそうと決まった訳ではありませんが……」
久美子は言葉を濁す。
前回義子から見せられたばけばしいチラシを久美子は思い出している。そこには兄、山崎の助手でかつ恋人でもある野島京子と妹の美津子の緊縛された裸のバストショットが並び、「京子と美津子 姉妹浣腸合戦!」という大きな文字が踊っていたのだ。
ズベ公グループの背後にいる組織は、誘拐して来た静子夫人他の美女たちを商品化していることは間違いない。それを考えると、同じような境遇に小夜子や美沙江たちが陥っていないという保証はどこにもないのだ。
「久美子さん、私はある程度覚悟はしています」
美紀は悲愴な表情を久美子に向ける。
「小夜子と文夫が誘拐されてすぐ、身代金を餌に犯人に罠をかけ、それが失敗した時に二人の身にある程度報復が及ぶだろうということは予想していました」
「……申し訳ありません」
一千万円の身代金を要求して来た犯人確保を図ろうと、兄の山崎は万全の罠を張り巡らせたのだが、接触寸前に犯人側に察知され、作戦は失敗に終わったのである。
「いえ、山崎さんの責任ではありません。あれは運が悪かったのですわ」
美紀は首を振る。
「文夫は男ですから多少殴られる程度ですむでしょうが、小夜子の純潔は間違いなく奪われているでしょう」
「美紀様……」
絹代は愕然とした表情になる。
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