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83.酒の肴(5)

「一人だけ良い子になりやがって。恥を晒した奥様たちに申し訳ないと思わないのかいっ」
銀子は怒声を上げると青竹を振り上げ、久美子の背中に力任せに叩きつける。
「ああっ!」
という悲鳴がホームバーに響き、久美子の滑らかな背中に赤い蚯蚓脹れが浮かび上がる。
「謝れ、謝るんだっ!」
ピシッ、ピシッと背中を青竹で続けざまに打たれる久美子は、銀子に命じられるまま「ご、ごめんなさいっ!」と絶叫するように繰り返す。久美子の背中にいくつもの赤い条痕が刻まれたところで、鬼源が制止する。
「折角の上玉を傷ものにするのは勿体ねえ。それくらいにしてやんな」
「だけど、このままで済ませちゃあ示しがつかないよ」
銀子が口を尖らして抗議すると、鬼源は淫靡な笑みを浮かべながら「身体に傷がつかねえ仕置きにかけりゃあいいじゃねえか」と答える。
「柔道を使うお転婆とはいえ、まだ女子大に通う娘さんだ。いきなり立小便しろっていったって恥ずかしさが先に立ち、身体が堅くなって出来なかったんだろう。それならこちらで、出来るようにしてやればいいだろうが」
「それなら、京子の時のように塩水でも飲ませるかい?」
「いや、それじゃあ面白くねえ」」
鬼源は首を振る。
「それにさっき大塚先生がいっただろう。三人呼吸がそろわなければ連帯責任として罰を受けてもらうってな」
「それじゃあどうするんだい」
朱美が怪訝な顔をして尋ねる。
「お嬢さんには小さい方が無理なら大きい方を見せてもらおうじゃねえか。その二人のお上品な奥様と一緒にな」
鬼源はそう言うと久美子の方を見る。久美子は一瞬、鬼源の言葉の意味が分からず、戸惑いの表情を見せる。
「このお嬢さんったら、意味が分からないって顔をしているよ」
銀子と朱美がそんなことを言って笑い合う。
「ど、どう言うこと? 私たちにこれ以上、何をしようというんですか?」
「分からないのかい? 浣腸してやろうっていうのさ。そこの二人の奥様と一緒にね」
銀子がニヤニヤ笑いながら答える。
「浣腸って……」
「おやおや、浣腸も知らないのかい? ポンプみたいな注射器でお尻の穴からお通じの良くなる薬を入れて、むりやりウンチを出させるのさ」
「な、何ですって!」
朱美の言葉を聞いた久美子の顔がさっと青ざめる。
「それをこれからじゃじゃ馬のお嬢さんと、お上品な奥さん二人にたっぷり御馳走して上げようというんだよ。ありがたく思うんだね」
鬼源の指示を受けて竹田と堀川が早速浣腸の準備を開始している。コールドクリームにガラス製の注射器、グリセリン液にぬるま湯の入った洗面器などが三人の美女の足元に並べられる。衆人環視の前で全裸立ち小便を演じさせられるという、死にも勝る屈辱を味わったにもかかわらず、今度は浣腸の仕置きにかけられると知った美紀と絹代も恐怖にガタガタと裸身を震わせる。
「そんなに怖がらなくても大丈夫ですわよ、村瀬の奥様と千原の奥様」
千代は顔面蒼白で震え上がっている美紀と絹代にさも楽しげに声をかける。
「ここで暮らしている女奴隷は全員、もちろん静子夫人も小夜子お嬢様も浣腸を経験しているのよ。奥様たちだけじゃないから安心なさると良いわ」
千代はそう言うと怪鳥のような笑い声をあげる。千代の言葉を聞いた美紀と絹代の表情は恐ろしいまでに硬化していく。
「あ、あなたたち、小夜子にまでそんな恐ろしいことを……」
「あら、浣腸だけじゃないわよ。今奥様が披露してくれた素っ裸での立ち小便にしたって、静子夫人と二人並んで堂々と演じてくれたのよ」
「そうそう、あれは確か小夜子が初めて静子夫人と女同士の契りを結んだ時のことだったわね。小夜子の立ち小便は初々しい中にも新鮮なお色気があるというので大評判だったわ」
「な、何てことを……」
声を震わせる美紀の顔を銀子と朱美が代わる代わるのぞき込むようにする。
「珠江夫人と美沙江なんか、二人並んで浣腸された上、お尻の穴を広げる調教まで受けたのよ。それに比べればただ浣腸されるだけなんて楽なものだわ。便秘の治療をしてもらうようなものじゃない」
追い打ちをかけるように順子がそんなふうに言うと、絹代はあまりの恐ろしさに気が遠くなったのか、いきなり全身の力が抜けたようになるのだった。
「き、絹代さん、し、しっかりして下さいっ」
銀子と朱美に引っ張られるように身体を起こされる絹代に、久美子が必死の形相で声をかける。
久美子はいつか、歌舞伎町のスナック「どん底」で義子とマリから見せられた秘密映画のチラシのことを思い出す。そこには京子と美津子の緊縛されたバストショットとともに「京子と美津子 浣腸合戦」という字が踊っていた。
その時久美子は、いったい京子と美津子にどのような責めが加えられたのかわからないでいた。女たちに浣腸をしてどちらが我慢出来るか競争させて楽しむ、などという人間がこの世に存在することが想像も出来なかったのである。
しかし今、まさにその種の異常者の集団を目の前にして、京子と美津子、いや、そればかりでなく小夜子や珠江、そして美沙江までもが久美子の想像を超えた淫らな責めを受けていたことが分かったのである。
その間に竹田と堀川に川田と吉沢も手伝い、二階の倉庫から三台の折り畳み式ベッドを運び込み、ホームバーの中央に並べていくのだ。
「それじゃあ順にベッドに上がるんだよ」
銀子の言葉を合図にしたかのように、男たちが裸の久美子に取り付き、無理矢理ベッドの上に乗せ上げようとする。田代屋敷の恐ろしい住人たちは冗談ではなく本当に自分たちをそんなおぞましい責めにかけようとしていることが分かった久美子は、逆上したように声を上げる。
「い、嫌よっ! ぜ、絶対にそんなことさせないわっ」
「往生際が悪いぜっ」
懸命に足をばたつかせる久美子の頬を川田がいきなり平手打ちする。
「隣の奥様を見な。素直にベッドの上に乗せられているじゃないか」
はっとした久美子は左右を見る。久美子の左のベッドの上にはぐったりとなった絹代が、順子、銀子、そして朱美によって乗せ上げられており、右のベッドにはあまりの恐ろしさに抵抗も出来なくなっている美紀が、千代、葉子、そして和枝によって乗せられている。美紀は恐怖と衝撃にひきつらせた顔を久美子に向ける。
「く、久美子さん……」
「奥様」
愛する娘と息子――小夜子と文夫が凄惨とも言うべき淫ら責めにあっていることを聞かされた美紀の気持ちはいかばかりか。絹代のように失心しそうになるのを必死で耐えている美紀の姿を見た久美子が思わず力を抜く。男たちはすかさず久美子の裸身を押さえ付け、両肢を固定した青竹を天井の滑車から垂れ下がったロープに結び付け、思い切り引き上げて行くのだ。
「あ、ああっ!」
久美子は扇のように開いた両肢を宙に向かって引き上げられる。言語に絶する浅ましい姿にされていく久美子は思わず悲鳴を上げる。

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