「ああっ、い、嫌っ!」
久美子の隣のベッドでは美紀が千代たちによって、また反対のベッドでは失心したままの絹代が順子たちによって久美子と同様の淫らな姿でベッドに固定されている。
「く、久美子さん、本当に私たち……」
美紀が悲痛な表情を久美子に向ける。美紀は「このまま耐えていれば本当に助けが来るのか」と久美子に問いかけているのである。
久美子は美紀を勇気づけるようにしっかりと頷きかける。そして祈るような思いで、胸の中で兄に呼びかけるのだ。
(お兄さん、何をしているの! 早く助けにきて)
通常タクシーは夜明けごろまでには車庫に戻る。昨夜この屋敷まで義子とマリを乗せてきたタクシーのナンバーがすでに判明しているのだから、警察内部での兄の人脈をもってすればその時点で運転手と連絡がとれているはずだ。
夜明けからどれほどの時間がたっただろうか。兄の救出は必ずあるはずだが、今この瞬間なのか、それとも一時間後なのか。
(もしこの場に兄が踏み込んでくれたら、悪党共を一網打尽に出来るわ)
誘拐の黒幕と思われる田代と森田、千代と順子、そして森田組と葉桜団の主だったメンバーがすべてこの部屋に終結している。今が彼らを根こそぎ当局に引き渡す絶好の機会なのだ。
(なんとか引き伸ばして連中の足止めをしなければ。ああ……でもどうやって――)
久美子がそんな葛藤に苛まれているうちに、三人の美女は揃ってベッドの上で開股両肢吊りの姿で固定されたのだ。久美子たちの壮絶なまでに卑猥な姿を目にした悪鬼たちは、いっせいに哄笑を浴びせかけるのだった。
「三人そろって派手な格好にされたじゃねえか」
川田がベッドの上に並んだ三人の美女の尻を順にパシパシ叩きながら嘲笑する。
尻を叩かれた気を失っていた絹代の意識が戻り、状況が把握できないのかしばらく視線を頼りなげに泳がせて板が、やがて自分がどのような卑猥な姿を晒しているのかに気づき、はっと顔を強ばらせる。
「これは素晴らしい眺めだ」
美紀の熟女らしくむっちりと肉の実った尻、久美子の若々しさを感じさせる引き締まった尻、そして絹代のふっくらとした形の良い尻を見比べながら、田代と森田、鬼源の三人は満足げに酒を酌み交わしている。
「どの尻も十分商売物になりそうだと見たがね。どうだい、鬼源さん」
「社長のおっしゃる通りでさあ」
田代の言葉に鬼源は頷く。
「社長夫人と家元夫人はかなりトウがたっているのが難点だが、これだけの上玉だ。時間をかけて鍛えれば客を喜ばせる娼婦になると思いますぜ。二人とも齢の割りにはあまり使い込んでないのか、マンコも奇麗ですし、肛門も崩れてないところを見るとケツの方は処女でしょう」
「そうか、尻の方はおぼこ娘か。そりゃあ楽しみだ」
田代が楽しげにそう言うと、森田と顔を見合わせて笑い合う。
「それとじゃじゃ馬娘の方ですが、私の見たところ男の経験はありませんね。相当気が強いから開発するのは少々骨が折れそうですが、てこずるようなら京子を仕込んだ時のように春太郎と夏次郎にしばらく預けりゃ、たちまち素直な女の子になるに違いありませんぜ」
「なるほど。鬼源の見立てだから間違いないだろう」
森田は満足げに微笑する。
「さすがに三人の女を並べての浣腸責めというのは初めてだ。これはぜひ映画に撮影しておくべきじゃないかな、親分」
「そうですな」
田代の提案に森田は頷く。
「大広間にいる井上たちを呼んで来い。そっちの組はいったん休憩を取らせて、至急ここの撮影に廻れってな」
森田にそう指示された竹田は「へい」と返事をしてホームバーを飛び出して行く。
「準備が出来るまで、その三つ並んだ蛤と菊の花を肴に飲んでましょうよ」
もうかなり飲んで酔いが回っている千代はそう言うと美紀の隣に立ってグラスを高々と掲げ「村瀬宝石店社長夫人のお見事な大蛤に乾杯!」と素っ頓狂な声を上げる。
ホームバーに集った野卑な男女は千代の言葉に苦笑しながら「乾杯!」と唱和する。すると順子が千代に倣うかのように絹代の隣に進み出て「千原流華道家元夫人のお淑やかな菊の花に乾杯!」と声を上げる。
再び部屋の中に「乾杯!」の声と哄笑が響く。ベッドの上で極限の羞恥と屈辱に耐えていた美紀と絹代は、ついに緊張の糸が切れたかのようにわっと泣きじゃくる。
(ああ……美紀さん、絹代さん、ご、ごめんなさい)
二人の美夫人に挟まれている久美子は、先ほど自分だけが放尿出来なかったために美紀と絹代を地獄の拷問に付き合わせることになった自責と後悔に苛まれている。
(兄さん、お願い。早く助けに来てっ! このままじゃ私たち――)
いったい兄は何を愚図愚図しているのか。誘拐者の手に落ちた自分たちがこのようなおぞましい責めにあっていようとは想像もしていないのだろうか。
(い、いや、違うわ。兄は京子さんから送られて来たテープから、かなりの部分を掴んでいたはず。私には詳細な内容を伏せていたけれど。私たちが切迫した状況にあることは分かっている。それならどうして助けに来ないのか)
例のタクシーのドライバーと連絡が取れないのだろうか。いや、個人タクシーならともかく、あの車は久美子も見たことがある大手のタクシー業者のものだった。連絡に手間取るということは考えられない。
(きっと今、こちらへ向かっているはずだわ)
「美紀さん、絹代さん、あと少し、あと少しの辛抱ですわ」
久美子は美紀と絹代に順に顔を向け、小声で囁く。美紀と絹代は涙に濡れた瞳を久美子に向け、こくりと頷く。
(救出が来るまで、どんなことがあっても耐えなければ)
久美子がそう胸の中で誓った時、銀子と朱美がつかつかと進み出て久美子を挟んで立つと淫靡な笑みを交わし合い「せーの」と声を上げる。
「あ、ああっ! な、何をするのっ!」
銀子と朱美は両側から久美子の花唇を大きく開帳させると「じゃじゃ馬娘の処女マンコに乾杯!」と声を上げる。鮮やかな鮭紅色の花襞まで露わにされた久美子は、あまりのことにベッドの上でのたうち廻る。
「さすがは処女ね。なかなか奇麗なおまんをしているじゃない」
「ちょっと毛深いところなんかも京子そっくりね」
銀子と朱美はそんなことを言いながら、久美子の肉襞を指先で数えるようにしたり、鬱蒼と生い茂った陰毛を引っ張ったりする。久美子は呼吸が止まるほどの羞恥と屈辱に「やめてっ! やめなさいっ!」と叫びながら裸身を悶えさせる。
銀子と朱美の行為を真似るように、順子が絹代のつつましく口を閉じた秘奥をこじ開け、指先で嬲り始める。千代もまた美紀の陰門を開き、内部で幾層にも畳まれた花襞を弄り始める。二人の美夫人は狼狽のあまり「嫌っ」、「許してっ」などと声を上げ、ベッドの上でのたうちまわるのだった。
機材を抱えてホームバーに入って来た井上たち撮影班のやくざやチンピラたちは、そんな落花無残ともいうべき光景に目を丸くする。井上たちが撮影していた京子、美津子、そして小夜子の三人がらみのレズビアンショーの進行の手伝いをしていた義子とマリが部屋に足を踏み入れるなり「わあ、やってる、やってる」と頓狂な声を上げる。
続いて熊沢たちの部屋で、珠江と美沙江の調教にあたっていた友子と直江も顔を出し、ベッドの上で狂態を演じている絹代の姿を見て歓声をあげる。
84.酒の肴(6)

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