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90.酒の肴(12)

「そうだな、久美子は川田と吉沢に任せるか。好きなように料理してやんな」
森田の声に頷いた川田と吉沢はゆっくりと久美子に近寄る。
「へへ、親分のお許しが出たからには、こってりと可愛がってやるからな。楽しみにするんだな」
そう言いながら顔を近づけてくる川田に、意識を取り戻した久美子は脅えたような表情を向ける。
「柔道を使うじゃじゃ馬娘もさすがに浣腸と聞いて怖じけづいたのかい? こりゃあ愉快だ」
「あなたたち……女を相手にこんなことをして、いったい何が面白いの」
久美子は精一杯気力を振り絞り、川田を睨みつける。
「何が面白いと言われても一言じゃ説明できないな。俺もこれまでは女に浣腸をしたり、ここのところの毛を剃ったりするのがこんなに楽しいものとは思ってもいなかったぜ」
川田はそう言って笑いながら久美子の繊毛を摘まむ。
「しかし、静子夫人や京子を相手にそんな悪戯をしているうちに、病み付きになってしまったのさ。スケコマシを稼業にして来たこの俺が、女を抱くことそのものよりも楽しくなったくらいだ。この屋敷にいる人間はみなそうじゃないか」
川田はそう言って部屋の中を見回す。
久美子は、ホームバーに集まった男女が自分たち三人がこれからさらなる拷問にかけられることを心待ちにするかのように、一様に目をギラギラと光らせていることに気づき、背筋が寒くなる。
(この屋敷にいるのは異常者ばかりだわ)
久美子は、静子夫人や京子たちが誘拐者によって卑猥な写真を撮られたり、淫らな映画に出演させられたりしていることはわかっていた。しかしながらそれはあくまで誘拐者たちが実利的な目的でそうしているのだとばかり考えていた。
しかしそうではなく、この屋敷にいる人間は、男女を問わず女をいたぶることを悦びにするものばかりではないか。つまり、彼らは自らの嗜虐姓を充足させるために静子夫人たちを誘拐し、監禁し続けているのではないかと久美子は思い始めたのである。
(もしそうだとしたら、囮となってこの屋敷に潜入したことは、当初考えていたよりもはるかに危険な行為だということになる)
今や久美子は身体が灼かれるような思いで兄の救出を待っている。兄の到着が遅れれば遅れるほど、自分たちが受けるいたぶりは激しさを増していくに違いない。
久美子は自分がこの地獄屋敷に巣くう悪鬼たちによって凌辱される覚悟は出来ていた。美紀や絹代も、わが子を救うためにはその貞操すら投げ出す気構えはあっただろう。
しかし彼らがこれから久美子たちに施そうとしている浣腸などの淫ら責めは、久美子の想像の域をまったく超えるものだったのである。これ以上責め続けられると、久美子の気力はいずれ限界に達するに違いない。
(私はまだ良い。兄の名誉回復に繋がるのならこの身を多少犠牲にしても。しかし、美紀さんと絹代さんをこれ以上苦しめる訳にはいかない――でも、いったいどうすれば)
久美子は激しい懊悩の中で、ひたすら山崎の到着を待ちわびている。
「まずは尻の下に木枕を敷いて、もっと派手な格好にしてやるか。義子、マリ、ちょっと手伝ってくれ」
「待ってました」
久美子の調教を田代から命じられ、手ぐすねをひいていた義子とマリが歓声をあげて久美子に近寄る。
「俺と吉沢が久美子の足を引っ張り上げるから、その間に久美子の尻の下に木枕を入れるんだ」
「お安い御用よ」
義子が部屋の隅に積み上げられた木枕の一つを手にとって答える。
「それじゃあいくぜ」
掛け声と共に川田と吉沢が、天井の滑車から垂れた鎖をぐいと引く。鎖の先は久美子の足首につながっており、すでに宙に向かって扇形に開いていた久美子の両肢はさらに高々と持ち上げられる。
「あ、ああっ、な、何をっ!」
狼狽の声を上げる久美子の尻をマリが持ち上げ、義子が素早く久美子の尻とベッドの隙間に木枕を差し入れる。
柔道で鍛えられて逞しさまで見せている久美子の見事なヒップが木枕の上にでんと乗せ上げられる。久美子のいまだ処女の花園は観客の前にこれ見よがしに突き出され、双臀の狭間に秘められた菊花も今や逃げも隠れもできないと言った風情で開陳させられている。
自分がとんでもない羞かしい格好をさせられていると自覚した久美子はさすがにすっかり狼狽を見せ「嫌っ」とか「見ないでっ」といった悲鳴のような声を上げ、ベッドの上で裸身を激しく悶えさせている。
津村も川田たちの行為を真似るように、銀子と朱美の手助けを得て美紀の両肢を吊り上げ、その豊満な尻の下に木枕を敷く。大塚順子もまた友子と直江とともに、まるでお祭り騒ぎのようにはしゃぎながら、絹代を同様のポーズにさせる。
三人の美女がそろってベッドの上で木枕に尻を乗せ上げ、女の最も羞かしい二つの箇所をこれ見よがしに晒け出したことで、ホームバーに集まった男女の興奮は最高潮に達している。
千代などは「ホホホ、三人とも何てみっともない格好を晒しているの。女として恥ずかしいとは思わないのかしら」と甲高い声を上げて久美子、美紀、そして絹代のヒップを順にバシバシ叩きながら笑い転げる。
「親分からちょっと千代夫人に注意してくれませんかね。あんな風にカメラとモデルの間を歩き回られちゃんじゃあ、やりにくくってしょうげねえ」
撮影班の井上が千代のはしゃぎぶりにさすがにうんざりしたような顔で森田に苦情を言う。
「そうは言ってもなあ」
森田は首を捻る。時折燥的な症状を示して周囲を困惑させる千代だが、森田組にとって大事なスポンサーであることは事実である。下手に機嫌を損ねる訳にも行かない。
「千代、静子夫人がお前を呼んでいるそうだ。伊沢先生と一戦が終わったから後始末をして欲しいってな」
川田が千代に声をかけると千代は「何ですって?」と眉を吊り上げる。
「あの女、人をいつまで女中扱いしたら気が済むのかしら。今は私が遠山夫人なのよ。立場が変わったことを今度こそよく言い聞かせなきゃ」
千代はそんな風に不平を言いながらも、急にそわそわとした表情で「それじゃあ兄さん、ここは任せるわ」と川田に告げてホームバーを出て行く。
「助かったぜ、川田」
森田は苦笑しながら川田に礼を言う。
「いえ、こっちこそ妹が迷惑をかけてすみません」
「迷惑なんてこたあねえが、それにしてもやっぱり兄妹だな」
「色々言いながらもあいつが静子夫人に首ったけなのはわかります。もともとこの一件もあいつの静子夫人への執念めいた愛情から始まったようなもんですからね」
川田はそう言って笑う。
(どういうこと? 今回の件はあの千代って女中が糸を引いていたってことなの?)
川田と森田の会話を聞きながら惑乱した頭でそんな事を考えている久美子の菊蕾に、ひんやりとしたクリームがべっとり塗り付けられる。
「い、嫌っ!」
久美子は思わず裸身をぶるっと震わせる。川田はそんな久美子にかまわず、指先にコールドクリームを取ると久美子の菊花のマッサージを開始する。
「あ、あっ、な、何をっ」
「何をも何も、浣腸器を受け入れやすいようにマッサージをしてやっているんだ。そのままぶち込んで裂けちまうと気の毒だからな。どうだい、親切だとは思わねえか」

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