「こ、こんなことをしても何もならないわ。刑務所に入る時間が長くなるだけよ」
久美子が開き直ったような反発の言葉を吐いたので、川田は田代や森田と顔を見合わせる。
「今に見なさい。兄さんがあなたたちをみんな捕まえて、牢屋にほうり込んでやるから。笑っていれるのは今だけよ」
「随分自信たっぷりだな。ドジばかり踏んでいた山崎がどうやって俺たちを捕まえるっていうんだい」
川田は口元に皮肉っぽい笑みを浮かべてそう問いかけると、久美子はぐっと言葉に詰まり横を向く。川田は再び田代や森田と視線を交わし、頷きあう。
「言っておくが、タクシーをあたっても無駄だぜ」
川田のその言葉に久美子は頭を殴られたような衝撃を受け、愕然と目を見開く。
「図星のようだな。義子とマリをこの屋敷まで乗せて来た品川ナンバーのタクシーのことを電話で山崎に伝えたんだろう。ナンバーからタクシーの運転手を割り出したらこの屋敷までたどり着けるって考えてな」
久美子の顔色がみるみるうちに青ざめる。美紀と絹代もまた顔をこわばらせ、川田の言葉をじっと聞いている。
「誰にも知られちゃならないアジトに向かうのにタクシーを使うなんて、俺たちがそんなヘマをすると思っているのかい、ええ」
「う、嘘よ。確かにあれは大手のタクシー会社の……」
「似てるだろう。まあ、間違えるのも無理はねえ。倒産した映画会社が撮影用に使っていた車を手に入れたもんだ。もちろんナンバープレートも架空のものを張り付けているから、日本中探したってそんなタクシーは見つかりっこないさ」
「そんな……」
絶句する久美子を見ながら川田があざ笑う。いきなり久美子は甲高い悲鳴をあげ、同時に部屋中に野卑な男女の哄笑が響き渡る。
「残念だったな。まあ、人間諦めが肝心だ。こうなったら何もかも俺たちに任せて、他の女たちと同様に性奴隷として生きて行くんだな」
川田は再び浣腸器に薬液を吸い上げると、ガラス製の嘴管を久美子の菊蕾に装填する。
「まずは俺たちを罠にはめようとしたお仕置きを徹底的に受けてもらわねえとな」
川田はそう言うと浣腸器のポンプをぐっと圧す。たちまち100ccの薬液が久美子の腹中に送り込まれ、久美子は「ああっ!」という悲鳴とともに顔をぐっとのけぞらせる。
(こんな……こんなことになるなんて……)
奴らを追い詰めたつもりが、逆にそれが罠だったなんて。久美子は悔やんでも悔やみ切れなかった。
(私も兄さんも、相手を甘く見過ぎていたんだわ。そのせいで美紀さんや絹代さんまで悪魔の手に引き渡してしまった)
久美子は激しい悔恨に苛まれる。これまでの悪鬼たちのやり口から見て自分に対してだけならまだしも、このままでは美紀と絹代に対しても他の捕らわれの美女たち同様、いや、それ以上の責めが加えられることだろう。
「ああっ、も、もうやめてっ!」
「お腹が、お腹が苦しいわっ!」
久美子の両隣のベッドでは美紀と絹代が二度目の浣腸に喘いでいる。最初は津村と順子が行った浣腸だったが、今度は銀子と友子が喜々とした表情を見せながらガラス製の凶器で美貌の人妻を責め立てている。
「じたばた見苦しく騒ぐんじゃないよっ。小夜子はもっと素直だったよ」
「200ccなんてまだまだや。美沙江お嬢様は軽くこの倍のグリセリンをお腹の中にぶち込まれたんやで」
銀子と友子はそんなことを言いながらポンプを圧し続ける。その度に美紀と絹代の裸身は瘧にかかったように断続的な痙攣を示すのだった。
「み、美紀さんっ、絹代さんっ、ゆ、許してっ!」
美紀や絹代まで悪鬼たちの生贄にしてしまった。悔恨に苛まれる久美子は思わずそんな悲鳴に似た声をあげるのだった。
「三人のご婦人にとっては初めての経験だ。そんなに慌てて浣腸するとすぐに漏らしてしまうぞ。せっかくだからもっと楽しませてやったらどうだ」
田代がニヤニヤ笑いながら声をかけると川田は頷き、吉沢に声をかける。
「吉沢の兄貴、ちょっと交代してくれ」
「了解」
おどけた返事をした吉沢は久美子に装填されたままの浣腸器を受け取り、じわじわとポンプを圧す。川田は久美子の上半身に取り付き、形の良い乳房をやわやわと揉み始める。
「な、何をするのっ!」
いきなり川田に愛撫を加えられた久美子は嫌悪に眉を顰め、裸身を激しく悶えさせる。そんな久美子の動きを封じるように吉沢がぐっと浣腸器のポンプを圧し、薬液を送り込む。
「ああっ!」
久美子は身体を弓なりに反らせて悲鳴を上げる。すかさず川田は淫靡な愛撫の手を強める。
義子とマリが羽帚を取り上げ、久美子の滑らかな腹部やすらりと伸びた太腿、そしてしっとりと湿り気を帯びている久美子の陰毛を揃えるような調子で撫でさする。
その度に吊り責めのせいか剥き出しになったままの久美子の花芯がぴくっ、ぴくっと生き物のように震える。切羽詰まった久美子は「嫌っ、嫌っ」と赤子がむずがるように首を左右に振り、身悶えるのだ。
「こうなりゃすっかり諦めて、素直に身体を任せるんだ。いいな」
川田はそんな風に久美子に因果を含めようとするが、久美子は「嫌っ、誰があなたなんかにっ!」と拒絶の声を上げる。すると吉沢が再びぐいっとポンプを圧し、薬液が久美子の腸の中に一気に流れ込む。
「ああっ、ど、どうすればいいのっ!」
川田と吉沢の息の合った責めに完全に平常心を失った久美子がそんな悲鳴を上げたので、ホームバーに詰め掛けた男女からどっと笑い声が上がる。
「京子だって最初は俺が優しく女にしてやったんだぜ。いい加減に諦めるんだ、ええ、久美子」
「そ、そんな……」
すっかり追い詰められた久美子はなよなよと首を振り、拒絶の意志を示そうとするが、そこには今までのような強い反発は見られない。
「浣腸しながら女を口説くなんて聞いたことがないわ」
「そんなことをされたら女は断りようがないじゃない。ルール違反だわ」
久美子の隣りで美紀に浣腸を施している銀子と朱美がからかいの声をあげる。銀子と朱美は代わる代わる浣腸器のポンプを圧し、一寸試し五分試しといった風に美紀を責め立てる。
その間、津村もまた美紀の身体のあちこちに淫靡なマッサージを施しながら、ねちねちとした口調で因果を含めているのだ。
「お嬢さんの小夜子さんも僕の手で立派に女になったんですよ。お義母さんもこうなったら覚悟を決めて、僕に身を任せたらどうですか?」
「つ、津村さんっ、あなた、本気でそんな恐ろしいことをおっしゃるのですかっ」
美紀はじわりじわりと薬液を注入される苦しさと、津村に女体の敏感な箇所を巧みに刺激される懊悩に激しく身悶える。
96.酒の肴(18)

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