117.双花開く(4)

「何本生けられても同じことよ」
順子はそう言うと一本、また一本と薔薇の花を足して行く。順子の言う通り、何本生けられても珠江のその部分は人間花器の言葉どおり、しっかりと花の形を保持しているのだ。
「家元夫人は博士夫人よりは随分年上だし、おまけに経産婦でしょう。いっしょにするのは可哀想だわ」
再び見物に回っている葉子がコップ酒を飲みながら揶揄するような調子で声をかける。
「母親が出来なければその分、娘の負担が増えるだけよ」
順子が口元に残酷そうな笑みを浮かべながら絹代夫人の恥丘を手のひらでポン、ポンと叩く。
「人間花器の調教を受ける気になったかしら? 絹代夫人」
「は、はい……」
絹代は小声で答える。
「聞こえないわ。もっと大きな声で答えなさい。調教を受けるの、受けないの?」
「お、お受け致しますわ」
順子の強い口調に釣られるように絹代がそう答えたので、女たちはどっと笑いこける。
「それじゃあ始めるわよ」
順子は再び薔薇を一輪、指先でつまむとその茎を絹代の秘裂にすっと差し入れる。
「うっ……」
異物が挿入される不快感に、絹代は小さく身体を震わせる。同時に華道を志す人間にとって神聖なものである花をそのような場所で受け入れたことに、たまらない嫌悪感を覚えるのだ。
順子はそんな絹代にかまわず、花茎を深々と押し込むと手を離す。
「珠江夫人のようにそのまましっかりと支えるのよ」
順子はそう言うと、絹代の太腿を軽く叩く。絹代は必死で下半身に飾られた薔薇の花を支えようとするが、すぐにそれはがくりと下向きになり、絹代の秘裂から抜け落ちてしまう。
「あらあら、駄目じゃない。お花をこぼしたら花器の役には立たないわ」
順子はわざとらしく呆れたような声を上げると、落ちた薔薇の花を拾い上げる。
「さ、やり直しよ」
再び絹代の秘裂に薔薇が飾られる。
「オマンコにしっかりと力を入れるのよ。奥様」
「ご主人のオチンチンを締め付けるような気になるのよ」
友子と直江はそんなことを言って絹代をからかう。
「いくらなんでも家元のオチンチンが薔薇の茎みたいに細いってことはないんじゃない?」
順子がそう言うと友子と直江、そして葉子と和枝もどっと笑いこける。
そんな風に夫の元康を侮蔑されているのに憤慨する余裕もなく、絹代夫人はまるでその部分に命をかけたような激しさで懸命に締め上げる。しかしその奮闘も空しく、薔薇はすぐに抜け落ちてしまうのだ。
「あ、ああ……だ、駄目ですわ」
絹代はそう言うと口惜しさと情けなさが一気に込み上げてきたのか、シクシクとすすり泣きを始める。
「何が駄目なのよ。人間花器にはなれないってことなの?」
順子が意地悪く尋ねると絹代は「ハ、ハイ……」と頷く。
「さっきも言った通り、家元夫人がなれないのなら娘の美沙江にその分余計に飾ってもらうだけだわ。おまんこやお尻の穴だけじゃなく、口にも銜えさせるし、鼻の穴や耳の穴にも詰め込んでやるわ。それでもいいのね?」
「ま、待って。待ってください」
絹代の顔がさっと青ざめる。
「お願いですっ。そんな酷いことをしないでっ」
「私もそこまではしたくないけれど、奥様がどうしても嫌というのならしょうがないわ」
「嫌じゃ……嫌じゃありません」
絹代は泣きながら首を振る。
「でも、どうしても出来ないのです。珠江様のようには。わ、私の身体では無理なのですわ」
絹代はそこまで言うとわっと号泣する。それまでおろおろしながら絹代の様子を見守っていた珠江が口を開く。
「き、絹代様……私の言うとおりになさって」
「え?」
絹代は涙に濡れた瞳を珠江に向ける。
「お尻の……お尻の穴をぐっと締めるようになさって」
珠江夫人はそこまで口にすると羞恥のあまり頬を真っ赤に染める。珠江が切羽詰まってそんなことを口にしたので、友子や直江たちはどっと笑いこける。
「お尻をぐっと締めるようにしながら、同時に入り口のあたりを締めるのです」
「い、入り口って?」
「……オマンコの入り口ですわ」
珠江がさらにそんな露骨な表現で絹代に教え始めたので、女たちはさらに大きな声で笑う。
「傑作だわ。お偉い博士夫人がオマンコなんて」
友子がそんなことを言いながら嘲笑の声を上げるが、順子は独り真剣な顔で「静かにするのよっ!」と怒声を上げる。
「オマンコをオマンコと言ってどこが悪いの。湖月流はそのオマンコを使って花を生ける華道なのよ」
順子がそんなことを大真面目な調子で言い出したので、友子も直江もしばしきょとんとした顔付きになる。
「珠江は家元夫人に対して真面目に稽古をつけようとしているのよ。からかうなんてとんでもないわ」
これまで盛んに揶揄の声を上げていたのは順子自身ではないかと友子と直江は釈然としない思いだったが、順子の機嫌を損ねるのは得策ではないと思い、やがて「す、すみません」と頭を下げる。
「邪魔して悪かったわね。続けなさい」
「ハ、ハイ……」
順子の言葉に珠江は頷く。
女体を使って花を生けるなど、珠江には全く理解の出来ない行為であったが、それを前衛華道としてひたすら追求する順子はそれなりに真剣なのかもしれないと珠江はぼんやり考える。
美沙江を守ることも出来ず、夫の前にも顔を出せなくなった珠江は、もはやこの田代屋敷の中で性の奴隷として生きていくしか道はない。それならばやくざの男たちの前で珍芸を披露したり、娼婦として抱かれたりするよりは、順子が追求する芸術の素材となる方がましでなないかなどと思うのだった。
「大塚先生、絹代様に締め方を教えて差し上げたいのです。珠江の身体からいったん薔薇を外してくださいますか」
「いいわよ」
順子は珠江の願いに頷くと、珠江に生けられた薔薇をいったん取り去る。
「友江さん……絹代様のオマンコに指を一本入れてください」
そう珠江に声をかけられた友子は一瞬戸惑いの表情を見せたが、やがて珠江に言われた通り、人差し指を絹代の中に差し入れる。

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