「だ、駄目っ」
美紀夫人は思わず制止の声を上げると、自らの顔を文夫の双臀の狭間にぶつけるようにする。息子の隠微な穴に唇が触れたその瞬間、美紀夫人の身体は背徳の戦きにブルッと慄える。
(ああ……こんなこと、許されるはずがない……地獄に、地獄に落ちてしまうわ……神様、許して……ああ……許して下さい)
美紀夫人はそんな言葉を胸の中で呪文のように唱えながら、文夫の肛肉を舌先でなぶり出す。
「ああっ、か、母さんっ! そ、そんなっ!」
文夫は腰部をくねらせ、必死で母の舌先から逃れようとするが、義子とマリがそうはさせじと両方からがっしりと文夫の下半身を押さえ付ける。
「そんな甘っちょろいやり方やじゃあ、男の熱が冷めてしまうよ。犬みたいにもっと舌を出して、ケツの穴の皺の一枚一枚までペロペロ嘗めるんだ」
朱美は怒声を上げると手にした青竹で美紀夫人の背中をパシッと叩く。
「静子夫人だって、ここにいる京子だって、小夜子だってそのやり方は身につけているんだ。いい年をして男のケツの愛し方も知らないようじゃ娘に笑われるよっ」
朱美のそんな残酷な言葉に、美紀夫人は胸が掻き毟られるような思いになる。夫人は必死で感情を殺し、朱美の操り人形になったような気分で文夫を愛撫し続けるのだ。
(許して……ああ……文夫さん……ママを許して)
美紀夫人は命じられるまま、文夫の菊花の襞の一つ一つを舌先で数えるような濃厚な愛撫を注ぎ込む。すでに津村やシスターボーイたちによって調教されているせいか、文夫のその部分はたちまち柔らかくほぐされていく。
「そこでぐっと舌を突き出して、ケツの穴の中に突っ込むんだよ。いつも突っ込まれるばかりなんだから、たまには突っ込んでやんな」
朱美がそう言って美紀夫人の尻を叩くと、義子とマリはゲラゲラ声を上げて笑う。
(地獄に……地獄に落ちる……親子三人で地獄に落ちるなら、地獄の底でママがあなたたちを守ってあげる)
美紀夫人はそう胸の中で叫ぶと、朱美に命じられるまま舌を突きだし、ぐっと丸めるようにして文夫の直腸に突っ込む。
「あ、ああっ! ママっ!」
狼狽した文夫が思わずそんな声を上げたので、三人のズベ公は声をそろえて笑い出す。
自らの舌先で息子を犯す――そんな倒錯の極限を経験させられている美紀夫人の思考は麻のように乱れていく。
小夜子はいったん弟に対する愛撫を止め、そんな母と弟の狂態をじっと見つめている。
ついに母まで畜生に落とされてしまった――そんな思いが胸が張り裂けるような悲しみとなり、小夜子の切れ長の目から幾筋もの涙がこぼれ始める。
そんな小夜子の涙に濡れた頬に、勃起した文夫の肉棒がパシンと音を立てて当たり、小夜子ははっと我に返る。そんな小夜子の様子がおかしいのか、津村がゲラゲラ声を上げて笑い出す。
「何をぼんやりしているんだ、小夜子。お義母さんに調子を合わせて文夫君を責めないか」
小夜子の目の前で鉄のように硬化した文夫の肉棒がゆらゆらと揺れている。実の母に肛門を舌で愛撫されるという言語に絶する汚辱と羞恥、そして何よりも倒錯と被虐の快感に酔うように「ああっ、ああっ」と少女のような悲鳴を上げながら悶え抜いている文夫。その姿を見ているうちに小夜子の中に不思議な嗜虐の炎が燃え上がり、小夜子は大きく口を開けて文夫を深々とくわえ込む。
「い、いいっ!」
文夫は思わず快楽の悲鳴を上げる。文夫を挟んで前後から責め立てている姉と母。素っ裸のまま背徳の極みとも言える行為を演じている村瀬宝石店の三人の姿を、京子と美津子は毒気を抜かれたような表情で見つめている。
「よし、もういいよ。これ以上続けたら文夫がもたない」
朱美が制止するが、美紀夫人と小夜子はその声も耳に入らないかのように文夫を愛撫し続ける。
「聞こえなかったのかい、もうやめるんだ」
マリと義子に引き離され、ようやく美紀夫人と小夜子は文夫の身体から離れる。虚ろな表情の二人を目にした朱美は「ちょっとやり過ぎたかな……」と呟く。
朱美はハア、ハアと荒い息を吐いている文夫の股間の剛直が高々と天を向いているのに目を向けると、「準備完了ってとこだね、始めな」と京子に声をかける。
京子はこくりと頷くと改めて文夫の方を向き「ねえ、来て……来て……文夫さん」と身体を揺らす。
「何をぼんやりしているんや。京子が誘っているやないか。女に恥をかかすんか」
義子が文夫の尻をパシッと叩くと、文夫は我に返ったような顔付きになり、京子をじっと見つめる。
「京子さん……」
「文夫さん……」
文夫は足元に座り込み、悲しげな目を向けている美紀と小夜子、そしてそれ以上に痛切な表情をしている美津子の方をちらりと見る。そうして文夫が目を逸らした瞬間、京子はその成熟した裸身を文夫にぶつける。
「ああっ、文夫さんっ」
「京子さん……」
「お願い、今は、今だけは京子のものになってっ!」
京子はそう叫ぶように言うと、貪るように文夫の唇を求める。文夫はそんな京子の情熱的な行為にあてられたように、唇を交わして行く。
互いの舌を激しく吸い合う情熱的な接吻を交わしている京子と文夫を、朱美たちズベ公は頼もしげに眺めている。
「京子のやつ、なかなかやるじゃないか」
「案外前から文夫のこと、惚の字やったんやないか」
マリと義子がそんなことを言い合っているのを、美津子は胸をえぐられるように感じている。
長い接吻を終えた京子と文夫は次に、もどかしげに下半身を擦り付け合う。それが、京子が早くも文夫を迎え入れようとしているのだということに気づいたズベ公たちは、思わずぷっと吹き出す。
「おいおい、ちょっと早いんじゃないの」
「そうや、もっと濃厚な前戯をしてもらわな、お客さんはおもろないやないか」
そんな野次を飛ばし始めたマリと義子を、朱美は「待ちな」と制する。
「このまま、京子の好きなようにやらしてやんな」
「そんな甘いことでええんかいな。岩崎親分が来るまであと二日しかないんやで」
「今日のところはとりあえず繋がらせることが出来りゃあ御の字だよ。細かい演技は明日でいいよ。それよりもコンビの息をぴったりと合わせる方が先さ」
朱美はそう言って京子と文夫の痴態をじっと見つめる。
京子は荒い息を吐き、文夫に「ううん……文夫さん……も、もう少し上よ……あっ、駄目っ。そこは下すぎるわ」などと声をかけながら腰を擦り合わせるようにしている。
「あ、ああっ!」
突然京子は電流に触れたように身体をブルブル震わせ、悲鳴を上げる。朱美が京子に「つながったんだね」と声をかけると、京子はさも恥ずかしげにこくりと頷く。
「それならお互いに良い声を上げながら、同時に上り詰めるんだよ、いいね?」
「そ、そんなこと……」
無理ですわ、と弱々しく抗議する京子に、朱美は「無理なんて言ってちゃあ、コンビは勤まらないよ。文夫と小夜子を組ませてもいいのかい?」と叱咤するように言う。
148.懊悩の限界(10)

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