261.男と男(1)

「ほらほら、とっとと歩きな」
「もっと胸をしゃんと張って、堂々とするんだよ」
 素っ裸を後ろ手に堅く縛られて、猿ぐつわを噛まされたまま葉桜団の女たちに引き立てられているのは山崎と文夫の二人の男だった。
 二人の男は股間に股縄を通されている。
 股縄は陰茎の根元で輪を作り、それぞれの肉棒を極端なまでに引き出すことになってさいる。おまけに雁首には別の細縄をくくりつけられ、その縄尻を銀子と朱美に取られて引き回されている。
 山崎は京子が、文夫は美津子が身に着けていた褌の切れ端で堅く猿轡をかけられており、束ねた麻縄を鞭代わりにした義子とマリによって時折尻を叩かれ、順子や千代たちの待つ菊の間へと歩かされていくのだった。
「岩崎親分のお妾さんの我が儘に付き合わされるのもかなわないと思っていたけど、考えてみれば女ばかりで男を責め上げるっていうのも、楽しいかも知れないわね」
 マリがそう言うと義子も「そうそう」と同意する。
「おまけにその男たちがこんなハンサム二人ときたら、なんや今から胸がドキドキして来たわ」
 義子がそう言って一同を笑わせる。
「だからといって羽目を外しすぎるんじゃないよ。田代屋敷では男奴隷の方が貴重なんだからね」
 首領の銀子もまたクスクス笑いながら、他のズベ公たちに釘を刺す。
「特にこの山崎の旦那は今夜がデビューで、久美子との実演ショーを演じなければならないんだ。無駄玉を打たせていざ本番で立たなくなったら森田組と葉桜団の面子に関わるからね」
「わかってるわよ。姉さん」
 銀子の妹でもあるマリが頷く。
「文夫の方だってたった今京子と絡んだばかりだし、夜のショーでは久しぶりに愛しい美津子と愛し合わなきゃならないんだから、いくら岩崎親分の連れといってもおかしなことをさせるわけにはいかないわ」
「そんなに文夫にご執心なの?」
 文夫の縄尻を引いていた朱美がマリに尋ねる。
「特に和枝って方がね。文夫を見る目つきがただ事じゃなかったわ」
「こんなチンチン丸出しの格好のまま連れて行ったら、たちまち押し倒されるんやないか」
 義子がそう言うと一同は再びどっと笑いこける。
「笑い事じゃないわよ。くれぐれもショーの進行の妨げにならないようにしてもらわないと。そこんところは釘を刺しておかないとね」
 銀子が表情を改めて仲間たちに言い渡す。
「ショーと言えば、姉さんはどう思う」
 マリの問いかけに銀子が「何のことだい」と問い返す。
「ほら、この二人を夫婦みたいにして」
「ああ、ホモショーを演じさせようって話かい」
 それまで懸命に無表情を保ち、汚辱を堪えていた山崎と文夫が銀子の言葉を聞いた途端、はっとして同時に顔を上げる。
「あたいはなかなか面白いと思うけどな」
 義子がマリの意見に賛同する。
「いくらハンサム二人とはいえ、男同士の絡みなんて見たがるかねえ」
 朱美が首を捻る。
「朱美姐さんは男に興味がないからそう思うのよ」
「全然興味がない訳じゃないさ」
 マリの言葉に朱美は反論すると、文夫の尻をピシャ、ピシャと叩く。
「こんな可愛い男の子なら、あたしだって相手をしてみたいよ」
「それは姐さんがご執心の、小夜子にそっくりやからやろ」
「そりゃそうかも知れないけど……別にそれだけが理由じゃないさ」
 そんなマリと朱美のやりとりを聞いていた銀子に、義子が「それなら試しにこれからちょっと真似事をさせてみたらどやろ。その反応次第でショーに取り入れるかどうかを決めたらええんやない」と提案する。
「真似事って、何をさせるんだい」
「それは……」
 義子は二人の男たちに意味ありげな視線を向けると、銀子の耳元に口を寄せる。
「ふん、なかなか面白そうじゃないか」
 義子の提案を聞いた銀子がニヤリと笑う。
「何、何
「いったい何をやらせるのさ」
 マリと朱美も集まってくる。義子がひそひそと何ごとか囁くと、二人は声を上げて笑い出す。
「そいつは傑作だ」
「二人がどんな顔をしてそれをするのか、今から楽しみだわ」
 女たちがはしゃぐのを不安そうに見詰める山崎と文夫の尻を、義子とマリが交互に鞭で叩く。
「そうと決まりゃ善は急げや」
「ほらほら、きりきり歩きなっ」
 義子とマリは二人の尻を軽く蹴ると、銀子と朱美とともに千代や順子たちの待つ菊の間へと引き立てていくのだった。

「お待たせしました」
「ハンサムさんお二人、ご到着」
 義子とマリが菊の間の扉を叩くと、中から順子が顔を出す。
「遅かったじゃない。皆さんお待ちかねよ」
「色々と支度がありましてね」
 銀子が釈明する。
「とにかく早く入って」
 順子が一同を急き立てるようにする。銀子、朱美、義子、そしてマリの四人のズベ公が山崎と文夫を引き立てて部屋に入る。
「ほら、入るのよ」
 銀子と朱美が全裸の山崎と文夫を前に立ててどんと背中を突く。たたらを踏むように部屋の中に足を踏み入れた二人の男に、部屋の中で酒盛りをしていた女たちの視線が集中する。
「まあ、本当に来たわ」
 早くも酔いが回っているのか、眼をとろんとさせた和枝がふらふらと立ち上がると、いきなり文夫に抱きつく。
「文夫ちゃーん、会いたかったわよ」
 和枝はそう言うと文夫の頬と言わず、首筋と言わず接吻の雨を降らせる。和枝は驚きに目を白黒させている文夫を片手で抱きすくめたまま、もう一方の手で下着を下ろすと裸の腰部を文夫の下半身に擦りつけようとし始めたので、銀子と朱美は慌てて文夫を和枝から引き離す。
「義子の冗談が冗談じゃなかったね」
 マリが呆れてそう言うと義子も「まったく、とんでもない女や」と頷く。
 和枝は悪びれもせず下着を引き上げると、ケラケラ笑いながら元の席に着く。
「いくら何でもせっかち過ぎるわよ。和枝さん」
 葉子が苦笑しながら和枝をたしなめる。

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