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266.晒しもの(3)

「そ、そうおっしゃられても……」
 美紀夫人は恨めしげに銀子を見る。
「お客様がそうするもしないも、お客様の自由ですから」
「何を言っているのよ」
 銀子は美紀夫人の髪の毛を掴むと、ゴシゴシとしごき上げる。
「お客様がその気にならないのなら、その気にさせるのがあんたの役割でしょう」
「や、やめて……」
 美紀夫人は髪を引き抜かれそうな苦痛に悲鳴を上げる。
 朱美もまた絹代夫人の耳をぐいぐい引っ張り、「あんたたちはもう性の奴隷なのよ。わかっているのっ。いつまでも大家の令夫人のつもりでいると承知しないわよっ」とがなり立てている。
「い、いったいどうすれば」
 美紀夫人が苦しげに呻くような声を上げると、銀子は「いい歳をしてそんなことも分からないのっ」と怒声をあげる。
「そんな風に縛られていても、腰をくねらせたり、オッパイを揺らせたりするくらいは出来るでしょ。そうやって色っぽく男を誘うのよ」
 銀子がそう言うと朱美がニヤリと笑い「わからなければお手本を見せてあげるわ。こんな風にやるのよ」と言って、両手を頭上に組む。
「ねえーん、皆さまーん」
 朱美がそんな黄色い声を出して、腰をくねくねとくねらせ始めたので、ホームバーにたむろしている客たちはどっと笑い声を上げる。
「遠慮しないでもっと近くにお寄りになって。美紀のおっぱいやお尻、心ゆくまでお触りになってーん」
 朱美がそんな台詞を吐きをながら卑猥に腰を振り続ける。美紀夫人はあまりの屈辱に赤く染めた顔を伏せるが、すかさず銀子が、赤い褌に締め上げられた美紀夫人の豊満な尻を思い切り平手打ちする。
「何を顔を背けているのよ。朱美が折角お手本を見せているのよ。しっかりと見て勉強するのよ」
 銀子は次に困惑の色を顔中に浮かべている絹代夫人の太腿をピシャリと打ち、「そっちの奥様もしっかりと見るのよっ」と叱咤の声を上げる。
「わ、わかりました」
 絹代夫人はガクガクと頭を上下に振ると、悲痛な表情を朱美に向ける。朱美は調子に乗って観客たちに背中を向け、尻を思い切り突き出すと「ねえーん、触って。美紀のお尻を触って-」と言いながら大きく振り立て、男たちを笑わせている。
「さ、やってご覧よ」
 銀子が美紀夫人と絹代夫人にそう命じる。二人の美夫人はしばらくの間、汚辱に身体を小刻みに震わせていたが、銀子が「早くしなっ」と声を荒げると、諦めたように腰部をゆっくりとくねらせ始める。
 晒し者になっている二人の人妻のことが気になっていたものの、それぞれの威厳さえ感じさせる気品のある美貌に近寄りがたさを感じ手を出しかねていた男たちが、それをきっかけにしたかのように次々に立ち上がる。そして、まるで誘蛾灯に吸い寄せられる虫たちのように、美紀夫人と絹代夫人の近くへと引き寄せられていくのだった。
 ポルノ業者ややくざといった野卑な男たちが、舌なめずりせんばかりの顔つきで近寄ってきたので、絹代夫人の表情に明らかな脅えの色が浮かぶ。
 恐怖と羞恥に失神せんばかりの絹代夫人に美紀夫人は「ち、千原の奥様、しっかりなさって」と声をかけるが、自らの身体も恐怖のあまりブルブルと震え出すのを抑えることが出来なくなっているのだ。
「そうやって黙ってちゃ駄目じゃないか。さっき朱美が手本を見せたとおり、殿方たちを色っぽく誘わないか」
 銀子がそう言うと美紀夫人と絹代夫人の尻を一発ずつぶつ。絹代夫人が青ざめた表情のまま唇を震わせているのを見た美紀夫人は、覚悟を決めたように口を開く。
「ね、ねえ、み、皆さま。ご、ご遠慮なさらずに、もっと近くにお、お寄りになって」
 美紀夫人がそんな風に男を誘う言葉を口にしたので、ホームバーの客たちはどっと歓声を上げる。
「お育ちが良いせいか、朱美より随分言葉が丁寧ね」
「あたしはどうせ育ちが悪いわよ」
「でも、その方が何となく色っぽさが増すような気がするわ」
 銀子はそう言って笑うと、「モジモジしていないで、どんどん先を続けるのよ」と美紀夫人を叱咤する。
「み、美紀のお……」
 美紀夫人がそこで思わず口ごもると朱美が「はっきり言いなさいよ。オッパイでしょう」と声をかける。銀子もまた「それとお尻よ。どっちも奥様のご自慢でしょう」と叱咤するような声を上げる。
「み、美紀のお、オッパイとお尻を、こ、心ゆくまでお触りになって下さい」
 美紀夫人が震える声でそんな屈辱的な台詞を吐くと、ホームバーの客たちは再びわっと沸き返る。
「そんなに頼むのなら触ってやらなきゃな」
 南原組の木村が一歩前に進み出ると、美紀夫人をいきなり背後から抱きすくめ、その乳房を両手で鷲掴みにする。
「あっ、お、およしになって」
 美紀夫人は思わず狼狽の声を上げるが、木村は「何を言っているんだ。オッパイを思い切り揉んでくれって頼んだのはてめえだぜ」と夫人の豊満な乳房を揉み続ける。
「南原の。てめえだけ楽しむのは狡いってもんだぜ。ちょっと場所を空けな」
 熊沢組の大沼が進み出ると、木村と美紀夫人の間に割り込むようにする。
「邪魔するんじゃねえ」
 木村がギョロリとした目をさらに大きくして凄む。
「別に邪魔をする気はねえ。この奥さんは乳だけじゃなくケツも触ってくれと頼んでいるんだ。乳を揉むなら前からだって出来るだろう」
「なるほど。それもそうだ」
 木村は納得したように頷くと夫人の前に回り、改めてその豊乳を揉み始める。
「あっ、そ、そんなに強くしては駄目っ」
「ブツブツ言うなっ。思う存分揉んでくれって頼んだのはてめえだろう」
「も、揉んでくれなんて……触ってとお願いしただけですわ」
「どっちだって同じようなもんだ」
 木村はゲラゲラ笑いながら美紀夫人の乳房を揉み続ける。
 一方、夫人の尻を淫靡な手つきで撫で回していた大沼は、ニヤリと笑うと夫人の腰部を締め上げた褌の結び目の下に手を滑り込ませる。
「あ、ああっ、な、何をするのっ」
 大沼の指先が夫人の双臀の溝に沿って滑り、その奥に秘められた菊蕾をまさぐり始めると、夫人は甲高い悲鳴を上げる。
「小娘みてえな悲鳴を上げるんじゃねえっ。ケツの穴を触ってくれと頼んだのはてめえだろう」
「そ、そのようなことは申しておりませんわ」
「ケツを思う存分触ってくれと頼んだだろう。ケツの穴だってケツのうちだ。学校で習わなかったか」
 大沼はそんなことを言い、ホームバーの客を笑わせる。
 美紀夫人が野卑なやくざの手によって前後からいたぶり抜かれている様子に震えながら視線を向けている絹代夫人の肩を、銀子がポンと叩く。
「何をぼんやりしているのよ、奥様。美紀夫人一人を男たちの玩具にしておくつもりなの」
 銀子はそう言うと口元に冷酷な笑みを浮かべるのだった。

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