「ぐ、ぐううっ」
脂汗を流しながら山崎が裸身を悶えさせる様子を、座敷を埋めた観客たちはさも楽しげに見守っている。
舞台の上では久美子が手に持った蝋燭で山崎の陰部を炙っている。蝋燭の火が陰嚢をさっと嘗めるたび、山崎は猿轡の下で獣のような呻き声を上げるのだった。
妹によって男性器を残酷に責められる――その激烈な汚辱と苦痛に山崎はもはや失神寸前の状態にある。一方の久美子は兄が苦痛に悶えるのを血走った目で見つめながら、強いられた悪魔の行為を続けているのだった。
「男を責めるのはほどほどにして、早いところ本番をおっ始めて欲しいぜ」
座敷の中央に陣取る時造がそうぼやくように言うと、岩崎の妾の葉子が「あら、面白いじゃない」と口を挟む。
「女の客もいるんだから、ちゃんとそれに合ったサービスをするのも大事よ」
「そうそう」和枝が同意する。
「女主体のショーばかりじゃ飽きちゃうわ。たまにはこんなのも良いじゃない」
「そんなもんかねえ」時造は首を捻る。
岩崎や妾たちから少し離れたところに座っている町子は、舞台上で繰り広げられる酸鼻なショーに食い入るように見入っている。
一連の誘拐事件の初期段階から森田組に対抗してきた山崎探偵事務所。幾度か彼らを追い詰めその心胆を冷えさせたのだが、戦いの過程で助手の京子を捕らえられ、京子の妹の美津子を誘拐された。
そして京子に代わって助手を買って出た妹の久美子もまた依頼者である美紀夫人や絹代夫人と一緒に敵の手に落ち、そしてついには山崎自身も最後の協力者であるフランソワーズ・ダミヤとともに森田組の軍門に下ったのである。
今、舞台上で演じられている奇妙な寸劇は、その森田組と山崎たちとの戦いの記録を徹底的に戯画化したものである。そこでは山崎の探偵としての能力や実績は完全に貶められ、ひたすら嘲弄の対象とされているのだ。
「このお芝居そのものが、山崎探偵と久美子って娘に対する精神的な拷問になっているのね」
町子がそう言うと岡田が「そういうことだ」と頷く。
「スターの量と質にも驚いたが、演出もなかなかのもんだ。森田組にはよほどの策士がいるらしいな」
「そのようね。うちも単純な絡みの映画ばっかり撮っていたら、せっかくの素材が泣くというものだわ」
岡田と町子はそんなことを言い合っている。
舞台上ではようやく山崎に対する拷問が中断される。妹の手によって散々痛めつけられた山崎は、銀子の手で猿轡を外されてももはや反撥する気力もないようで、素っ裸で吊られたままハア、ハアと喘いでいる。
久美子もまた精も根も尽き果てたという風に、舞台の中央で座り込んでいる。実の兄に対する過酷な拷問を強いられたことが、勝ち気な久美子を完全に打ちのめしたのである。
「何をぼおっとへたり込んでいるの。これからが本番よ」
朱美が久美子の背中をどんと叩くと、油が入ったガラス瓶を久美子に手渡す。
「さ、この油をお兄さんの大事なところに塗るのよ」
「えっ」
久美子は脅えたように朱美を見る。
「見なさい、お兄さんのあそこ。蝋燭で炙られたせいで赤くなっているでしょう。この油は火傷のお薬を兼ねているの。早く塗らないとお兄さんのあそこ、使い物にならなくなっちゃうわよ」
朱美はそう言うと再び久美子の背中を叩く。久美子はしばらくの間手にしたガラス瓶を呆然と見詰めていたが、やがて意を決したように膝をついたまま兄の方ににじり寄る。
久美子は山崎の足元に座り込み、露わになった兄のその部分から目を逸らすようにしながらガラス瓶の蓋を開けると少量の油を掌に取る。
ハーブかアロマのエキスが入っているのか、久美子の体温に暖められた油から妖しげな芳香が立ち上る。久美子は自らを酔わせるようにすっとその香りを吸い込むと、手に取った油を山崎の陰嚢にべったり塗りつける。
「に、兄さん、許して」
久美子は震える声でそう言うと、兄のその部分に油を揉み込んでいく。
「う、うっ」
火に炙られた皮膚に油が浸み込む痛みと、妹によって揉み上げられる妖しい感触が一体となり、山崎は思わず呻き声を上げる。
「そんなのじゃ足りないわよ。何を遠慮しているのよ」
朱美は久美子から瓶を奪うと油をたっぷり掌に取り、山崎の玉袋に揉み込んでいく。
「あ、ああっ」
火に焼かれたその部分を乱暴に揉み上げられる激痛に、山崎は悲鳴を上げる。
「何よ、このくらいで泣き声を上げるなんてだらしないわね。それでも男なの」
朱美はゲラゲラ笑いながら山崎のその部分を揉み立てる。兄の苦痛を見かねた久美子は「や、やめてっ」と声を上げる。
「お嬢さんのやり方が生温いから代わりにやって上げているのよ」
「私が、私がちゃんとやります。ですからもう止めてくださいっ」
「手加減しないわね」
「は、はいっ」
久美子が頷くのを見た朱美はようやく山崎を責める手を止める。
「それじゃ、しっかりやんな」
朱美に煽られた久美子は再び油を取り、兄の肉袋に塗り込む。
「もっと強くだよ」
「は、はいっ」
朱美の命令に久美子は頷き、油に濡れた手で山崎のそれを再び揉み上げる。
「あ、ああっ」
「お兄さん、が、我慢してっ」
久美子が股間の肉袋を揉み立てるうちに山崎の肉棒は充血し、次第に屹立し始める。それに気づいた久美子は脅えたような表情になる。
「ほらほら、兄さんのチンポがおっ立ってきたわよ」
朱美はそう言って久美子の頭を両手で掴み、半ば勃起している山崎の肉棒を見せつけようとする。
「嫌っ」
久美子は悲鳴を上げて兄のそれから顔を背けようとする。
「何が嫌よ。カマトトぶるのもいい加減にしなさいよ」
銀子は久美子を叱咤するようにそう言うと朱美に手を貸し、再び久美子の顔を山崎の股間に向けさせる。
「玉袋だけじゃなくて、棒の方にも油を塗ってあげるのよ」
銀子はそう言うと朱美と顔を見合わせ、ケラケラと笑い合う。久美子は悲痛な表情を兄のそれに向けていたが、やがて意を決したかのように油で濡れた手を山崎のそれに触れさせる。
妹の指が敏感な箇所に触れた途端、山崎は「うっ」と声を上げ、腰部をブルッと震わせる。同時に半勃ちになったそれがバネ仕掛けのように跳ね上がったので、銀子と朱美は声を揃えて笑う。
「この探偵さん、妹に触られるのがよほど気持ちが良いのね」
「やっぱり血を分けた兄と妹だわ。相性もばっちりという訳ね」
そんな嘲弄の声を浴びながら、久美子はベソをかきそうな顔付きで山崎の肉棒を揉み上げていく。実の妹によって懊悩の極致を体験させられている山崎は思わず「く、久美子っ」とほざくような声を上げる。
279.被虐の兄妹(6)

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