「それも千代夫人の意向なの?」
「いや、大塚順子だ」
町子は千代達と談笑している、頭にターバンを巻いた派手な女――湖月流華道総帥の大塚順子の方をチラと見る。
「あの順子という女の、千原流の三人に対する執着も相当なものだそうだ。特に珠江夫人に対しては格別らしい」
岡田はそう言うと「美人に対する醜女の恨みって言うのは怖いもんだ」と笑う。
「それは、あたしや直江のことを言っているの?」
「いやいや、そんなことはない。直江はともかく、町子は決して醜女じゃないよ」
「なんだかあんまり嬉しくないわね」
町子はそう言うと口を尖らせる。
舞台上では、挨拶を終えた千原流の三人の美女に対して、静子夫人が「三人とも、よく言えましたわ」と声をかけている。
「それではそろそろ、ショーをお始めになって」
「ハイ」
美沙江と珠江が素直に返事をする。
「絹代様はしばらくの間お休みよ。こちらにお座りになって、出番をお待ちになって」
静子夫人が舞台中央に敷かれた赤い布団の脇を指さすと、夫人は素直に「わかりました」と頷き、正座する。
直江と友子が赤い布団の前に赤い毛氈を敷き、その上に生け花や花器、剣山や花ばさみなどを並べると、褌一丁の珠江と美沙江が目で合図を交わし、その前に正座する。
珠江と美沙江が花と花ばさみを手に取ると、花器に生け始める。見る見るうちに花器の中に盛り花が姿を成していき、華道の素養などまったくないやくざたちも、二人の見事な腕前は分かるのか、笑い声を潜めて見取れている。
突然美沙江が花を生ける手を止めると、珠江の方を向く。
「ねえ、ねえ、珠江おば様」
「どうしたの、美沙江お嬢様」
「もうお花のお稽古なんて飽きちゃった」
「まあ、駄目ですわ。もっと気を入れてお稽古をしないと、お父様の後を継いで千原流の家元を継ぐことは出来ませんわよ」
美沙江と珠江がそんなやりとりを始めたので、観客のやくざたちは一気に緊張がほぐれたのか、どっと声を上げて笑う。
「美沙江、千原流なんてどうでも良いの。家元なんて堅苦しいこと、したくないわ」
「なんてことを。家元のお嬢様がそんなことをおっしゃるなんて。千原流華道後援会長としてはそんな我が儘は許すわけにはまいりませんわ」
「ねえ、ねえ、おば様。いつものようにエッチなお稽古をしてちょうだい」
美沙江はそんなことを言いながら、珠江に身体をすり寄せるようにする。
「おば様だってしたいのでしょう、エッチなお稽古」
「駄目ですわ、美沙江様。真面目にお稽古をしましょう」
「そんなことおっしゃって……それならどうして、お褌一枚の裸でいらっしゃるの」
「それは……花を生けるときの身体の線を、お嬢様にお見せするためですわ」
「そんな、裸でお花のお稽古をするなんて、聞いたことないわ」
美沙江はそう言うと、珠江の項にチュッと口づけをする。
「あっ……駄目ですわ。お嬢様」
「ねえ、珠江様。お褌をお解きしてもいい」
「駄目、駄目ですわ」
「身体の線を見せるのが目的なんでしょう。それなら全部お脱ぎになった方が良いじゃない」
「ああ……そんな」
美沙江は珠江の項に接吻を注ぎ込みながら、褌の結び目に手をかけて解いていく。
「お立ちになって、おば様」
素っ裸にされた珠江は、美沙江に促されて立ち上がる。美沙江は珠江の身体のあちこちに接吻を注ぎ込みながら、翳りを失った秘裂の辺りを指先でくするぐようにする。
「ねえ、おば様。美沙江、おば様のここを使ってお稽古をしたいわ」
「駄目、駄目ですわ。お嬢様……そんなこと」
「どうして、この前だってお稽古させてくれたじゃない」
「あれは……どうしてもそうしないと、お稽古をしないとおっしゃったから」
「今日だって同じよ。おば様のここを使ってじゃないと、美沙江、お稽古したくないわ」
「ああ……いけないお嬢様」
珠江は溜息を吐くような声を上げる。
「おば様だって、美沙江とそんなお稽古がしたいから、ここのところを綺麗にして来たんでしょう」
「そんな……違いますわ……お嬢様」
「おば様の嘘つき。なら、どうしてここがこんなに濡れているの」
美沙江は珠江の秘裂に指を入れ、ゆっくりと抜き差しを始める。
「あ、あっ、お嬢様っ、そ、そんなことをされたら」
美沙江と珠江の息のあった演技を、観客は息を呑むように見入っている。一方、二人から少し離れたところに座らされている絹代夫人は、血が凍るような汚辱を知覚し、顔を強ばらせている。
「ねえ、おば様。おっしゃって……珠江のおマンコにお花を生けて。って」
美沙江がそんな大胆な台詞を口にしたので観客は一瞬唖然とした顔をしたが、やがてどっと笑い出す。
「千原流華道の家元令嬢があんな淫らな言葉を口にするなんて」
大塚順子はそう言って千代達と顔を見合わせて笑い合う。
「ねえ、おっしゃって、おば様」
「い、言いますわ。だからそこをそんな風にするのはおやめになって」
珠江は喘ぎながらそう言うと、「珠江のおマンコに、お、お花を生けて」と口にする。
「声が小さくて聞こえないわ。もっと大きな声でおっしゃって」
「珠江のおマンコにお花を生けて、こ、これでいいでしょう」
珠江が開き直ったようにそう言うと、再び観客席から哄笑が湧き起こる。
「綺麗にしていたのは、おマンコでで花のお稽古をしたかったからなのでしょう」
「ああ、そうよ、お、おマンコでお花のお稽古をしたかったからなの」
珠江は悩ましく身悶えしながらそう口にする。
「分かったわ。おば様」
美沙江は頷くと、珠江からいったん身体を離し、床の上を指さす。
「おば様、ここに四つん這いになって。観客席に向かってお尻を向けるのよ」
「ハイ」
珠江は頷くと、美沙江に命じられるまま四つん這いの姿勢を取る。美沙江は珠江の傍らに跪くと、珠江の尻たぶに両手をかける。
「ああっ」
珠江が悲鳴を上げるが、美沙江は容赦なく珠江の双臀を割り開く。珠江の女の羞恥の部分が完全に露わになる。
「ねえ、皆さま、近くに来てご覧になって」
美沙江が口元に微笑を浮かべながらそう観客に語りかける。
「おば様、皆さまの前でどんな格好をなさっているかお分かり」
「ああ……い、虐めないで。お嬢様」
「おば様。皆さまの前にすっかり丸出しにしているものはなあに? ねえ、おっしゃって」
287.無残千原流(3)

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