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305.姉妹と姉弟(10)

「ああっ、ああっ」
「いっ、いいっ」
 舞台の上で白と黒の四つの肉体が絡み合っている。黒人のジョーとブラウンが、それぞれ京子と小夜子を激しい勢いで犯しているのだ。
 女同士のショーを終えた京子と小夜子は、しばしの休憩を取らされた後、本日のメインともいうべき黒人二人との四つ巴のショーを演じさせられているのだ。
「うっ、うぐっ」
 ジョーの攻撃を正面から迎え撃っている京子は、幾度もの官能の小爆発に見舞われた後、再び襲ってきた快感の高まりを歯を食いしばって堪えている。口の端からは白い泡が噴きだし、頭の中に火花が飛び散るような感覚の中、失神しそうになるのを京子は必死で堪えているのだ。
「ああっ、もっ、もうっ」
 小夜子もまたブラウンを後背位で受け入れながら、激しい快感の波に翻弄され、優美な裸身をのたうたせている。かつて経験したことのないほどの感覚に、京子と同様、自失寸前にまで追い込まれているのだ。
 しかし、京子も小夜子も何としても黒人二人の攻撃に屈するわけにはいかなかった。
 舞台の中央で黒の攻勢を果敢に受け止めている京子と小夜子の背後には、美津子と美紀夫人が素っ裸のまま立ち縛りで並べられていた。京子がジョーに敗北すると美津子が、小夜子がブラウンに敗れたら美紀夫人が、それぞれ代わりに魁偉な黒人たちに立ち向かわなければならなかったのだ。
 そんな悲壮な二人の覚悟は迫力を生まないはずがなく、観客たちは固唾を呑んで二組の熱戦を見守っている。
 黒人二人と熱戦を演じる京子と小夜子の周りを、葉桜団の銀子と朱美がまるでプロレスのレフェリーのようにうろうろと歩き回っている。
「京子、大丈夫なの? だいぶ息が上がってきたみたいだけど」
 銀子がニヤニヤしながら京子に語りかける。
「そろそろ妹に代わってもらった方が良いんじゃない」
「い、嫌っ、是、絶対に嫌ですっ」
 銀子の問いかけに京子は必死で首を振る。
「小夜子の方はどうなの。これ以上続けると、身体が保たないわよ。お母様に助けてもらったら?」
 朱美もまた薄笑いを浮かべながら小夜子に問いかけるが、小夜子もまた激しく首を振り、
「だっ、駄目っ。お、お母様には手を出さないでっ」
 と拒絶する。
「姉さんっ、もうやめてっ。このまま続けると姉さんの心臓が止まってしまうわっ。わ、私に代わらせてっ」
 もはや限界に達している姉の姿を見かねて、美津子が悲鳴のような声を上げるが、京子はすかさず「駄目よっ」と叫ぶ。
「あっ、あなたを黒人のなぶり者になんか、絶対に、絶対にさせないわっ」
 京子はほざくように言うと、首をぐっと後ろに回し、ジョーの唇を求める。
「ジョーっ、え、遠慮はいらないわっ。もっと、もっと京子を愛してっ」
 そんな京子の血を吐くような声に、ジョーはニヤリと笑うと腰の律動を速める。
「ああっ、いいっ、いいわっ」
 京子はそう叫ぶと、自らの唇をジョーの分厚い唇に当てる。熱い接吻を交わしながら激しい交歓を続ける京子とジョーの姿に、観客たちは喝采の声を上げる。
 ブラウンもまたジョーと調子を合わせるように、小夜子を激しく犯し抜く。人間の動きとは思えないほどのブラウンの激しい腰の振りに、小夜子は「ヒイッ」と傷ついた獣のような叫び声を上げるのだ。
「さ、小夜子っ」
 娘の悲惨な姿に、美紀夫人は思わず声をかけるが、小夜子は「し、心配しないで、お母様っ、小夜子は、小夜子は平気よっ」と声を上げるのだ。
「お願いっ、ブラウンっ、小夜子をもっと愛してっ。小夜子を滅茶滅茶にしてっ」
 そんなことを口走りながら腰を振り立てる小夜子の姿は、とても深窓に生まれ育った令嬢とは思えない。それはもはや、黒い獣に立ち向かう一匹の白い牝獣に過ぎなかった。
「すごい迫力だわ。さすがは黒人ね。ものが違うわ」
 町子が感心したように、隣の岡田に語りかける。
「あの二人はこの世界でも有名な、絶倫のポルノスターだからな。奴らが出演したポルノフィルムはそれこそ何千本も、裏の世界で出回っているくらいだ」
 岡田はそう言うと、舞台の後方で映画用の照明や撮影機を操作している、数名のやくざの方を見る。
「森田組もたいしたもんだ。自前で撮影隊を持っているんだからな」
「この実演も映画に撮られているって訳ね」
「これだけじゃない。さっきのレズビアンショーも、山崎と久美子の兄妹のショーもみんな撮影されて、いずれ闇の市場で売られるはずだ」
「これだけいい素材がそろっているんだもの。飛ぶように売れるでしょうね」
 町子はうらやましそうに溜息をつく。
「ところであの黒人二人、月影荘に呼べないかしら。雪路や雅子と絡ませてみたいわ」
「しばらくの間はこの田代屋敷で何十本か映画を撮影する契約を結んだみたいだが、それが一段落したら打診してみよう」
「あの美人姉妹がついに黒人と絡むようになるかも知れないと想像すると、こっちまでわくわくしてくるわ」
 町子はさも楽しげに微笑する。
「ジョー、ブラウン、そろそろとどめを刺してあげてよ」
 銀子がジョーとブラウンに向かってそう言うと、二人の黒人は煙草のヤニで黄色くなった歯をむき出して「オーケー」と笑うと、京子と小夜子を責め立てるピッチを上げる。
「ああっ」
「あっ、あはっ」
 黒人二人の攻勢に、京子と小夜子は同時に悲鳴を上げる。
「どうなの、京子、まだギブアップはしないの」
 銀子が楽しげに問いかけるが、京子は「だ、誰がっ」と叫びながら首を振るのだ。
「小夜子ももう体力の限界でしょう。遠慮せずにお母様に代わってもらったらどうなの」
 小夜子はもはや口も聞けない最悪の状態になっているが、朱美の問いかけに必死で首を振るのだ。
 そんな京子と小夜子の様子を見ていたジョーとブラウンは互いに顔を見合わせ、ニヤリと笑い合うと、それぞれ京子と小夜子の腰をぐっと抱え込み、緊張を解くのだ。
「ああっ」
 ついに自らの体内で黒人に精を放たせたことを知覚した京子と小夜子は、「ああっ」と感極まったような叫び声を上げる。そしてすぐに
「きょ、京子、イクッ」
「さ、小夜子も、いきますっ」
 と、絶頂を極めたことをはっきりと告げ合い、がっくりと首を垂れるのだった。
「あらあら、二人とも失神しちゃったわ」
 銀子と朱美は、黒人二人に貫かれたまま、壊れた人形のように力なく床に倒れ伏している京子と小夜子の頬をピシャピシャ叩く。
「ジョーとブラウンは、二人の自己犠牲の精神に感服して、勝ちを譲ってくれたみたいね」
「まあ、それでも勝ちは勝ちだわ。京子、小夜子、良かったわね。今日のところは美津子と美紀夫人は黒人の餌食にならずにすんだみたいよ」
 銀子と朱美がそう言い合ったとき、迫力満点のショーに見入っていた観客たちから、ようやく拍手がわき起こるのだった。

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