317 母娘無惨(3)

「母と娘が同じ男の人に抱かれるなんて、そんな畜生みたいなこと……ああ、お、恐ろしい」
 絹代は絞り出すような声でそう言うと、たまりかねたように声を上げて泣き始める。
 時造は処置なしといった風に両手を広げ、後ろに下がる。代わって順子が絹代夫人に近づくと、「そんなこと気にすることはないわよ。母親と娘が同じ男に愛されるなんて、世の中じゃ珍しいことじゃないから」と平然とした口調で話しかける。
「現に、奥様と一緒にこの屋敷に入り込んだ村瀬宝石店の美紀夫人。彼女なんか娘の小夜子さんの処女を奪った津村さんに抱かれたのよ」
 順子のそんな言葉を聞いた絹代夫人は、あまりの恐ろしさにブルッと裸身を震わせる。
「津村さんったら、よほど村瀬宝石店に恨みを抱いていたのね。その二人を抱くだけじゃ飽きたらず、息子の文夫さんも抱いたっていうんだから、念が入っているじゃない」
「なんてこと……」
 想像を絶する背徳行為をこともなげに口にする順子に、絹代夫人は目眩がするような思いになっている。
「奥様、おとなしく言うことを聞いておいた方が身のためよ」
 順子は絹代の耳元に口を寄せ、囁きかける。
「こちらには千原流華道の会員名簿があるのよ。これを使って、時造さんにちょっと頼みごとをしたらどうなると思う?」
 夫人は新たな恐怖の予感に顔を強ばらせる。
「千原流華道の会員はいいところの奥様やお嬢様ぞろいだから、片端から誘拐したら良い稼ぎになると思わない。売り物になりそうなのはこの屋敷に連れ込んで、女奴隷として調教してもいいのよ」
「そ、そんなっ」
「そうして、以前のお弟子さんに囲まれたら奥様やお嬢様も寂しくないでしょう。ね、良い考えでしょう」
「だ、駄目っ。そんなこと、絶対に駄目ですっ」
「そうされたくなければ時造さんの妾になることを承諾するのよ」
「……分かりました」
 絹代はそう言うとがくりと首を垂れるのだった。
「それじゃ時造さんにこんな風に声をかけるのよ」
 順子は再び絹代の耳元に口を寄せ、何事か吹き込んでいく。絹代は感情を失った、人形のような表情で順子の言葉に頷いているのだった。
「さ、始めなさい」
「と、時造さん。こちらにいらして」
 絹代が唇を震わせると、時造は口元にニヤニヤ笑いを浮かべながら、夫人に近づく。
「わ、我が儘言ってごめんなさい。き、絹代は今夜、あなたのものになりますわ。そ、その誓いの印として、き、絹代のおま……」
 そこまで口にした絹代夫人は、その先が続けられず「ううっ」と嗚咽する。
「どうしたの、奥様。ちゃんと言えないとさっき言ったことを実行するわよ」
「ま、待って。待ってください」
 絹代は慌てて後を続ける。
「絹代の……おマンコの毛に……どうか、鋏を入れてください。お、お願いします」
 絹代夫人はそこまで言うと声を上げて泣き始めるのだ。
「感激の涙ってところかしら」
 順子は皮肉っぽい笑みを浮かべると「それじゃ、時造さんの二号になることを誓うのね、家元の奥様」と問いかける。
「ち、誓います」
 絹代の言葉を聞いた美沙江は思わず「お母様っ、駄目っ」と悲鳴のような声を上げる。
「お黙りっ」
 すかさず順子が美沙江の頬を平手打ちする。驚愕したような美沙江の顔。
「自分の男を撮られそうだからって、取り乱すんじゃないわよ。母親に時造さんを寝取られたくなかったら、しっかりと尽しなさいっ」
 順子はそう言うと絹代に向き直り、
「時造さんの二号になると言うことは、ご主人とはどうするのかしら」
「わ、別れます」
 夫人はそう言うと、振り絞るような声で「ああっ、あなた、ご、ごめんなさいっ」と詫びの言葉を吐くのだった。
「泣くのはおやめなさい、奥様。せっかくの美人が台無しよ」
 順子は急に猫なで声になると、ハンカチで絹代の涙を拭う。
「一日中お花ばっかり生けているような女々しい今のご主人よりも、ずっと素敵な男性がいるってことがすぐに奥様にも分かるわよ。さ、最後に時造さんにキッスをねだりなさい。それで誓いの儀式は終わりよ」
 絹代はコクリと頷くと、涙に濡れた瞳を時造に向ける。
「あ、あなた……絹代にせ、接吻してくださらない?」
 時造は満更でもなさそうにニヤリと笑う。岡田や関口が「よっ、時造さん、色男」と声をかける。
「美沙江のママさんの頼みじゃ断れねえな、へへ」
 時造はそう言うと、緊縛された絹代の裸身を強く抱きしめながら、そのような絹代の唇に自らの分厚い唇をぐっと押しつける。
(うう……)
 野卑なやくざものに衆人環視の前で接吻を強要されている屈辱、夫の元康に対する申し訳なさ、そして何より、これから娘である美沙江とともに、この野獣のような男の生贄に供されるという恐怖に、絹代の裸身はがたがたと震え出すのだった。
 長い接吻を終えた時造はようやく絹代を解放すると、その形の良い尻を軽く叩く。
「そんなに緊張するんじゃねえぜ、ママさんよ。接吻って言うのはもう少しリラックスしてやるもんだ」
 汚辱と羞恥に顔を赤らめる絹代夫人を順子が叱咤する。
「さ、次はどうするんだったっけ、奥様。グズグスしていると男入りの時間がなっくなっちゃうわよ」
 絹代夫人は今にもべそをかきそうな顔を時造に向けながら
「時造さま、す、素敵なキスをしていただき、ありがとうございました」
 と唇を震わせる。
「そ、それでは、絹代が時造さまのものになる印に、絹代の恥ずかしい毛に、は、鋏を入れてくださいませ」
 そう言ってガクリと頭を垂れさせた絹代夫人の足下に時造はしゃがみ込むと、黒々とした繊毛を摘み、鋏を入れる。
「あっ……」
 切り落とされた繊毛を、直江が懐紙で受け止める。
「お嬢さんから切り取ったものと合わせて、時造さんに今日のお土産として持って帰ってもらうことにするわ。いいでしょう、奥様」
 そんな揶揄の言葉を口にする順子に、絹代夫人はもはや反発する気力もなくなっているのだ。
「それじゃ直江、友子、仕上げをしてあげて」
 順子の命令に、二人の不良少女は「はい」と返事をし、それぞれシャボンを含ませた刷毛を手に取る。
 以前は千原家の女中として働いていた二人の少女が刷毛を使って、絹代夫人と美沙江の艶やかな繊毛に、泡立てたシャボンを塗りつけていく。直江と友子は微妙に刷毛を操作させながら、母と娘の秘められた菊花にまで這わせていくのだ。

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