(自分がそんなものになれるのだろうか)
そんな思いが浮かんだとき、美紀夫人は自分の身体が深い陥穽の中にずるりと落ち込んでいくような錯覚に陥った。
(あっ……)
身体を捩ってそこから抜け出そうとするが、うまく行かない。夫人は助けを求めようと、目の前に佇む文夫を見つめる。
「ふ、文夫さん……」
助けて、と言おうとした美紀夫人の口からついて出たのは、まったく違う言葉だった。
「……母さんのおマンコを見て」
見物の女たちからどっと哄笑がわき起こる。
(な、何を言っているの。違うでしょう)
美紀夫人はもどかしげに身体を捩らせるが、それは傍目にはことさらに息子を挑発しているとしか見えない。焦った美紀夫人は再び口を開く。
「文夫さん、母さんのおマンコを見て。奥の奥までよく見て欲しいの」
(違うわ。こんな、こんなこと言うはずじゃないのに)
美紀夫人は必死で自分の言葉と行動を否定しようとするが、焦れば焦るほど夫人はさらに深い陥穽へと落ち込んでいくのだ。
「あ、あまり使っていないから綺麗でしょう。まだまだ若い娘には負けていないと思うんだけど、ど、どうかしら。美津子さんや小夜子のものと比べて、か、感想を聞かせて欲しいわ」
(ああ……もう駄目)
美紀夫人は自分の身体と言葉が、意思ではどうにも制御できなくなっているのを感じる。
それは春太郎から飲まされた怪しげな薬のせいだったのだが、夫人はもはやそんなことにも気が及ばないほどの悩乱の極に陥っている。
静子夫人の変貌ぶりを思い出して動揺した美紀夫人は、自分の中に巣食っていた淫らな獣が姿を現したのだと感じていたのだ。
「ね、ねえ……文夫さん、母さんのく、クリトリスが分かる? 小夜子のものより大きい、小さい? ねえ、お、教えて」
美紀夫人は何かに取り付かれたかのように豊満な裸身をくねらせ、文夫に対して媚態を示し続ける。
(お母様……)
津村に肩を抱かれるようにしながら、そんな母親の狂態を見せつけられている小夜子は、あまりの恐ろしさにその優美な裸身をガタガタと震わせている。
「津村さん、お願い。こ、こんなこと、神様がお許しにならないわ。これだけはやめさせて」
「おやおや、小夜子。君はまだ神様なんてものを信じているのかい」
津村はさも楽しげに笑う。
「それよりご覧よ。文夫君の持ち物を。見事なまでに反り返っているじゃないか」
津村に指摘された小夜子は思わず文夫の下半身に目をやる。津村の言うとおり、文夫のその部分が高々と屹立しているのを見た小夜子は、愕然とした表情になり、思わず顔を伏せる。
「ねえ、見て……文夫さん……母さんの奥の奥まで見て……お願い」
美紀夫人が口元に微妙な笑みまで浮かべながら媚態を示すのに煽られた文夫の視線は、夫人のその部分にしっかりと釘付けになり、その息はハア、ハアと荒い音を立て始めているのだ。
「見たかい、小夜子。文夫君は母親に対してしっかり欲情しているじゃないか。男なんて見境のないものだよ。自分の姉だろうが、母親だろうが、それが魅力的な女なら自然と身体は反応するものさ」
小夜子は真っ赤に頬を染めて、肩を震わせる。
「どうした、小夜子。そんなに顔を真っ赤にして」
津村は面白そうに小夜子の顔をのぞき込む。
「ひょっとして、お母さんに文夫君を先に食べられそうなので、機嫌が悪いのかい」
「な、なんてことを言うのっ。ち、違います」
小夜子が憤然と反発する。
「隠さなくて良いよ。僕と小夜子は夫婦じゃないか」
津村はニヤニヤ笑いながら小夜子を抱き寄せる。
「そう言えばいつだっけ、小夜子もあんな風に文夫君を誘惑したことがあったね。あのときは肉の関係を持つまでには至らなかったが、ひょっとして小夜子はあのまま文夫君に抱かれたかったんじゃないのかい」
「ば、馬鹿なことは言わないで。あのときはあなたが無理矢理」
「僕にはそんな風には見えなかったがね。まあいいさ。そんなに文夫君としたいのなら僕がかなえて上げようじゃないか。姉と弟が仲良くなるのは大賛成だよ。浮気なんて思わないよ」
「やめて……嫌です……そんなこと」
小夜子は力なく首を振る。
「ただ、二人とも文夫君と関係を持ったら、お互いに嫉妬が生まれるかも知れないな。君とお母さんがそんなことで仲違いするのは僕の本意じゃない。そうならないように、君とお母さんも関係を持ってもらおう」
小夜子は一瞬、津村が何を言っているのか理解できず目を見開くが、やがてあまりの恐怖にガタガタと身体を震わせる。
「まあ、それはおいおい考えるとして、今はお母さんと文夫君が結ばれるのを、二人で祝福しようじゃないか」
津村はそう言うと、美紀夫人と文夫に目を向ける。
美紀夫人は文夫の前にひざまずき、硬化した文夫の肉棒に口唇での奉仕を施している。最初はためらいがちにおずおずと口を開き、ほんの少し突き出した舌で文夫の筒先をチロチロと舐めていた美紀夫人だったが、やがて実の息子の発する男の匂いに煽られたかのように大きく口を開いて文夫の雁首を飲み込んだり、犬のように舌を伸ばして肉柱全体を舐め上げるのだった。
(ああ……可愛い)
妖しい媚薬によってすっかり痺れきった美紀夫人の頭からは、今自分が淫らな奉仕を捧げている相手が、自分の息子だという意識はすっかり薄れてきている。いや、むしろ相手が息子だからこそ、もはや若いとは言えない自分の身体に欲情し、稚拙な愛撫に反応してくれるのを、愛しいとも嬉しいとも思い始めているのだ。
「ああ……だ、駄目だよ。か、母さん」
文夫は喘ぎながら腰部をくねらせるが、それはまるで母親の愛撫を消極的に受容しようとしているかに見え、取り囲んでいる女たちは楽しげに笑い合っているのだ。
「文夫さん……もっと大きくして……母さんだからって遠慮しなくても良いのよ。美津子さんの時はこんなものじゃないのでしょう」
美紀夫人がそんな台詞まで口にしたので、和枝と葉子は声を上げて笑う。
「この女、息子の恋人に焼き餅を妬いているわ」
和枝はそう言うと春太郎に向かって「こんな台詞まで教え込んだの? まったく、芸が細かいわね」と笑う。
「まさか、これはこの奥様のアドリブですよ」
春太郎の答えに女たちは「へえ、そうなの」と目を丸くする。
「女の本性が出たってわけね」
「薬の……いや、お酒のせいでもあるんですけどね」
春太郎はそう言って笑うと腰を落とし、美紀夫人の耳元に何事か囁きかける。
「分かりました」
美紀夫人は頷くと、膝立ちのまま文夫の後背に回る。春太郎と夏次郎は目配せしあうと、文夫の双臀の肉に左右から手をかけ、ぐっと割り開く。
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