329 奈落の兄妹(1)

「ふうん、これは本物ね」
 葉子はそう言うとニヤリと笑う。
「本物って、何が?」
「和枝さんの文夫に対する気持ちよ。まるで恋する少女って所ね」
「からかわないでよ」
 和枝は頬を染める。
「それに今夜じゃなくても、まだ機会はあるし」
「それはそうね。それじゃ今夜は休みましょうか」
 葉子がそう言ったとき、義子が水差しを手に抱え、こちらに向かって歩いてくる。
「あ、お三人おそろいで、どちらに」
「どちらって、もう寝るのよ。夜も遅いし」
「そうでっか。今、久美子と山崎の調教がいい感じなんですけど。それならまた今度の機会にしはりまっか」
「山崎さんですって」
 葉子の目がキラリと光る。
「そうと聞いちゃ見逃すわけにはいかないわ」
 葉子はそう言うと和枝と町子の方をみる。
「分かったわ、つき合うわ」
「私も良いわよ」
 和枝と町子が頷くと、葉子は「そうこなくっちゃ」と笑うのだった。

「ここですよ」
 町子たち三人が義子に案内されたのは、ズベ公たちが共同で使っている和室だった。その真ん中に赤い布団が敷かれ、素っ裸の久美子と山崎が大の字の姿で両手両足を青竹に縛り付けられている。
 久美子と山崎の口には豆絞りの手拭いで猿ぐつわが噛まされており、足を固定した青竹は、鴨居から垂らされた縄につながれて高々と掲げられている。そして、あからさまにされた二人の股間に向かって、銀子と朱美がなにやら作業を施しているのだ。
「いったい何をしているのよ」
 銀子と朱美の手元を覗き込んだ葉子が「まあ」と素っ頓狂な声を上げる。山崎の陰茎と久美子の陰核の根元は、天井に取り付けられた滑車から垂らされた凧糸によって堅く縛り上げられ、限界までつり上げられている。銀子と朱美は油に浸した筆で二人のその部分を撫で上げたり、竹串の先端でつついたりしているのだ。
「まあ、すごい」
 葉子が思わずため息のような声を上げる。二人への責めに夢中になっていた銀子と朱美は、そこで初めて葉子たちに気づき「あ、こりゃどうも、失礼しました」と言ってぺこりと頭を下げる。
「なかなかきついお仕置きね」
 葉子は久美子と山崎の赤紫色に充血したその部分を覗き込む。
「こんなのはまだまだ序の口ですよ。この二人には葉桜団に逆らった罪を心の底から反省してもらわなくちゃなりませんからね」
 銀子はそう言ってニヤリと笑うと、朱美に向かって目配せする。朱美は頷いて山崎の猿ぐつわを外す。
「さ、探偵さん。そろそろあたしたちの言うことを聞く気になったかい」
 銀子に問いかけられた山崎は、苦しげな表情で顔を逸らす。銀子が再び朱美に目配せすると、朱美は床に置かれた木箱の中から銀色の細い針を取り出し、いきなり久美子の花芯に突き立てる。
「うーっ!」
 細い針で花蕾を串刺しにされる──神経の集中したその部分に針を刺される激痛と恐怖に、久美子は猿轡の下で声にならない悲鳴を上げる。
「や、やめろっ」
「やめろ? 誰に向かって言っているんだい。口のきき方に気をつけな」
 朱美は冷たい声でそう言い放つと、もう一本の針を山崎の陰茎の亀頭のあたりに突き立てる。
「ううっ!」
 山崎もまた急所に針を突き刺される痛みに、傷ついた獣のような呻き声を上げる。
「これはまた、凄い責めね」
 葉子と和枝は、山崎兄妹に対する凄惨な拷問に目を丸くしている。
「意地を張っていると探偵さんと、可愛い妹の大事なものが針山になっちまうよ。さ、どうするんだい」
 銀子が山崎に迫るが、山崎は苦しげな表情で顔を逸らしている。
「朱美、かまわないから久美子のおさねを針山にしちまいな」
「了解」
 朱美がニヤリと笑ってさらに一本の針を取り上げる。それを見た山崎は「や、やめてくれっ」と悲鳴のような声を上げる。
「なんだって、もう一度言ってみな」
 銀子が指先で山崎の肉棒を弾く。
「やめて……やめてください」
 山崎のそんな言葉を聞いた銀子と朱美は顔を見合わせて笑い合う。
「葉桜団にたてついたことを反省しているかい」
「……反省しています」
 山崎がさも悔しげにそう呟くと、朱美は口元に冷酷な笑みを浮かべて、さらに一本の鍼を山崎の亀頭に突き立てる。
「あうっ!」
 山崎のつんざくような悲鳴が地下室に響く。
「あたしたちを馬鹿にしているのかい、探偵さんよ」
「ば、馬鹿になんかしていません」
「それじゃなんだい、今のふてくされたような詫びの入れ方は」
 朱美が山崎の亀頭に突き立てれた二本の鍼をねじるようにすると、山崎のその部分からはたらたらと赤い血が流れ始める。
「妹の泣き声を聞かせてやんなよ、朱美。そうすりゃ探偵さんも少しは素直になるかも知れないよ」
「そうだね」
 朱美は久美子の猿轡を外すと、新たな鍼を久美子の肉芯に突き立てる。
「あーっ、やめてっ、やめてくださいっ」
 久美子は泣きじゃくりながら悲鳴を上げる。そんな久美子の急所にまるで十字架のように突き立てられた鍼を、朱美はねじり上げる。
「ああっ、そ、そんなっ、酷すぎるわっ」
 久美子がヒイヒイ泣き声を上げるのを、銀子と朱美はさも楽しげに聞いている。
「や、やめて、やめてくださいっ。葉桜団の皆様に盾突いたこと、ほ、本当に反省しています。申し訳ありませんでしたっ」
 山崎が叫ぶように詫びの言葉を入れると、銀子と朱美は顔を見合わせて笑いこけるのだ。
「それじゃ針責めは勘弁してやるよ」
 朱美はそう言うと久美子と山崎の針を抜く。久美子の充血したその部分から赤い血が一しずく流れるのを、朱美がアルコールを浸した脱脂綿で拭う。
「そんなところに針を刺して、大丈夫なの」
 町子が尋ねると銀子は「これは鍼灸師が使っている治療用の細い針ですから、まず心配はありませんよ。朱美は一時、鍼を習っていましたからね」

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