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8.予兆(4)

「え、なんやて。そんな小さな声では聞こえんがな」
沢木は黒田の様子をニヤニヤ笑いながら黙って見つめている。
「――うん、よく聞いていてくださいね」
しのぶは黒目がちの瞳を潤ませながらこころもち声を大きくして繰り返す。
「……バスト86、ウェスト62、ヒップ91ですわ」
「おお」
黒田は感極まったような声を出す。
「バスト86か――しかし、このオッパイはもっとあるような気がするで。90以上はあるんと違うか、え、沢木はん、あんたどう思う」
「知りませんよ、そんなの」
沢木は苦笑しながら答える。
「それよりも、ヒップ91というのに魅かれるな。僕は実は女性の大きなお尻が大好きなんですよ」
「まあ、大きなお尻なんて、ひどいわ」
しのぶは沢木をにらむが、知らず知らずその目付きはある種の媚びを含んだものになっている。
「いやいや、大きなお尻という表現は僕にとっては最高の賛辞ですよ。しのぶさんのお尻は形といい大きさといい素晴らしい。あとは触り心地だが……」
沢木はいきなりしのぶのヒップに手を伸ばし、そろりと撫で上げる。さすがにしのぶは驚いて「きゃっ」と悲鳴を上げる。
「何をするの、沢木さん」
眼を丸くして抗議するしのぶを沢木はなだめるように手を上げて「ごめん、ごめん」という。
「沢木はん、あんた、人にセクハラなんていうといて、自分はちゃっかり手を出すとは、あきれたもんやなあ」
黒田もギョロ目を一段と大きくして沢木をにらむ。
「悪い悪い、無意識のうちに手が出ちゃってね」
「駄目よ、沢木さん、彩香ちゃんをいじめちゃあ」
カウンターの中から香織が沢木をたしなめる。
「いやあ、失礼、ママ。しのぶちゃんのお尻があんまり魅力的だったものだから、つい、ね」
「まあ、随分ね。私のお尻は一度も触ったことがないくせに」
「ママのお尻は小さすぎるよ。僕の好みじゃあないね」
沢木はそう言うとしのぶの方を振り返り、笑いかける。その場の雰囲気にしのぶは思わずしょうがないわねといった風に苦笑する。
「じゃあ、約束だからボトルを入れるよ、ママ、同じのを入れてくれる?」
「あら、どうもありがとう。彩香ちゃんのお尻が売上に結び付いたっていうことね」
香織が笑いながら新しいボトルの用意をする。
「よし、今度はわいの番や。ふっくらしたおっぱいを揉ませてもらうで」
「……えっ、えっ?」
黒田が腕まくりせんばかりの勢いでそういうのを聞いたしのぶは一瞬混乱する。
(あれ?)
私、ニューボトルを入れてもらえばお尻やおっぱいを触らせてあげる約束なんてしたかしら?
しのぶが酔いの回った頭をめぐらせている間に、黒田は早くもしのぶの肩を抱くようにして襟元から手を入れようとする。
「ちょ、ちょっと――黒田さん」
「おお」
しのぶは身を捩じらせて抵抗しようとするが、黒田は意外に強い力でしのぶを抱くと、ふっくらした乳房の麓あたりをつかむ。
「こりゃあ、ええおっぱいや」
「だ、駄目よ。そんな、黒田さんったら」
「溶けるような感触や……素晴らしい触り心地やで」
黒田はしのぶのドレスに突っ込んだてのひらを淫靡に動かし、片方の乳房を揉みしだくのだ。
「どれどれ、乳首はどんな感じかな」
「だ、駄目っ、そんなことっ……もうっ」
しのぶが大きな悲鳴を上げかけた時、黒田はさっと手を引いた。
「悪い、悪い……ちょっと悪乗りしてしもうた」
「まったく、なんて事をするんですか、黒田さん。今のはセクハラどころじゃなくて立派な痴漢行為ですよ」
カラカラと高笑いする黒田を沢木は真剣な目付きでたしなめる。
「しのぶちゃんはすっかり怖がっているじゃないですか。可哀想に、涙まで溜めていますよ」
「おお……」
黒田はおおげさに驚いた表情を見せる。
「こりゃあすまんことをした。そんなつもりはなかったんや。これ、この通り。堪忍してくれるか」
黒田はしのぶの方を両手を合わせて拝みながらペコペコと頭を下げる。
「もう……」
しのぶは黒田の滑稽なまでの恐縮振りを見て、思わず微苦笑する。
「どうしたの、彩香ちゃん」
さすがに様子がおかしいと感じたのか、香織がカウンターから出てくる。
「な、なんでもありませんわ。ママ」
しのぶはあわてて取り繕う。得意客である黒田にこれ以上居心地の悪い思いをさせたくなかったせいもあるが、乳房を揉まれて小娘のように悲鳴を上げたことを香織に知られるのが恥ずかしくもあったのだ。
「そう……」
香織がうなずいてカウンターへ戻るのを見送ったしのぶは、黒田に向き直る。
「これからは、こんなことをしちゃあ駄目ですよ、黒田さん」
「そうですよ。生は駄目です、生は。僕だって服の上からしか触っていないんですから」
「もう、沢木さんったら、そんなことじゃあないでしょ」
しのぶは思わず吹き出し、いつの間にか2人の男と共に楽しげに笑い合うのだった。

「あ……沢木さん……」
うつ伏せになったしのぶの背中から尻にかけてのなだらかな曲線を、沢木は羽毛でなでるような繊細な手つきで愛撫していた。
「……しのぶちゃんのお尻は最高だよ」
しのぶの背筋にピリピリと電流が流れるような感覚が走る。呼吸が次第に荒くなり、両肢は何かを訴えるようになよなよと海草のように動き始める。
「あ……そんな」
沢木は指先に代えて、舌をしのぶの双臀の溝に這わせ始める。
「駄目よ……汚いわ」
「しのぶちゃんの身体に汚いところなんてあるものか」
沢木は両手で桃を断ち割るようにしのぶの双臀をぐいと断ち割ると、その奥深くに秘められたアヌスに舌を這わせる。かつて経験したことのない妖しい感覚がしのぶの全身を支配し始めた。
「あ、ああ……」
幼児がすすり泣くような声を上げ出したしのぶの豊満な胸を、いつの間にか別の両手がゆったりと揉みほぐし始めている。
「……しのぶちゃんのオッパイは最高や」

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