第21話 屈服(2)

「な、何ですって」
しのぶはさすがに目を吊り上げて抗議の声を上げるが、香織はかまわず続ける。
「ひとつ、加藤しのぶの奴隷としての奉仕期間は本日より起算して2カ月とすること」
「ひとつ、加藤しのぶが奴隷として忠実に奉仕を行う限りは、世良香織は加藤しのぶの家族には一切手を出さないことを約す」
何かを読み上げるようにすらすらと言い渡す香織を、しのぶは呆気に取られたような顔付きで眺める。
「後できちんと文書にして、署名捺印してもらうけど、とりあえずは口頭での了解でいいわ」
「こ、断ったらどうなるの……」
無駄とは知りつつ、しのぶは聞かざるを得ない。
「この楽しいビデオや写真があなたのご家族に届くだけよ。あ、そうそう、ひとつ忘れていたわ」
香織が黒田と沢木にちらと笑みを送りながら、付け加える。
「ひとつ、加藤しのぶは、世良香織の奴隷として尽くす期間は、夫とのセックスは許さず」
そういうと香織はプッと噴き出し、2人の男たちも釣られたように笑い出す。しのぶ一人が唖然とした表情で3人を見回している。
「ど、どうして……そんなこと……」
「あら、嫌だというの」
「だ、だって、そんなことがどんな意味があるっていうのですか」
「別に意味なんかないわよ」
香織は吐き捨てるように言う。
「奴隷はご主人様の目が届かないところでも奴隷なのよ。日常生活に必要なことならともかく、利己的な快楽のためのセックスに耽るなんて許されないわ」
しのぶの目がますます大きく見開かれる。
「で、ですけど夫が求めて来たら……」
「拒みなさい」
香織がぴしゃりと決めつけるように言う。2人のやり取り、いや、しのぶがおろおろとうろたえるのが滑稽なのか、黒田と沢木は込み上げる笑いをこらえ切れない。
「そんな……無理ですわ」
しのぶはべそをかきそうな表情になる。
「心配しなくても、無理じゃないようにしてあげるわよ」
「貞操帯でもはかせるんかいな、ママ」
「なんですか? 貞操帯って」
沢木がいぶかしげに尋ねる。
「なんや、沢木はん。SMマニアのくせに貞操帯も知らんのかいな。貞操帯いうんはな……」
「黒田さん、貞操帯の講義は後でゆっくりお願い」
黒田の饒舌を香織がたしなめる。
「私の奴隷になった証しにあなたのそこの毛をツルツルに剃ってあげるわ。そうしたらご主人とベッドインしようなんて気は絶対に起こらないわよ」
「ええっ」
しのぶは悲鳴に似た声をあげる。
「そ、そんなことをされたら、どう、どうやって主人に説明すればいいの」
「何を支離滅裂なことを言ってるのよ」
香織はしのぶが混乱しているのを見てさも楽しそうに笑う。
「ご主人の前で裸にならなければすむ話でしょ。セックスしなければ何の問題もないじゃない」
「でも、でも……そんな……」
「いつまでも愚図愚図いってるんじゃないわよ」
香織は鋭い声でしのぶを怒鳴りつける。しのぶはびくっと身体を震わせて、肩をすぼめる。
「奴隷になることを誓うの、誓わないの、はっきりいいなさい」
「ああ……」
しのぶは切羽詰まったように両手で顔を覆ってシクシクと泣き出す。
「泣いて逃げたって駄目よ。誓うの、誓わないの、どうなのよ」
香織はしのぶの肩をつかみ、揺さぶる。しのぶは万事休したように口を開き、小声で「ち、誓いますわ……」と答える。
黒田と沢木はどっと笑い合い、パチパチと拍手する。
「これで一件落着や、いや、よかった、よかった」
「それならきちんと立って、改めて誓うのよ」
香織はシクシクすすり泣くしのぶを無理やり立たせて、さっとバスタオルを剥ぎ取る。
「あっ」
素っ裸を晒されたしのぶは思わず乳房と陰部を手で覆う。
「隠しちゃ駄目よ。両手は頭の後ろに回して、両肢を肢を広げて背筋をきちんと伸ばして立つのよ」
しのぶは一瞬つらそうに顔をしかめるが、やがて香織に言われたようなポーズをとる。
「そうそう、良くできたわ。これが奴隷の第1のポーズよ、ちゃんと覚えておくのよ」
しのぶは自分の意志を失ったようにこっくりと頷く。黒田と沢木はいつの間にかそれぞれデジタルビデオとカメラをかまえ、しのぶの裸身にレンズを向けている。
「さあ、私の言うとおりに繰り返すのよ。私、加藤しのぶは世良香織様の忠実な奴隷として、ご主人様の命令にはどんなことでも悦んで従うことを誓います……さ、言うのよ」
「わ、私、加藤しのぶは……」
しのぶは口ごもりながらも香織に言われたままを繰り返す。
「……世良香織様のちゅ、忠実な奴隷として、ご主人様の命令には……」
しのぶはそこまでいうとぐっと詰まり、救いを求めるように香織の方を見る。
「どんなことでも悦んで従うことを誓います、でしょ。意外と頭が悪いのね。一度できちんと覚えなさい」
香織はそう言うと肉付きの良いしのぶのヒップをパシンと平手打ちする。
「は、はい……」
もはや香織の侮辱に対して反発する意志もなくなったしのぶは「どんなことでも、悦んで従うことを誓います」とはっきりと口にする。
「もう一度、今度はもっと大きな声でいうのよ」
「は、はいっ」
しのぶは素直に答えると再びその屈辱的な誓いの言葉を口に出す。よどみなく言い終えた途端、しのぶの身体にかつて経験したことがないような妖しい旋律が走る。ブルブルと小刻みに裸身を震わせるしのぶを興味深げに眺めていた香織は、しのぶの背後から股間に手を回す。
「あっ」
いきなり羞恥の部分をまさぐられ、驚きの声をあげるしのぶ。
「あらあら、すっかり濡らしているじゃない……」
香織は口元を歪めて勝ち誇ったように言う。
「男たちの前で大股開きで素っ裸を晒して、奴隷の誓いをたてながらここをこんなに濡らすなんて、いったいどういうつもりなの?」
「や、やめて……」
しのぶは力なくあらがうが、香織に指摘された通りしのぶの蜜壷はすっかり潤んでおり、粘り気のある愛液が溢れんばかりになっているのだ。

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