第29話 深夜の秘密ショー(3)

香織に長時間にわたって特訓を受け、ようやく身につけたしのぶのストリップダンスだった。ストリップはもちろん踊りも全く素人だったしのぶは、決して勘がよい方でなく、またたまらない羞恥からしばしば抵抗を見せて香織をてこずらせたが、前日にほぼ丸1日にわたる苛酷なレッスンを施され、なんとか人前に出せるレベルに達したのだ。
色っぽさと滑稽さが入り混じった、なんとも言えぬその淫靡な光景に十分アルコールが回った「かおり」の客は早くも興奮し、口笛を吹いたり、喚声をあげたりする。しのぶの身のこなしのもじもじとした素人っぽいぎこちなさがかえって観客の欲情の火に油を注ぐのだった。
女性ブルース歌手のボーカルが始まり、しのぶはそれに合わせてドレスの裾を捲り上げたり、肩先をゆっくりずらしたりしながら踊りつづける。インパクトのある曲調と清楚さを感じさせる人妻らしい美貌のアンバランスさがかえって観客の劣情をそそるのだ。
異様な成り行きにとまどいの表情を隠せなかった小川も、しのぶのぎこちない中にも甘美なまでにエロチックな踊りにすっかり心を奪われたという風で、しきりにグラスのビールを煽りながらしのぶに視線を注いでいる。
(ああ……恥ずかしい)
ドレスをぎこちなく脱ぎ捨て、下に何も身に着けていないしのぶの素っ裸の後ろ姿が一瞬観客の目を射るが、そのときすべての照明が落ち、店内は真っ暗になる。音楽が止まり観客が息を呑んで待つ中、しばらくして再びライトが灯ると、そこには清楚な純白の下着を身に付けたしのぶが、羞恥の炎に身体全体が焼かれるような思いに、全身を薄いピンクに染めながら立ち尽くしていた。
これまでの淫らさを感じさせるドレスから、一転して人妻らしい清楚な下着姿に変化したしのぶの姿にかえって観客は情欲をそそられるのか、熱気で店内の室温が2、3度上がったような錯覚さえ感じる。
「何してるの、身体が動いていないわよ」
身体の動きを止めたしのぶに苛立った香織が叱咤の声を上げると、美貌の人妻の下着姿にゴクリと喉を鳴らしながら見入っていた店内の男たちもそれに煽られたように「ぐずぐずするな」「早く脱げっ」と盛んに野次を飛ばす。
しのぶは泣きそうな表情で諦めたようにうつむくと、背中に手を回しブラのホックを外す。その間も香織に教え込まれたように豊かな乳房を時折りブルン、ブルンと震わせることは忘れない。
(ああ……嫌…)
卑猥な踊りを強制されるしのぶは頭の中にぼうっと霞がかかったような感覚に襲われる。また、観客の視線が集中している両乳房の先端がつんと尖り、さらにじわっと熱をもってくるような気がするのだ。
(……ああ、私、なんだか、なんだか変だわ)
女性歌手のシュドゥビドゥビドゥビドゥビドゥバという有名なスキャットに合わせ、しのぶは奇麗にセットされた髪まで乱れるほど激しく乳房を振りながらついにブラジャーを外す。白い巨大な乳房がブルンと飛び出し、観客はしのぶの熱演にわっと喝采するのだった。
ワンコーラスが終了し、上半身裸になった美しい人妻は間奏にのってあやしく踊りだす。ふたたび女性歌手のア、アンという声に合わせて切なげにため息をつくしのぶ。その様子が先程とは格段に大胆さと艶っぽさを増していることに観客は気づき、盛んな拍手と口笛が巻き起こる。
「いいぞ」
「彩香ちゃん、色っぽい!」
(ああ……私、どうしたのかしら……)
身体の内側が熱く火照りだす。しのぶは快感に似たその不思議な感覚に軽い身悶えまでしながら妖艶に腰を揺らす。男たちの目はしのぶに対する賛美の色を湛え、文字どおり釘付けになったように、しのぶの動きに合わせて左右に揺れる。
(ああ、みんな……そんなに私の裸が見たいの?)
しのぶは多数の男たちの視線を浴びていることに不思議な爽快感を覚える。身体が不思議なまでに熱くなり、37歳という年齢にもかかわらず美しい桜色をした乳首が硬くしこってくるのがはっきりと感じられる。
(それなら好きなだけ、見るがいいわ)
しのぶはくるりと観客に背を向けると、純白のレースのパンティに包まれた尻を突き出すようにしながら踊る。ぴっちり張り切ったパンティの布地越しに、隠微な双臀の溝がくっきりと浮き出し、観客の男たちは高まる期待感に再び喉を鳴らす。
若い娘では決して見ることの出来ない人妻らしいむっちりとしたその肉感。男たちの熱い視線が、薄い布地を通して肌に伝わってくるような思いに、しのぶは無意識に熱い吐息をつく。
開き直ったような気持ちになったしのぶは観客をたっぷり焦らしたあげく、再びスキャットに合わせて巧みにクライマックスを演出する。豊満な尻を激しく振りながらパンティを一気に引き下ろすしのぶ。
「いいぞっ」
「彩香ちゃん、最高っ」
圧倒的といって良い迫力を持った染みひとつない真っ白な双臀が現れ、男たちの中から悲鳴に似た歓声が沸き上がった。

ストリップショーで衆人環視の前でついに全裸になったしのぶはいったん楽屋代わりの休憩室に引っ込む。ハアハアと荒い息を吐いているしのぶの肩に、続いて入ってきた香織が手を回す。
「興奮したんでしょう」
「嫌……」
香織はしのぶの裸身を抱きながら耳元に熱い息を吹きかけるようにすると、しのぶは嫌々をするように首を振る。
「男たちに素っ裸を見せて興奮したのよね、そうでしょう」
「そんな……違いますわ」
「なら、これはどういうわけかしら」
香織はいきなりしのぶの股間に指を這わせ、汗でじっとり濡れた陰裂を撫で上げる。
「あっ」
たっぷり満ちていた果汁が堰を切ったようにどっとあふれ出し、しのぶの内腿を濡らしていく。
「ほら、すっかり濡らしているじゃない」
「ああ……」
香織は片手でしのぶの花襞を淫靡に愛撫しながら、余った手をしのぶの首に回して接吻する。
「うっ」
しのぶは一瞬抵抗を見せるように口を閉ざすが、香織の指先が巧みにしのぶの蜜をすくい上げ、上部の花芯までいたぶるように動き出すと、諦めたように力を抜き、侵入してきた香織の舌に自らの舌を預けていく。
しばらくの間熱い接吻をしのぶに施した香織は、ようやく美しい人妻を解放すると、低い声で命令する。
「もう一度舞台に上がって、お客様に特出しショーをお見せするのよ」
「えっ」
しのぶはあまりに唐突な香識の言葉に驚き、眼を大きく見開く。
「聞こえなかったの? お客様にあそこの奥まで見てもらうのよ」
「そ、そんな……」
「あら、嫌だというの?」
「今日は……子供が通っている中学の父兄がいらっしゃっているんです」
しのぶは蚊が泣くような声で香織に哀願する。

Follow me!

コメント

PAGE TOP
タイトルとURLをコピーしました