第35話 新たなる生贄(4)

「あらあら、奥様って割りと毛深いのねえ。あまりお手入れをなさらないのかしら」
「ううっ」
香織は道夫をいたぶりながら、M字開脚のポーズをとらされた裕子にもそんな残酷なからかいを言葉をかける。
確かに裕子はそういった目に見えない部分の身だしなみには無頓着である。というよりもむしろその部分は自然なままであるべきだと考え、アンダーヘアの手入れなどは滅多に行ったことがない。ジョギングでノースリーブのトレーニングウェアを着ることもあるからさすがに脇毛の処理はしているが、その他の体毛はそのままである。
「お尻の穴の回りまで毛を生やしているなんて、レディのみだしなみとしてはどうかと思うわ」
香織の言葉に脇坂他の男たちはどっと笑い声を上げる。そんな箇所を笑い者にされる屈辱に、裕子の目から一筋、涙がこぼれ落ちるのだ。
香織にいたぶられている道夫は血走った目を妻のその部分に向けている。清楚で知的な妻の秘められた動物的な箇所が、香織たちによって暴き立てられたような、どこか甘美な敗北感が道夫の胸の中にこみあげてくるのだ。
「あら、奥様、悔し泣きなさっているの。ごめんなさいね、ちょっとからかいが過ぎたかしら」
香織はさも楽しそうに裕子の泣き顔を眺めていたが、やがて道夫への愛撫を中断して立ち上がり、店の奥からプラスチック製のカゴを持ってくる。
カゴのなかには色とりどりのローターやバイブレータといった、いわゆる大人の玩具が入っている。
「女のお道具は見かけよりも中身が大切だわ。これで奥様の感受性をテストして上げてよ、脇坂さん」
「ひいっ」
おぞましい器具を目にした裕子は狂ったように身悶えする。
「こらこら、そんなに興奮するんじゃない」
抵抗する裕子を持て余した脇坂は、豊満な双臀をぴしゃりと叩くと、道夫としのぶを縛り上げるのに使って余った麻縄で裕子を後ろ手に縛り上げて行く。
がっちりと両手首を縛り終えると脇坂の仲間の2人の男は裕子の両肢をしっかりと持ち、ぐいと力をいれて裕子を改めて大股開きにする。
「まあ、小椋裕子夫人のご開帳だわ」
「ああっ、ひどいっ」
ワイン色の女の源泉の奥底まで露わにされた裕子は、羞恥と屈辱に身も世もあらぬと言ったふうに泣きわめく。いつもは自立した女としての矜持を決して崩さない妻の、そんなすっかり取り乱した様子に、道夫は弄虐者に対する怒りとともになぜか新鮮な驚きを感じるのだった。

「どうや、しのぶ。お仲間が増えてうれしいやろう」
「2人とも大きくて魅力的なお尻をしているから、並べてたっぷりいじめてあげるのが楽しみですよ」
麻縄で緊縛されて猿轡をかけられ身動き一つ出来ないしのぶは、道夫と裕子が夫婦そろって凌辱の嵐に翻弄されるのを見せつけられながら、黒田と沢木に抱き抱えられてこってりと責め上げられていた。
すっかり調教に馴らされたしのぶは黒田が手にしたグロテスクなバイブレータで前門を、アヌス用の細い責め具で後門を嬲られながら、猿轡の下で早くもヒイヒイと喜悦の声を上げ始めている。
(ああ……小椋さん……ごめんなさい)
しのぶは裕子と道夫が自分の道連れになって地獄に落ちようとしているのを見ながらどうすることも出来ない。以前、香織に強制されて自宅から「かおり」までノーパンにミニスカートという恥ずかしい姿で走らされている時に、ジョギング中の裕子と出くわしたことが、小椋家にとんでもない不幸を招き寄せることとなったのか。
不審に思った裕子が色々な手を使って、しのぶが「かおり」で働いていることを突き止め、様子を探るために夫の道夫を来店させたのは想像に難くない。そこで香織の悪魔のような狡智に夫婦もろともに搦め捕られてしまったのだ。
裕子の正義感をもってすればこんな事態になることは予想出来たではないか。どうしてミイラ取りがミイラになる前に手を打てなかったのか。
しかしそんなしのぶの悔恨も、黒田と沢木の巧みないたぶりの中にたちまちあやふやなものになっていく。すっかり熟した肉体は被虐の炎に焼かれ、どろどろになって官能の海の中に溶け出していくのだ。
「アヌスもだいぶ感じるようになったね、しのぶ夫人」
「うう……」
しのぶは頬を赤く染め、背後から抱えるようにしながら裏門を責め立てている沢木に甘えかかるように身体を預ける。ここ数日、尻フェチの沢木によって徹底した調教をその部分に施されたしのぶは、ついに3日前にそこの処女を奪われた。十分な柔軟性を身につけていたしのぶは沢木の剛直をはじめてアヌスに受け入れた時から、前門とはまったく違う鋭い快感を覚え、はっきりと歓喜の声を上げたのだ。
「もう猿轡を外してもええやろ、しのぶ夫人の甘い泣き声を聞きたい」
沢木はうなずくと、涎でべっとりと濡れたしのぶの猿轡を外す。口が自由になったしのぶは胸一杯に息を吸い込むと、ああっと切なげな声を吐く。
「どうや、両穴責めにかけられる気分は? たまらんやろう」
「あっ、あっ、いいっ!」
たちまちしのぶの頭からは裕子のことも消え、悦虐の世界をふらふらと彷徨い始める。
一時は引いていた「かおり」の客達も、2人の美熟女による性の競演に次第に引き込まれ、ギラギラした目をしのぶと裕子の素肌に注ぎ出すのだった。

「あっ、あっ、ば、馬鹿なことはやめてっ」
「何が馬鹿なことだ、気持ちのいいことをしてやろうというじゃないか」
裕子の裸身に取り付いた脇坂たちはローターやバイブを手に取ると、手分けして裕子の乳房、うなじ、太腿といった敏感な箇所を責め立てる。屈辱と恐怖、そして嫌悪に身を固くしていた裕子だったが、男たちの執拗な責めに身に着けていた鎧を一つ一つ剥ぎ取られるように、次第に無防備な姿を晒して行くのだ。
「ああっ、そ、そこは駄目っ」
脇坂は手に持ったローターで裕子の臍の下辺りをくすぐるようにしていたが、その淫らな玩具が徐々に下降して最も敏感な羞恥の蕾に触れると、裕子は陸に上がった魚のようにビクンと全身を痙攣させる。
「ほう、えらく感受性が鋭いじゃないか、ここが小椋裕子夫人の泣き所か」
脇坂は口の端に残酷そうな笑みを浮かべ、その部分に緩やかな刺激を与え続ける。裕子は白い頬をピンク色に染め、あっ、あっと舌足らずな悲鳴を上げ始める。
「ほう、随分大きくなって来たぞ」
脇坂に意地悪く指摘され、裕子は掠れた声で嫌っと悲鳴を上げる。裕子のその部分は普段はそれほどでもないが、一度刺激を与えられて充血すると驚くほど勃起し、まるで子供のペニスほどの大きさになるのだ。
裕子は女子高生のころ好奇心から自慰行為を試み、自分でその部分を刺激したことがあった。するとたちまち裕子は経験したことのないような鋭い快感に引き攫われ、波のように繰り返し押し寄せるエクスタシーに翻弄されたのだ。
当時の裕子にとってそれは快楽というよりは、恐怖に近いものだった。気が遠くなるような快感、自分が自分でなくなるような感覚に裕子は戦慄を覚え、その行為を自ら固く封印したのだった。
潔癖症の裕子にとってそれは決して人に言えないコンプレックスであり、裕子は夫の道夫との行為の最中にもそこを刺激されることを激しく拒絶して来た。膣への刺激だけでも十分満たされると考えていたのである。
しかし、いつかその秘密を知られるのではないかという予感が常に裕子を不安にし、次第に裕子は夫とのセックスを拒むようになって来た。特にここ数年は道夫とはベッドを共にしていなかったのである。

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