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第43話 人妻全裸快走(1)

男たちは全員、トレーニングウェアとジョギングシューズという格好である。男の後ろから2つの紙袋を抱えた香織が現れる。
「うちのお客様には最近どうも運動不足気味の人が多くて、特に脇坂さんたちは生活が不規則な上に中年太り気味なの。ジムで水泳やトレーニングをやったそうだけど、続かないらしいの」
脇坂達はパンツスーツ姿の裕子の嘗めるように眺め、ニヤニヤ笑っている。裕子の胸の中を黒い雲が覆うような不安が湧き起こってくる。
「小椋夫人と一緒のジョギングなら絶対に三日坊主にならないだろうから、ぜひ一緒に走って欲しいというご希望なのよ」
「な、何ですって!」
裕子は戸惑いの声を上げる。
「どうしてそんなことをしなければならないの」
「あら、小椋さんはジョギングが趣味なんでしょう? 一人で走るよりも大勢で走ったほうが賑やかで楽しいじゃない」
香織は平然と、裕子の抗議の声を聞き流す。
「しのぶも一緒に走るでしょう?」
「は……はい……」
しのぶは既に香織たちに因果を含められているのか、素直に頷く。
「加藤さん……あなた……」
「嫌とは言わないよね、小椋さん」
香織はそういうと腕に抱えた紙袋を裕子としのぶに一つずつ押し付ける。
「これは……」
「あなたたちのジョギングウェアよ」
裕子は怪訝な顔をして紙袋の口をあける。その中に入っていたのはなんと、鮮やかな豹柄のTバックビキニの上下だった。
「ど、どういうことっ。これはっ」
裕子は驚愕に目を見開き、再び抗議の声を上げる。しのぶも紙袋から縞のビキニを取り出し、ベソをかいたような顔になっている。
「2人ともシューズは新しいのを用意したわ。どちらも脇坂さんたちからのプレゼントよ。お礼を言いなさい」
「な、なんのつもりなのっ。からかうのもいい加減にしてっ」
「あらあら、勇ましいわね。自分の立場を忘れちゃったのかしら」
香織は薄笑いを浮かべながら、ポケットから2つの携帯電話を取り出す。
「わかるわね? ご主人とあなたの携帯よ。ここに登録されているアドレスはすべて沢木さんがうちのパソコンに吸い上げてくれたわ。あなたとご主人のとんでもない写真を、ご主人の会社の同僚や、東中のPTA役員にいっせいに送りつけることも出来るのよ」
「う……」
そう決め付けられると裕子は言い返すことも出来ず、ぐっと黙り込む。
「あの……着替えはどこで……」
しのぶが香織に小声で尋ねたのを聞いて、裕子は驚く。
(本気でこんなものを着て、街中を走ろうというの?)
「コンビニのバックヤードで着替えるといい。ここは俺が経営している店やから遠慮はいらん。今なら客もおらんからな」
「……わかりました」
しのぶは紙袋を抱えてコンビニの通用口に向かう。
「……か、加藤さんっ」
裕子はあわててしのぶに声をかけるが、しのぶは悲しげな表情で裕子に頷きかけるだけである。
「どうするの? やるの、やらないの」
香織は威嚇的に裕子に携帯電話を突き出すようにする。裕子はきっと香織を睨みつけると、しのぶの後を追って通用口からコンビニに入る。
「加藤さん」
ダンボールの詰まれた狭いバックヤードの中で、しのぶと2人になった裕子は真剣な口調で話しかける。
「……ごめんなさい、小椋さん……私、あなたのご主人と……もうあなたの顔がまともに見れない……」
「それは……その話は後にしましょう。それより、いったいどうしたの? どうしてあいつらの言いなりになっているの?」
しのぶは裕子の問いには答えず、俯いたまま白い薄手のブラウスの前のボタンをゆっくり外しだす。ブラウスの下から赤い扇情的なブラジャーが現れたので、裕子は息を呑む。
「小椋さんも早く着替えないと……香織さん達からお仕置きを受けますわ」
「ちょ、ちょっと……加藤さん」
裕子は続いてエンジのスカートを脱ごうとするしのぶの手を慌てて押さえる。
「あなた……本気でこんなものを着て走るつもりなの?」
裕子の咎めるような視線を受けて、しのぶは脅えたように目を伏せる。
「だって……」
「冗談じゃないわ。こんなこと、馬鹿げているわ」
「でも、走らないと……写真が……」
しのぶは気弱げに顔を上げる。
「確かに私は脅されているわ。あんな写真がばら撒かれたら身の破滅だわ。でも、口惜しいことに今のところ、彼らの罪を客観的に証明出来ない」
裕子は腹立たしげに唇を噛む。
「あれから一生懸命考えたんだけれど、夫はあなたと……その……強制されてもいないのに人前で……でも、夫はあんなことをするはずがないの。薬か何かを飲まされたに決まっているわ」
「薬……」
「加藤さん、私は愚かにもあいつらの罠にはめられた……でも、あなたは違うでしょう? 何か犯罪的なことをされたんじゃないの? そうでないと、あなたのような人があいつらの言いなりになるはずがない」
「小椋さん……」
「お願い。教えて……何をされたのか。それがあいつらを叩き潰す鍵になるはず」
「それは……」
しのぶは口ごもる。
確かに裕子の勘は半ばあたっている。だが、その「犯罪的なこと」は夫の達彦が行ったかもしれないのだ。
蝶が蜘蛛の巣に絡め取られるように、香織たちの嗜虐的な性の生贄に落ちた自分──そのきっかけは達彦が酔って、香織の娘である史織に対して犯した過ちなのだ。そのことは口が裂けても裕子に話すわけにはいかなかった。
「違うのよ、小椋さん……香織さんには小椋さんが考えているような酷いことをされた訳じゃないの」
しのぶは裕子の手を軽く払って改めてスカートに手をかけ、ゆっくりと下ろしていく。ブラジャーとお揃いの、赤いエロチックなパンティが現れ、裕子は衝撃を受ける。
「これはしのぶが……私がお願いしてそうしてもらっていることなの」
「そんな……」
「この時間ですからまだ、ほとんど人通りはありませんわ。早くしないと人が増えてしまいます」
しのぶはあっさりブラジャーとパンティを脱ぎ去り、雪白の全裸を晒す。その大胆さに裕子はどぎまぎするほどである。
「小椋さんも早く用意を……2人が準備出来ないといつまでも始まりませんわ」

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