第52話 露出調教(2)

翌朝早く東中の英語教師、小塚美樹は自宅マンションの窓からじっと外を窺っていた。
隣には美樹の遊び友達である荏原誠一が、望遠レンズを取り付けた一眼レフをかまえている。
誠一は25歳になるカメラマンの卵で、流行の韓流スターを思わせる甘いマスクをしている。ショットバーで一人オンザロックをすする誠一の中性的とも言うべき美貌に興味をひかれた美樹が好奇心から声をかけたのだが、案の定、誠一は美樹と同類のゲイだった。
もちろんレズビアンの美樹は誠一に異性として興味を持ったのではない。同様に中性的な美貌を持つ美樹にとって、誠一はまるで双子の弟を見るような親しみを感じたのだ。
話をしてみると、驚いたことに誠一は美樹とそっくりの性癖の持ち主で、自分よりずっと年下の美少年に対する加虐的な性向を有しているのだ。体内に澱のように溜まった欲望を発散するすべのない誠一の苛立ちと苦しみは美樹には痛いほど分かった。まさに今の自分がそうだったからである。
しかしR学園でそうしたように美樹がその欲望を再び安易に解放したら、今度こそ社会的に抹殺されることは間違いなかった。
美樹が恋い焦がれていた東中の生徒、小椋里佳子の母親、裕子がどういう理由か知らないが、とんでもない露出行為を強いられている。
そして裕子と同時に「調教」を受けているのが、少女と見まがう美貌の少年で美樹の教え子である加藤健一の母親、しのぶであることを偶然知った美樹は、それが天与のチャンスだと感じた。そしてある企みに誠一を引き込んだのだ。
「来た……」
ファインダーを覗き込む誠一が息を呑む気配がした。東中央公園前にようやく待ちに待った被写体が現れたのである。
「こりゃ驚いたね」
ふらふらと頼りない足取りで公園に走り込んで来た2人の女はいずれもビキニパンティ一枚のみを身につけたトップレスだったのだ。その後を金魚の糞のように、トレーニングウェア姿の数人の中年男たちがついてくる。
美樹から話を聞いていた誠一だが、実際にその目で見るまでは半信半疑だったのである。しかし早朝でほとんど人目はないとはいえ、いずれ劣らぬ見事な肉体の熟女2人が裸同然の姿でジョギングをしているのを目撃すると、その迫力に驚かざるを得なかった。
2人の女はスポーツ用のサングラスをしているため顔は分からないが、整った輪郭と鼻筋、形のよい唇はいずれもかなりの美女であることが窺える。
肩でハアハアと荒い息をついている2人の女を、男たちは公園の中央に立たせる。男たちの中には昨日と同様、美樹も顔を知っている東中の父兄、脇坂がいる。脇坂が何か告げると、女達は両手を頭の後ろに組み、足を広げて立つ。
別の男が2人、女の横に立つといきなりサングラスを奪う。うろたえたような2人の女の顔がさらけ出される。
「向かって左が小椋裕子、右が加藤しのぶよ」
興奮にうわずった美樹の声にうなずいた誠一は、ここぞとばかり続けざまにシャッターを切り、2人の女の顔のアップや、パンティ一枚の裸身をフィルムに収めていく。
しかし、2人ともなんという美しさだろう。美樹からしのぶは37歳、裕子に至っては42歳と聞いていたが、その年齢が信じられないような若々しさである。
しのぶの幼ささえ残る清楚な顔立ち、裕子の外国人の女優を思わせるエキゾチックな顔立ちは、ゲイの誠一が見ても極上の美しさだった。その2人が激しい羞恥に頬を染め、どうしようもないように潤んだ瞳を前方に向けている様子は、ゾクゾクするほどの被虐美にあふれている。
しのぶには彼女そっくりの顔立ちをした15歳になる息子がいると聞いている。美樹と同様、美しい年下の同性を嗜虐的にいたぶることにたまらなく情欲が刺激される誠一は、早くも期待に胸が高鳴るのを押さえることが出来ない。
「健一の妹の香奈って娘もなかなかの美少女よ」
「美少女は美樹に任せるよ」
「私はとりあえず里佳子が手に入ればいいわ。勝ち気な娘が好みなの」
そんな恐ろしい会話を美樹と誠一が交わしていることも知らず、裕子としのぶはこの場の主導権をとっていると思われる脇坂に再び何か言い渡される。2人の女は弱々しく首を振って抵抗の意志を示していたが、男たちに剥き出しの尻を叩かれ、諦めたようにパンティを脱ぐ。
「すげえ……」
裕子としのぶは全裸になると、男たちから渡されたピンクのローターを股間にあてる。裕子のそこには黒々とした繊毛が密生していたが、しのぶのそれは完全に陰りを失い、幼い少女のような趣を見せている。
しのぶの息子、母親に似た美少年という健一のその部分はどうだろう。15歳と言えば個人差があり、しっかり生えているものもいればいまだ子供のような状態のものもいる。いずれにしても萌え出したばかりの美少年の若草をすべて剃り上げ、生まれたままの姿にしてから若茎を苛め抜き、泉が涸れるまで射精させてやる――誠一はそんなことを想像しながら夢中でシャッターを切り続ける。
美樹も裕子の裸身を見ながら同様の白日夢に浸っている。母親譲りの恵まれた体格と、これも母親似のエキゾチックな顔立ちをした里佳子を、思う存分いたぶることが出来る――そう考えただけで美樹は2年半の間押し殺して来た暗い情欲が炎となって身体の裡を焦がし始めるのを感じるのだ。
「美樹、ビデオ、ビデオ――」
誠一の声にはっと我に返った美樹は、三脚に固定されたビデオカメラのファインダーを覗き込む。誠一が素早くセッティングしたそのレンズが捕らえた光景が液晶の小さな画面に映っている。
裕子としのぶがともに陶然とした表情を浮かべ、片手に持ったピンクのローターを股間に当て、空いた一方の手で豊満な乳房を揉み上げている。美樹は引き込まれるように録画ボタンを押す。
生活水準の高いニュータウンにある東中のPTAの中でも知性、気品、美しさの点で指折りといえる2人の美夫人が、青天井の下ではっきりと陶酔の表情を浮かべ、淫らな自慰行為に浸っている。美樹は露わになった2人の股間、激しく揉み立てられて踊る乳房、そして今にもエクスタシーに達しそうな美貌に、順にゆっくりとズームをかけていく。
「このまま実話写真誌にでも売り込めば、相当の値が付くぜ」
「駄目よ」
そう呟く誠一を美樹は慌てて制する。
「わかってるよ。そんなことをするより、美樹の言うとおりこのご夫人達のお嬢ちゃんやお坊ちゃんを手に入れるのに使う方が余程いい」
「当たり前でしょ」
「ただ、早朝とはいえこれだけあからさまに野外露出を演じているんだ。他に気づく人間が出てくるのは時間の問題だ。仕掛けるなら早く仕掛けないと」
そういうと誠一は一眼レフから手を離し、やはり望遠レンズをつけた高機能のデジカメを手に取ると、裕子としのぶに素早く焦点を合わせ、シャッターを切り続ける。
美樹は頷く。確かに裕子としのぶを取り巻くギャラリーの中年男たちも、昨日に比べて1.5倍はいそうだ。このまま2人の美夫人の露出調教が続けば噂は広がり、いずれ里佳子や健一の耳にも達するだろう。
その時、裕子としのぶががくんと首をのけぞらせ、ピンクのローターを持った手の動きが一段と早くなった。
「そろそろイキそうよ」
誠一はデジカメを置き、再び素早く一眼レフを持つ。一瞬の後、裕子としのぶはほぼ同時に絶頂に達した。男たちにエクスタシーを告げるのを強制されているのか、裕子としのぶの口が何か言葉を発する。誠一のカメラと美樹のビデオは、2人の美夫人の陶酔の瞬間を冷酷に記録していくのだった。

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