第63話 春をひさぐ美人妻(2)

「いいかい、それじゃあ2人とも俺達の前に正座するんだ。裕子が俺、しのぶが赤沢さんの相手だ」
しのぶと裕子は一瞬顔を見合わせたが、すぐに諦めたように2人の男の前に腰を折る。
「即々って知ってるかい? ええ、奥さん?」
「知りません」
脇坂の問いに裕子は首を振る。
「へっ、お偉い国文学の先生にも知らない言葉があるのか。それじゃこれを機会に勉強してもらおうか。風俗用語の基礎知識を。なあ、赤沢さん」
赤沢はつられてへらへら笑いながら脇坂を見る。
「そりゃいいや」
赤沢も上機嫌で片手を伸ばし、しのぶの頭を押さえる。
「即々ってはな、即フェラチオ、即本番のことだ。つまり客を部屋に招き入れるや否や、シャワーを浴びる前にソープ嬢がフェラチオや本番の奉仕をすることだ。わかったかい」
しのぶと裕子の表情がさっと青ざめる。
「中級以上のソープじゃあ当たり前のサービスさ。あと即即々ってのもあってな、これはさらにアナル嘗めが加わるそうだ」
「大部分の客はシャワーを浴びてくるか、少なくともウェットティッシュか何かでしっかり汚れを落としてくるが、場合によっちゃあ恥垢や糞まで嘗めなきゃいけないわけだからかなりハードなサービスだ。風俗嬢も楽な商売じゃないね」
脇坂と赤沢はそう言うと楽しげに笑い合う。
「そ、それを私達にさせようというのですか」
裕子は顔を引きつらせて2人の男を見る。
「そういうことだ」
脇坂は頷くと、正座した裕子の前に仁王立ちになる。
「まずフェラチオから始めてもらおうじゃないか」
裕子はあまりに残酷な命令に、さすがに眉をひそめ、脇坂を見上げる。
「どうしたんだ、え、奥さん。それくらいのことがいえなくてホテトル嬢が勤まると思っているのか」
脇坂はそういうと足の裏で邪険に裕子の優美な肩先を蹴り上げるのだ。
「こっちの奥さんも、黙ってちゃ駄目じゃないか。ええ、やる気はあるのかい」
赤沢はしのぶの顎を片手で持ち上げ、そばかす一面の顔を近づける。しのぶの顔が不快そうに曇ったのを赤沢は見逃さず、激しい平手打ちを見舞う。
「ああっ」
「甘ったれるのもいいかげんにしろっ」
赤沢は頬を押さえて床の上に倒れ臥したしのぶの前に仁王立ちになって怒鳴りつける。しのぶのスカートの裾がめくり上がり、ガーターと合わせた媚めかしい赤いパンティまで丸見えになる。
裕子が慌ててしのぶをかばうように間に入る。
「や、やめて。乱暴はしないでください」
自分が香織や黒田たちを甘く見たばかりにしのぶを救うことが出来なかったばかりか、自分自身もしのぶと同じ女奴隷の境遇に落とされようとしている。しかしそうなっても正義感の強い裕子はしのぶの苦境を見過ごすことが出来ず、赤沢に強く抗議するのだった。
「逆らうんじゃないっ」
いきなり脇坂が裕子の頬に平手打ちを放つ。
それほど強くはなかったが、男から直接的な暴力をふるわれた経験などまったくない裕子は衝撃に目を丸くする。
「お、女の顔を殴るなんて……」
そういう裕子の逆の頬を脇坂はピシャリと打つ。先程よりも力のこもった打撃に、裕子は床の上に倒れる。
「男を男とも思わない態度をとってきた癖に、ビンタされたくらいでガタガタいうんじゃない」
脇坂は裕子の黒髪をつかみ、ぐいと引き起こす。
「乱暴されたくないのなら、言う通りにするんだ、ええ、奥さんよ」
脇坂はニヤニヤ笑いながら、震える身体を寄せ合っている2人の美熟女に近寄る。
「わかったらわかったと返事をしないか」
赤沢が再び怒鳴り声を上げる。
「わ、わかりました……」
「わかりました」
裕子としのぶが口をそろえて屈服の言葉を吐くと2人の男たちは顔を見合わせて意味ありげに笑い合う。
「こっちの奥さんはまだ反抗心が抜けないようだな」
脇坂は冷酷そうな目を裕子に向ける。
「裕子、俺の前に土下座しろ。調教の前に詫びを入れさせてやる」
「詫びって……いったい……」
裕子が怪訝そうな顔を脇坂に向ける。
「忘れたとは言わせないぜ。大勢の前で恥をかかせやがって。東中の運動会で俺を変質者扱いしたことの詫びを入れろ、っていってるんだ」
「でも、あれは……」
実際に脇坂が運動会で裕子の娘の里佳子やしのぶの娘の香奈を始めとして、女子中学生のショートパンツを突き破らんばかりに発達したヒップやむちむちした太腿を執拗にビデオやカメラで狙い、他の父兄からも苦情が出たことからPTA会長である裕子が注意したものである。
裕子の瞳に反抗心が灯ったのを見て取った脇坂は、再び裕子の頬に平手打ちを浴びせる。
「ひいッ」
燃えるような打撃に思わず悲鳴を上げる裕子。
「逆らうと人相が変わるまでぶちのめしてやるぜ、ええ、奥さん」
「わ、わかりました……もうぶたないで」
「なら、言われた通り詫びを入れないか」
裕子は脇坂に指示されるまま、豊かな尻を突き出すように土下座し、低い声で詫びの言葉を口にする。
「お、小椋裕子は、その傲慢と無知から……脇坂様の芸術的精神の発露である撮影行為を、あたかもいやらしい盗撮のように誤解し、これを指弾することで脇坂様に大勢の前で恥をかかせましたことを深く反省し、こ、ここにお詫び申し上げます。な、何卒お許しください」
「お詫びの印として裕子は……わ、脇坂様に夫に対してもしたことのない奉仕をすることを誓います。し、四十女のむさ苦しい身体ですが、どうか、お楽しみくださいますようお願い申し上げます」
気の強い裕子がこのような屈辱的な言葉をすんなりと口にするはずもない。時に言い淀み、つっかえ、またあまりの恥辱に唇を噛んで言葉を発するのを拒んだ裕子だったが、脇坂や赤沢に髪を引っ張られ、尻を叩かれながらようやく詫びを入れ終えたのである。
(小椋さん……ごめんなさい……)
しのぶは胸の中で裕子に詫びる。
自分のせいで裕子をこのような地獄に引きずり込んでしまった。また裕子が脇坂から理不尽な恨みを買っているのも、裕子が香奈を脇坂から守ろうとしたことが原因である。
またそれだけではなく、しのぶは裕子に対してそれこそどれだけ詫びても足らないほどの罪を犯しているのである。
(あれだけには小椋さんに知られてはいけない――)

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