第78話 奴隷マネージャー(5)

「随分気の長い話ね」
酒田が呆れたような声を出す。
「校長の許可を取ったのかい?」
浜村が飯島に尋ねる。
「すでに許可いただいています」
「それならもう我々がとやかく言う問題ではない」
浜村はその場の議論を終わらせようとすると、長岡が「待って」と意義を挟む。
「飯島先生が言っていることは本当なの?」
「もちろん、嘘を言う訳ありませんよ」
「私はその娘に聞いているのよ」
長岡は貴美子の目を真っすぐ見つめる。
「私にはとても荒唐無稽に思えるけれど、嘘じゃないのね?」
貴美子は一瞬ためらうが、飯島が自分に鋭い視線を送っているのを感じ、「本当です……」と答える。
「羞恥心がほとんどないってことも?」
「はい……」
貴美子は消え入りそうな声で答える。
「わかったわ、なら、その証拠を見せてちょうだい」
「えっ?」
「羞恥心がほとんどない、っていう証拠よ。そうね。そのお臍まで見えそうなシャツを脱いで、上半身素っ裸になってもらえるかしら? そうしたら嘘じゃない、って認めて上げるわ」
「そんな……」
あまりの要求に、貴美子はおろおろとした表情で周囲を見回す。
しかし、飯島を含む貴美子を取り巻く男女の教師は、面白いことになったとばかりニヤニヤ笑いながら成り行きを見守っているだけである。
「どうしたの? やっぱり嘘なのかしら? 適当なことを言って飯島先生や校長を騙して、年下の男を漁るつもりなの?」
「違いますっ」
もうこうなったらしょうがない。貴美子は思い切ってTシャツに手をかけ、一気に脱ぎ去る。
ノーブラのためそれだけで貴美子は上半身裸となり、形の良い乳房がブルンと飛び出す。
飯島が話したでまかせを証明するはめになった貴美子は、露になった胸を隠すこともままならず、6人の教師の好奇の目に晒しているのだ。
飯島も先程着替えの時に一瞬、貴美子の裸身を目にしているが、こうやってまじまじと眺めるのは初めてである。
(まったく良い身体をしている……野球部の部員どもの玩具にさせるのはもったいないぜ……)
長岡は貴美子が比較的あっさりと上半身裸になったのでややあてが外れたが、貴美子の乳首がさも恥ずかしげに小刻みに震えながらも、はっきりと屹立しているのを目ざとく見つける。
「あなた、羞恥心がないなんていうとなんだか子供みたいに無邪気に聞こえるけれど、本当は他人に裸を見せて興奮する性質なんじゃないの?」
長岡の意地悪い発言に貴美子は顔色を変えて反発する。
「ち、違いますっ」
「じゃあ、これは一体なんなの?」
長岡はいきなり貴美子の乳首をひねり上げる。貴美子は羞恥と痛みに「ううっ」と声を上げる。
「乳首をこんなに堅くしちゃって、興奮している証拠じゃない」
「そ、それは……寒いから」
「下手な言い訳はやめなさいよ」
長岡は嗜虐性があるのか、目を妖しく光らせ、貴美子の敏感な乳首をさらに強くひねり上げる。
「い、痛いっ! やめて下さいっ」
「まあまあ、長岡先生、気持ちは分かりますがその辺で」
浜村が間に入り、長岡を止める。
「この女、とんでもない牝狐かもしれないのよっ」
長岡が興奮して貴美子を指さすのを、浜村が制する。
「長岡先生のおっしゃる通りかも知れませんが、ここは校長と飯島先生の顔を立てましょう。この女性が嘘をついて当校に潜り込んだということが分かれば、それはその時点でしかるべき処置をすれば良いではありませんか」
浜村の発言に最年長の島田がうなずく。長岡はいまだ不満げだが、しょうがないと言った風に黙り込む。
「それでは他の先生たちには明日の朝にでもご紹介するということで」
飯島はそういうと改めて貴美子の方を見る。
「もう一度先生たちにご挨拶するんだ」
上半身裸のままで挨拶させられる屈辱。貴美子はぐっとこらえながら再び頭を下げる。
「どうぞ、よろしくお願い致します」
浜村、島田、森岡の3人の男性教師は貴美子の乳房にじっと視線を注ぎながら、ニヤニヤと笑いを浮かべてうなずく。長岡と酒田の2人の女性教師は明らかに嫌悪と軽蔑の視線を貴美子に向けている。
「さあ、次へ行くぞ」
飯島は貴美子の手をぐいと引いて、職員室から連れ出す。
廊下に出た貴美子がTシャツを着ようとした時、飯島が手を押さえる。
「そのままで用務員室へ行くんだ」
「えっ!」
貴美子は信じられない、といった表情で飯島を見る。
「羞恥心がない女だということを自分で証明するんだ。長岡先生あたりはまだだいぶ疑っているぞ」
「当たり前ですわ……あんなこと、普通、信じるはずがありません」
「信用されない場合、困るのは自分自身だぞ。男漁りに来た色情狂という評判が立っても良いのか?」
「う……」
ヌーディスト一家に育った羞恥心のない女というのも貴美子にとってはとんでもない選択であるが、色情狂と思われるよりはまだましなような気がする。
「普通の格好じゃ駄目なんでしょうか……」
貴美子は気弱な声で尋ねる。
「いまさら何を言うんだっ」
飯島はわざとらしく怒声を上げ、貴美子は反射的に首をすくめる。
普段ならこの程度の男の虚勢に威嚇されるような自分ではないのだが、上半身裸という無防備な姿を晒していることが、こうも気力に影響するのか。貴美子は情けなさに歯噛みするような思いである。
「そもそも慶応の女子学生が当校のような三流高校の野球部のマネージャーになりたい、なんて話の理由をどうやってつける。お前が男漁りに来た色情狂という不名誉なレッテルを張られないように俺がせっかく考えてやった理由だ。校長も既にこの理由で納得している。それを引っ繰り返して俺に恥をかかせるようなら、今回の話はなしにするが、それでもいいのか?」

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