第81話 奴隷マネージャー(8)

部員たちに詰め寄られ、追い込まれた貴美子はついに覚悟を決める。
「わ、わかったわ。どうすればいいのっ」
開き直ったのか、挑みかかるような視線を向ける貴美子に、新也はたじろぎながら命令する。
「まず、ジーパンを脱ぐんだ」
貴美子は一瞬表情を歪めるが、さっと顔をねじり、カットジーンズのジッパーを降ろすとさっと脱ぎ捨てる。
飯島から渡され、無理やりに着替えさせられた真っ赤なTバックパンティ一枚の裸になった貴美子は、自棄になったように部員たちの前に直立不動の姿勢をとる。
艶っぽい下着に包まれた貴美子のその清冽なまでの裸身を目にした少年たちは、思わずからかいの言葉をかけるのも忘れて息を飲む。
「次はどうするの?」
貴美子の挑戦的な態度にたじたじとなりながらも、新也は「パンツを膝まで降ろして、壁に手をついて、ケツを思い切り突き出せ」と指示する。
貴美子は無言でクルリと振り向き、裸の背面を部員たちに向けると新也に指示された通りTバックパンティを膝まで降ろし、部室の外壁に手をついて尻を突き出す。
「ひゃっ」
「すげえっ」
部員たちは感嘆の声を上げる。
野球部の中でも新也を中心とする上級生の不良少年グループの多くは、新也の金に媚を売る不良少女たちの肉体を知っており、女の裸はある程度見慣れてはいた。しかしそれらの少女の若さに似合わぬくずれた裸と、貴美子のスポーツで鍛え上げられた引き締まった裸身とは比較にならなかった。
まして女の経験のない下級生の部員たちは、裸の女を見ることそのものが初めての経験であり、見事なまでに量感のある貴美子の尻に圧倒されるような思いであった。
「さあ、早く。叩くのなら叩きなさいよ」
貴美子はそのままの姿勢で後ろを振り向くと、吐き捨てるように言う。貴美子の態度に気圧されていた新也だったが、その言葉にカッと頭に血が昇り、バットを手にする。
「偉そうな口を叩いて、後で泣き言を言っても知らないぜ」
新也はバットを思い切り振りかぶると、貴美子の裸の尻目がけて振り下ろす。
バッチーン!
思いがけないほど大きな肉の音がグラウンドに響き渡り、貴美子の口から「ヒイッ!」という甲高い悲鳴が漏れる。
金属バットで思い切り尻を叩かれる「ケツバット」、その滑稽な語感とはうらはらに、苦痛と屈辱は想像以上のものだった。
尻に火がついたような感触などという生易しい言葉ではすまない。焼けた鉄板を一気に尻肉に押し付けられるような激痛。
また、人間の肉がこれ程大きな音を立てることが出来るのかと思うほどの滑稽さまで感じさせる打撃音、それは貴美子のささやかな反抗心も一気に打ち砕き、汚辱の底に突き落とすほどだ。
「二発目、いくぞっ」
「ま……待って!」
貴美子の哀願の声は新也の掛け声によってかき消され、再びバットが貴美子の尻めがけて振り下ろされる。無意識のうちにバットを避けようと貴美子が尻を動かしたためか、二発目は貴美子の太腿の上部に命中する。
「ギヒイッ!」
先程の打撃に勝る激痛に、貴美子の目から涙が零れ落ちる。
「馬鹿ものっ。ケツを動かすやつがあるかっ!」
飯島の怒号が貴美子に飛んだ。
「だ、だって……」
貴美子は涙目で飯島を見上げる。生まれてこのかた体罰など受けたことがない貴美子が初めて経験する圧倒的な暴力。青天井の下素っ裸同然という屈辱的な姿を晒していることもあいまって、貴美子の日頃の気丈さはケツバットによって今や文字どおり粉々に打ち砕かれている。
「新也も新也だ。こんなに大きなケツが少しぶれただけで的を外しているようじゃ、とても変化球には対応できないぞ」
「的がデカ過ぎるとかえって打ちにくいんですよ」
新也の軽口に部員たちはどっと笑い出す。
「それじゃあもう一度打ち直しだ。今度はケツを動かすなよ。動かしたら回数を倍に増やすからな」
貴美子はぐっと歯を食い縛り、打撃に備える。
「黙ってないで返事をしないか。それと、一回ぶたれるごとに『ケツバット、ありがとうございましたっ』
とお礼を言うんだ。お礼を忘れたらやり直しだ、いいなっ」
「は、はいっ。わかりましたっ」
今はできるだけ早くこの暴虐を終わらせるしかない。これが終われば家に帰れるのだ。
「行くぞっ」
新也がバットを振り上げる。貴美子は強烈な打撃を予感して裸の臀部をぐっと引き締める。
バッチーン! 再びグラウンドに響く快音。
「け、ケツバット、ありがとうございましたっ!」
貴美子が涙まじりの声を思い切り張り上げる。
いつの間にか瀬尾正明が奇妙な仕置きの様子をデジタルビデオで録画している。新也に続いてレギュラー選手たちが入れ替わり貴美子の尻をめがけてバットを振る。残酷な新人歓迎会が終了するころには貴美子の形の良い尻はすっかり腫れ上がり、まともに歩くことも困難になっていたのだ。

その日の夜、飯島は開店前の「かおり」でママの世良香織、黒田、沢木の3人と向かい合っていた。香織は飯島には初対面の黒田、沢木を簡単に紹介すると、早速貴美子のマネージャー業務初日の様子を聞き出した。
「そう……ケツバットっていうお仕置きがあるの。それじゃあ、さすがのじゃじゃ馬娘の鼻っ柱も完全にへし折られたんじゃない?」
香織が満足げに微笑を浮かべると黒田、沢木もニヤニヤ笑い出す。
「あれだけやられたんじゃ、しばらくは猿の尻みたいに腫れ上がって夜もろくろく寝られないでしょう」
「まあ、いい薬になっただろうけど、壊さない程度に頼むわね」
香織の言葉に飯島が頷く。
「しかし……いったい何がどうなっているのか、そろそろ話してもらっても良いでしょう」
「それはもう一組のお客さんが来てから話すわ。そろそろ来ても良いころなんだけれど」
香織がそういうや否や店の扉が開き、端正な顔立ちをした若い男女が入って来た。
「あの……ここは世良香織さんの……」
「そうよ。どうもお呼びだてしてすみません」
店に入って来たのは東中の英語教師、小塚美樹とその遊び友達のカメラマンの卵、荏原誠一である。
「こちらにおかけになって」
香織は2人にボックス席を勧める。美樹と誠一は警戒感の混じった表情で席に着く。飯島、美樹、誠一と黒田、沢木、香織の6人が向かい合った。

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