第85話 人妻ソープ嬢 (1)

「里佳子と健一は、母親の早朝ジョギングのことを知っているのでしょう? それに、マスクを着けさせたとしても中学生の身体じゃ、走る前から裕子としのぶに誰だか気づかれてしまうわ」
「まずはギャラリーとして参加させればどうかな。それでも母親や貴美子たちから見える位置にいるとまずいので、最初は公園に横にとめた車の中から3人のオナニーショーを見せる。ショーが終わったら引き出して、5人一緒に記念撮影ってのも面白い」
「なるほど……」
香織は感心したように頷く。
「集団調教するのなら、最初からそれくらい徹底した方は良いかもしれないわ。一人ではなかなか思いつかないことも、こうやって会議をするとどんどん良いアイデアが出てくるわね」
「調教会議をやったかいがあるってもんや」
黒田の言葉に6人はいっせいに笑い出した。
「残るは香奈一人ね。これはうちの史織にやらせるわ。来週中にはすてきな美少女奴隷が誕生しているはずだから、楽しみにしておいて」
香織はそう言うと珈琲の残りを飲み干した。

翌日の夜、吉原のソープランド『プシキャット』の待合室に黒田と飯島の姿があった。
10分前までに来てくれと言われていたのだが結局2人は待ちきれず、22時少し過ぎには店に到着していた。
これから入るのは最終の客ばかりのはずだが、休日の夜ということで店内はかなり混んでおり、送迎車も出ずっぱりのようである。
『プシキャット』のような大衆店では、待合室は客同士のプライバシーにあまり配慮されていないことが多いが、黒田と飯島は香織の予約ということが効いているのか、本来は上がり客専用の小さな個室に通されていた。
「いらっしゃいませ、黒田様、お久しぶりです」
店のマネージャーがやって来て黒田に挨拶し、飯島の方にも「いらっしゃいませ」と深々とお辞儀する。
「一応、写真を見せてもらえるか」
「承知しました」
マネージャーはすでに用意していた写真を2人に渡した。見開き2枚組になっているそれはもちろん裕子としのぶの営業用のものである。
右側の写真はそれぞれの全身像で、いかにも良家の主婦といった感じの、明るいスーツ姿のものである。左側の写真はそれとは逆に、薄いドレスをまとい、濃い化粧を施した、ソープ嬢としての姿が写されているのだ。
飯島は裕子の姿をみるのは初めてである。貴美子の母親ということで、ある程度の美人ということは想像していたが、その気品のある美貌は飯島の予想を上回るものだった。
42歳という年齢が信じられない清冽さは、貴美子と姉妹といっても通るほどである。スーツ姿の知性美もさることながら、髪を玄人っぽくセットし、濃いめのメイクをした姿の妖艶さは、背筋がゾクッとするほどである。
写真の下に「ゆうこ」と平仮名でプリントされているのが、大学講師まで務めた小椋裕子女史の見事なまでの転落を示しているようで、皮肉なおかしさを感じさせる。
黒田も見慣れたはずのしのぶの姿がこうしてソープ嬢としての営業用写真に写されているのを見ると、改めて新鮮な刺激を感じるのだ。しかも今日は部屋の関係で裕子夫人も含めた二対二のプレイも楽しめそうなのである。
それにしても、彼女たちを知った人間が偶然客として来たらどうするつもりなのだろう。職業としてソープ嬢を選択した女ならともかく、3日だけの苦行ということで耐えている2人にとってもあり得ないリスクではないはずだ。
「それでは、入浴料をお一人様1万円ずつ頂戴致します」
店のシステムは、先に入浴料として1万円を渡し、部屋の中でその倍にあたる2万円を女の子に払うというものである。大衆店の相場としては一般的といえる。
「延長は出来るの?」
「最終コマなので、本来はお断りしているのですが……」
マネージャーは首をひねる。
「店内では無理ですが、近場のラブホテルの大きめの部屋を押さえることが出来ますので、ご希望ならおっしゃってください。規定の延長料はいただきますが、ホテル代は当店が負担します」
「一晩中でも大丈夫ということやな」
黒田がニヤリと笑いかけたので、飯島はやや驚く。
「しかし……明日の朝は早朝ジョギングをやらせるのでしょう? この6日間相当身体を酷使しているはずですし、もちますかね?」
「心配ない、心配ない。あの2人の心臓の強さは実証済みや」
黒田は楽しげに笑いながら言う。
「先生、今晩は途中で女を取り替えてたっぷり楽しみまひょ。わいも今週は禁欲生活で、溜まりに溜まっているところや」
そう言いながら黒田が差し出す写真を目にした飯島は、裕子夫人とはまた違うしのぶの清楚ささえ感じさせる美貌に驚くのだ。
替わりに黒田は裕子の写真を受け取り、大袈裟な歓声をあげる。
「おお……これは素晴らしい。こういう風に撮るとあのお堅いPTA会長も、ポルノ女優みたいに見えるやないか」
「黒田さん……声が大きいですよ」
個室と言っても他の客の待合室とはカーテン一枚で仕切られているだけで、声は筒抜けである。裕子やしのぶの個人が特定出来る情報を漏らすのは好ましくないと、飯島は黒田に注意するのだ。
「つい興奮してしもた。すまん、すまん」
黒田は頭をかきながら写真を置く。
「しかし、裕子やしのぶが今この時も見ず知らずの男を相手に素っ裸のままで尺八をしたり、ベッドの上で大熱戦を演じていると思うと、なんや、興奮してくるわ」
黒田が声を潜めて飯島に話しかける。
「先生は実際の2人とは面識がないやろうけど、わいと沢木はんはそれこそこんな風になる前の、ごく普通の主婦やお堅いPTA会長としてのしのぶや裕子を知っているから、感慨はひとしおや。矢っ張り香織ママの着眼は大したもんや」
たしかに飯島も、娘の貴美子とはまた違った成熟した美貌をもつ裕子が今もソープランドの個室のマットの上で泡踊りをしていると思うとかすかな痛ましさを感じる一方で、股間の逸物は早くも充血を見せてくるのである。
飯島はふと貴美子と裕子からソープ嬢として、いわゆる二輪車での奉仕を受けることを夢想する。美しく知的な母と娘が競うように飯島の肉棒を奪い合う姿は、彼のインフォリオリティ・コンプレックスを満たすのに十分なものであった。
「お待たせしました。ゆうこさん、しのぶさんお待ちのお客様、ご案内いたします」
ボーイの声に飯島ははっと我に返った飯島はあわてて立ち上がる。同時に黒田も待ち兼ねたように腰を浮かす。
『プシキャット』はもとは高級店だったのを大衆店として模様替えしたためそれぞれの個室も広く、このクラスには珍しくエレベーターまで設置されている。ボーイに案内された黒田と飯島を、エレベーターの中で扇情的なドレスをまとった裕子としのぶが迎える。
「いらっしゃいませ」
挨拶の後に同時に顔を上げ、黒田を認めた裕子としのぶの顔に驚きの色が走るが、いち早く冷静さを取り戻したしのぶが「お部屋は3階でございます」と笑顔を浮かべる。
一方の裕子は最後の客が黒田であったことに動揺を隠せず、エレベーターの中で黒田が裕子の尻を撫でながら「どや、元気にしてたか」などと尋ねても、「は、はい……」と蚊のなくような声で返事をするだけだった。

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