第86話 人妻ソープ嬢 (2)

しのぶは裕子に比べて落ち着きを示しており、やはり黒田に尻を撫でられながら同様にたずねられても「はい、元気でしたわ。黒田さんはいかがでしたか?」とほほ笑んだり、黒田が豊満な胸に触れてくると「駄目よ、お部屋の中まで我慢して」などと身をくねらせるのだった。
黒田と飯島は2人に導かれて個室に入る。そこは店では一番大きな部屋のようで、いわゆる二輪車が出来るようなつくりになっている。洗い場も風呂も大きく、ベッドもキングサイズである。
しのぶと裕子は改めて床に跪き、三つ指をつく。
「いらっしゃいませ、しのぶと申します。よろしくお願いいたします」
「裕子と申します。よ、よろしくお願いいたします」
裕子夫人を初めて見た飯島は、その気品のある美貌に圧倒された思いになっている。写真でも十分その美しさは窺えたが実際の姿を見ると尚更である。
知性美と野性味が同居したような彫りの深い容貌には、さすがに荒淫のやつれが窺えるが、それがかえって本来の美貌に凄みを増しているといえる。薄いドレスから透けて見える肌は滑らかで張りもあり、42歳という年齢が信じられない。
昨日の「調教会議」で黒田と沢木は、裕子としのぶが仮にプロのソープ嬢になったとしても高級店は無理だし中級店も難しいと発言していたが、裕子夫人を目の前にした飯島はそれには賛同し難いと感じている。少なくとも飯島はかつてこのようなノーブルな美女を風俗店で見かけたことは一度たりともないのだ。
久しぶりにしのぶを見た黒田も同じような感想を抱いている。しのぶはこの6日間のソープでの講習、および実際に客をとらされたことによって、娼婦として一段の成長を遂げたようである。いまだ人妻としての矜持を捨て切れない裕子に比べて、しのぶは開き直ったような図太ささえ見せているのだ。
裕子としのぶは飯島とは初対面だが、黒田と同道している以上、香織の紹介によるものだということは容易に想像できる。要するに裕子かしのぶ、またはその両方を直接的あるいは間接的に知る人間ということである。
この3日間のソープ嬢としての地獄のような生活での唯一の救いは、相手にしなければならない客が見ず知らずの人間であり、この3日間以降はかかわることがないことだった。このため裕子もしのぶも3日間はいわば別の人間になったつもりで、ソープ嬢としての役割をなんとか演じることができたのである。
しかしその3日間の終わりに黒田の姿を見て、2人の美夫人は一気に現実に引き戻されたのだ。さらに飯島という見知らぬ人物が2人の心に新たな不安をかき立てた。
しかしこの店の中では、裕子としのぶはあくまでソープ嬢として振る舞わなければならない。サービスに客が不満を抱けば、2人の無料奉仕期間はさらに一日延びることになっているのである。しかもこれは連帯責任であり、一方が客を完全に満足させていても、他方のサービスに不満なら、裕子としのぶがともに労働延長を課せられるという厳しさだった。
裕子もしのぶもそれこそ必死で、講習で習い覚えたサービスを客に対して施した。客の方は多少のぎこちなさはあるものの、基本的に中・高級店レベルのサービスを、素人っぽい初々しさの残る美熟女から受けることが出来たのだから、不満があるはずもない。なかには3日間連続で2人に通ってきた客もいるほどである。
裕子は飯島の、しのぶは黒田の上着、シャツを脱がせ、上半身を裸にさせると、ベッドに並んで座らせる。次に2人は男たちの前に跪くと、ズボンのベルトに手をかける。
すっかり充血した飯島の逸物はパンツの布地をぐいと押し上げており、それに気づいた裕子夫人は初々しく頬を染める。裕子は飯島のズボンを脱がせてきちんと畳んで脱衣籠にいれると、次にパンツを脱がしていく。
巨大な肉棒が完全な勃起を見せて飯島の股間にそそり立つ。飯島のそれは脇坂のものと劣らぬほどの大きさであり、しかも脇坂よりも若い分、高々と屹立を見せているようである。飯島の巨根を見た裕子夫人はショックを受けたような表情を見せ、ますます羞恥に頬を赤らめて行くのだ。
「どうしたんだ、ほら、サービスしてくれよ」
「は、はい……」
裕子夫人は長い睫毛を瞬かせると、飯島の肉塊にそっと唇を触れさせる。腐ったチーズのような臭いがむっと鼻をつくのに耐えながら、夫人は舌先でチロチロと飯島の鈴口のあたりや、カリの周りを愛撫していくのだ。
「なかなか巧いじゃないか」
飯島は思いがけない裕子夫人の技巧に驚くが、必死でソープ嬢としての奉仕を続けている夫人の姿に嗜虐的な欲望が高められ、意地悪い言葉責めを開始する。
「この3日間で何本のチンポを嘗めたんだい?」
「……」
「ちゃんと答えないとアンケートに×印をつけるよ」
「それは……」
裕子夫人は飯島の肉棒から唇を離す。
「……よく、覚えていないのです」
「そんなに数え切れないほど嘗めたのかい」
「そんな……」
裕子夫人は恥ずかしげに顔をそらす。
「思い出すんだ。3日間で何時から何時まで客を取ったのか。一コマ90分で何人こなしたのか。そんなに難しいことはないだろう」
「はい……」
裕子夫人はうつむいて、小声で答える。
「……朝6時から夜は12時半まで。18時間半で、一日10人くらいでしょうか……」
「一日10人だって?」
飯島はさすがに驚く。
「そんなにこなせるのか? 部屋の掃除の時間だってあるだろう」
「午前中はショートで、一コマ60分ですから」
「それにしても……食事をとる時間もないんじゃないか」
「お昼はだいたいゼリーのようなもので済ませていました。食欲はないのですが、何か食べないと身体がもたないので」
「睡眠時間は?」
「ずっと店に泊まり込みでした。夜は部屋の片付けや反省会がありますので1時半頃、朝は5時頃です」
「睡眠時間は3時間半か……」
「一度お客様の上でうとうとしてしまって叱られました。だけど、可哀想に思ったのか、延長していただいた上に20分間眠らせていただいて……嬉しかったです」
そんなことを言いながら微笑する裕子夫人を見ていると、飯島は貴美子の母親が身も心もソープ嬢に変貌していることを感じる。
しかし、この店の強欲さと言ったらどうだろう。講習料の回収という名目で2人の人妻を3日の間徹底的に酷使しようというのである。
ショートの客や延長の客もいるため一概には言えないが、一人3万円として10人で30万円、2人、3日間で180万円の荒稼ぎを達成しようとしているのだ。
さらに飯島と黒田が延長という名目で、この後2人の美夫人をホテルに連れ出すことからも金を取ろうというのである。考えて見れば3日の約束だから、ラストのコマが終われば2人と何をしようが店には関係がないはずである。マネージャーはホテル代をサービスするなどとさも恩着せがましく言っていたが、店にうまく乗せられたのだと、飯島は少し腹立たしい思いになる。
しかしそんな裕子夫人に対する義憤や同情も、目の前の欲望には無力である。薄いドレスから透けて見える肌を、羞恥で赤く染めている裕子夫人を見ていると、もっともっと虐めたい、辱めたいという思いが飯島の中に湧き上ってくるのだ。

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