第97話 崩壊への序曲(5)

「き、きひいっ……」
最も敏感な箇所を責められ、美少女の喉から悲鳴が迸る。
「里佳子っ! ひ、ひいっ!」
妹を気遣う貴美子も、再びその部分を香織に力任せに引っ張られ、悲痛な声をあげる。
「ああっ! あああっ!」
「やめてっ! やめてっ!」
愛する娘たちが言語を絶する辱めにあう姿を見せ付けられている裕子は、2人の悪女にすがりつかんばかりにして許しを乞う。
「ああっ、やめて下さいっ。娘を、娘を虐めないでっ!」
「今頃何を言っているの?」
香織は、手に持っていた貴美子のクリトリスを繋いだ金の鎖を美樹に渡すと、裕子の鎖を手に取る。
「まだわからないの? あなたたちには許してだとか、虐めないでだとか言う権利はもうないの。あなたたちはもう私の奴隷、いえ、このAニュータウン共有の奴隷になったのよ」
「ば、馬鹿な……何を言うのですか……」
香織の言葉を耳にした裕子は、恐ろしさのあまり唇を震わせる。
「馬鹿はどっちなのかしら」
香織は笑いをこらえるような表情でそう言うと、裕子の頭をポン、ポンと叩く。
「お利口な大学講師様の割りには鈍いのね。今のあなたたちの状況を考えてごらんなさい。母娘3人が公園の中、大勢の人前で素っ裸をさらしているだけでなく、クリトリスにリングをはめられて鎖で引き回されているのよ」
香織はそこまで一気に言うと、たまらずケラケラ笑い出す。裕子は脅えたように回りを見回す。
裕子を取り囲んでいるのは情欲と好奇に満ちた数え切れないほどの視線だった。ジョギングの時からついて来た男たちに加え、途中から加わったやじ馬、そして公園での滞留時間が延びれば延びるほど増えて行くギャラリー。彼らの多くはデジカメや携帯電話のカメラを裕子や貴美子、里佳子、しのぶ、そして健一の裸身に向けている。
「オッパイやお尻がはみ出るようなものすごいビキニを着て街中を走り回ったのはどなたなの? ご主人のチンチンのアップを見ながらいやらしい声を上げてオナニーして、派手に気をやったのはどこの誰なの?」
「い、嫌……言わないで……」
裕子は香織のおぞましい言葉を聞くまいと耳をふさぐ。しかしデジカメや携帯電話のカシャッ、カシャッというデジタルのシャッター音は裕子の耳を覆ったてのひらをくぐり抜け、頭の中に響いて行く。
シャッター音が一回響くたびに自分の、そして娘たちの痴態がデータとなって記録されて行く。裕子は矜持、誇り、反発心、羞恥心といった自らの精神を支えていたものが、それとともに確実に削り取られていくような錯覚を覚える。
「立ちなさい」
香織が静かに裕子に命じると、裕子は催眠術にかかったようにゆっくりと立ち上がる。
「そこに3人、並ぶのよ」
里佳子、貴美子、裕子と小椋家の3人の女達が青天井の下で素っ裸のまま、直立不動の姿勢で並ばされる。
年齢の順に並んだ3人の裸女は、少女らしい瑞々しさを見せている里佳子、若鮎のようにピチピチとした貴美子、そしてスポーツによって鍛えられているが、熟女としてのむっとするような色気を醸し出している裕子と、三者三様の魅力を発揮している。
しかしその顔立ちや身体つきなど、いかにも血の繋がった家族と感じさせる共通点は多く、それが香織の嗜虐心をいっそう刺激するのだ。
(母娘三人でAVに出演させようかしら……いえ、ここまで来ればそんな生ぬるいことをやっても面白くないわ。それに里佳子はまだ14歳だし、表の媒体はどちらにしても無理……)
(やっぱり、父親の道夫や、健一を交えての乱交パーティの方が面白そうだわ。加藤家の方にも達彦や香奈を参加させる。なにしろ全部で男が3人、女が5人もいるのだから、いろいろな組み合わせが楽しめそうだわ)
香織はそこまでで考えをやめると、3人の裸女の股間から垂れ下がっている金の鎖を改めて手に取り、里佳子の鎖は美樹に、貴美子のそれは飯島に渡す。
「これからちょっと頭の体操をするわ。裕子もさっきおかしなことを口走っていたけれど、あなたたち3人、セックスやレズのし過ぎで頭が鈍くなっているみたいだから」
3人の美女たちはおどおどした表情を香織に向ける。一刻でも早くこの地獄から解放されたい、というのが3人の共通の思いだった。いまはまだ早朝で人どおりは少ないが、通勤、通学の時間帯になれば大変な騒ぎになるだろう。それまでには香織たちもいたぶりを終えるはずである。
3人揃って勝ち気な気性を有していたはずの裕子たちは、数々のいたぶりと羞恥責めによって、積極的に嗜虐者たちに立ち向かうという気概は喪失し、そんなふうな消極的な思考しか持ち得なくなっていたのだ。
「それじゃあまず練習よ。徳川幕府の初代将軍は誰?」
3人はきょとんとした顔を見合わせる。しばしあって里佳子がおずおずと口を開く。
「徳川……家康」
「正解よ。美樹、鎖を思いきりひいて」
美樹はニヤリと残酷な笑みを浮かべると手にもった鎖をぐいと引く。
「ぎゃあっ!」
微妙な箇所を引き抜かれるような激痛が再び美少女の股間に走り、里佳子はけたたましい悲鳴を上げる。
「里佳子っ!」
裕子と貴美子が同時に声を上げる。香織は満足げに笑いながらはあ、はあと息をつく里佳子の裸身を眺めている。
「わかった? このクイズは通常とは逆で、正解を言った人が罰を受けるの。ちなみに不正解の場合は回答者以外の2人が罰を受ける。10秒以内に誰も答えない場合は、全員の鎖を引っ張るからそのつもりでね」
香織はおかしそうにそう言うと3人の顔を見渡す。
3人の美女たちの顔にとりあえず浮かんだのは自己犠牲の心である。自分が答えることによって他の2人を救う。
しかしそうやって、自分だけが罰を与えられることにどれだけ耐え続けることが出来るだろうか。女の最も敏感な箇所を引っ張られる苦痛は並大抵のものではない。その時の躊躇や逡巡を他の2人が、そして誰よりもどれほど辛く感じるだろうか。
「じゃあ二問目行くわよ。日本国憲法の中で戦争放棄をうたっているのは第何条?」
「だ……」
裕子が口を開き書けるとそれを抑えるように貴美子が大声で「第9条!」と叫んだ。
「ああっ!」
飯島が馬鹿力を発揮して鎖を引き、貴美子の腰部がブルブルッと震える。
「貴美子……」
気遣わしげに視線を向ける裕子に、貴美子は頷きかけるようなそぶりをする。
「第3問、芥川賞は文豪、芥川龍之介にちなんだもの。それでは直木賞は?」
「直木三十五!」
今度は裕子が声を張り上げ、次の瞬間「ううっ!」と苦痛に身を揉む。
4問目は里佳子が、5問目は貴美子が、そして6問目は裕子が答え、順に激痛に裸身を悶えさせる。

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