第98話 崩壊への序曲(6)

「ふん……考えたものね。3人順に答えて、苦痛を分散させるなんて」
香織は冷酷そうな表情を小椋家の3人の美女たちに向ける。
「おまけに誰も不正解はなし。問題は少しずつ難しくしているのに、さすがお利口さんの家族は違うわね」
裕子ははあ、はあと荒い息を吐きながらちらと香織の顔を見る。もう少し耐え切ればとりあえずこの場からは解放される。10秒の時間をフルに使うこつもどうにか身につきだした。鎖を引かれた時にも出来るだけ派手に悶えて時間を稼ぐといい。
それらの手管は貴美子が思いついて他の2人に身をもって伝えたものだが、3人は残酷な責めの中でも素早く意思を疎通させ、嗜虐者に対してささやかな抵抗を示している。裕子は連日の負け戦の中でようやく香織に対して一矢報いたような気持ちになっていた。
(いくらいたぶられても、私達家族が互いを思いやる気持ちを壊すことは出来ないわ)
裕子の表情にそれまで失われていた抵抗心が蘇っていく。
「でも、それがいつまで続くかしらね」
美樹は残酷そうな笑みを口元に浮かべる。
「朽木さん、ユウコ2号のお尻の穴をいじめてあげて」
「わかった」
朽木は満面の笑みを浮かべると貴美子の背後に取り付くようにして、双臀の狭間に秘められた隠微な箇所を指先でまさぐる。
「な、何をするのっ、や、やめてっ!」
貴美子は身を揉むようにして抵抗するが、飯島が「おとなしくしなっ!」と声を荒げて鎖を引くと「ひいっ!」と悲鳴を上げ、腰が砕けて裸身を朽木に預けるようにする。
「どなたか、残りの2人のお尻の穴を責めていただける方はいないかしら」
香織が声をかけると、先程から股間を膨らませて3人の美女の痴態にみとれていたギャラリーがいっせいにざわつき出す。
「母親の方は俺にやらせてくれ」
でっぷり太った眼鏡の中年男が、すだれのようになった髪を撫でつけるようにしながら前に進み出る。
「そ、それじゃあ、娘の方は俺に……」
小柄でぎょろりとした目付きの中年男が前に進み出る。
「それじゃあお願いするわ」
香織が頷くと2人の男はそれぞれ裕子と里佳子の背後にぴったりと立つ。
「ひっ!」
「ああっ!」
男たちの指先が母と娘の肛門に伸び、窪みをつつくようにする。
「奥さん……俺が誰だか分かるかい?」
裕子を背後から抱き締めるようにしながら、逞しく張り出したヒップの狭間に秘められた隠微な箇所を悪戯している男が、裕子に囁きかけるようにする。裕子は排泄器官を嬲られるおぞましさとともに、男の正体になんとも不安なものを感じ、背筋に悪寒が走るのだ。
「俺は佐藤っていうんだ。奥さんから自治会の副会長を引き継いだ佐藤文子の亭主さ」
「な、何ですって!」
裕子の表情に驚愕が走る。
「奥さんの娘のケツの穴を悪戯しているのは瀬尾さんっていってな、瀬尾良江の旦那だよ。2人とも奥さんには随分世話になった、って言っていたぜ」
里佳子の幼い尻をいたぶっている瀬尾がニヤリと笑みを浮かべ、裕子に頷きかける。
「俺の息子の新也や瀬尾さんのところの正明も、そこのお姉ちゃんに世話になっているそうじゃないか。えらく挨拶が遅れてしまってすまなかったな」
佐藤はそう言うと、人差し指の先を裕子の菊花の中央にすっと指し入れる。
「あっ! やっ、やめてっ」
裕子はあまりのおぞましさに激しく身悶えし、佐藤の指先を振り払おうとするが、思わぬ馬鹿力に押さえ込まれて抵抗もままならない。
「どうしたんだい、奥さん。あんまりつれなくするなよ。黒田さんや脇坂さんたちとは随分仲良くしているそうじゃないか。俺も仲間に入れてくれよ」
「や、やめてっ。佐藤さんっ。あなたまでがこんなことをっ!」
佐藤の息子の新也は手のつけられない不良ではあるが、A工業高校野球部の主将であり、妻の文子は自治会の副会長である。
代々農家を営み、このあたりに大きな地所を有していた佐藤は、Aニュータウンの開発にあたって土地を売却、巨額の売却益を手にすることになった。もともと汗を流して働くことが好きではない佐藤は土地の売却で得た資金で3つの賃貸マンションを建設、その家賃収入で悠々自適の生活を送っている。
いわばAニュータウンの顔役とも言えるが、日々の暮らしは飲む、打つ、買うの三拍子が揃った自堕落そのものである。
「何をいまさら格好をつけてるんだ、ええ? 奥さんがどうしようもない露出狂の変態だってことは完全にばれてるんだぜ」
佐藤はそう言うと裕子の弾力のあるアヌスをやわやわと揉み上げる。
「奥さんがデカいオッパイを揺らして、ケツをプリプリ振りながら颯爽とジョギングする姿にはひそかに憧れていたんだぜ。うちの女房と年齢は変わらねえのにえれえ違いだってな」
「あっ、ああっ……」
佐藤は片手で裕子の肛門を揉み上げながら、空いた手で豊満な乳房をタプタプと揺らしている。
「しばらくジョギング姿を見かけねえと思っていたら、こんな朝早い時間に変えていたとはな。宵っ張りの俺は全然気が付かなかったぜ。それと女房の話だと駅前でバニーガールの格好をしてティッシュ配りをしていたそうじゃないか」
そう……そういうこともあった。あの時は羞恥に顔から火が出そうな思いをした裕子だったが、今や娘2人とともに素っ裸を公園の真ん中に並べ、衆人環視の前で金の鎖でクリトリスを引かれ、肛門を嬲られている。
こんな目にあったらもう元には戻れない。香織の言う通り自分は、いや、自分の家族はニュータウンの共有奴隷になってしまったのか。
「しかし、あの才女の誉れ高い小椋夫人がこんな露出狂だったとはな。貴美子が母親譲りの露出娘だってのも無理はないぜ」
「えっ!」
佐藤の言葉に裕子は激しい衝撃を受ける。
「ど、どういうことですかっ」
「どういうこともこういうことも、A工野球部のマネージャーになった奥さんの娘からうちの新也が聞いてきたことさ。おとくでは全員が家の中じゃ素っ裸で暮らしているそうじゃないか。宅配便配達のアルバイトや新聞の集金人にも、奥さんが素っ裸で応対したって聞いているぜ」
「ば、馬鹿な……誰がそんなことを……」
「亭主の仕事で外国暮らしをしている時に奥さんがつくったボーイフレンドがヌーディストで、一家そろって影響されたそうだな。奥さんと亭主は性教育の実践だと言って、娘たちの見ている前で色々な体位を見せるって話もあるぜ」
「そのせいで人前で素っ裸になることも平気になった娘たちを矯正するために、こんな風にショック療法を行っている、貴美子を野球部のマネージャーにして若い男の前にさらすようにしたのも治療のためだって聞いているぜ。貴美子はそれで野球部の部員たちに上半身裸のまま挨拶したそうじゃないか」
「そんな……」
裕子は呆然とした表情を隣の貴美子に向ける。貴美子は朽木に執拗なまでにアヌスを嬲られながら、冷酷な笑みを口元に浮かべた飯島にくい、くいと鎖を引かれ、細い喉から哀願と悲鳴を交互に絞り出している。

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