第109話 嗜虐の競艶(2)

「どう、あなたたちのママのストリップを見た感想は? すっかり堂に入ったものでしょう」
舞台の袖で香織と龍に挟まれて、母親の卑猥な踊りを見せつけられている貴美子と里佳子の姉妹は、自らの裸身を満座に晒す以上の羞恥と屈辱に肩を小刻みに震わせている。
貴美子は顔を隠すためのアイマスクを装着し、カンフーの衣装を身につけている。しかしそれは上衣のみであり、その下はノーブラ・ノーパンという頼りないものである。貴美子の引き締まった太腿はその付け根までほとんど丸出しの状態である。
一方、やはりアイマスクで顔を隠した里佳子はセーラー服を着せられているが、これは本物ではなくショーに使うための特製のもので、上着の生地はシースルーで、ピンクの艶っぽいブラジャーが透けており、スカートは極端に短くこれも激しく動くとブラとお揃いのピンクのパンティが丸見えになるほどである。
裕子の知性と教養、優雅さと厳しさ、そしてモデル顔負けの美貌とスタイルは貴美子と里佳子にとって、尊敬の対象であった。裕子に会った友人たちがため息のような賛嘆の声をあげるたびに、2人の娘の心の中は自慢に満たされたものである。
「尊敬する人物は?」という問いに、かつては真顔で母親の名をあげた貴美子と里佳子にとって、いまや裕子は堕ちた偶像であった。男たちの前で素っ裸のまま、見るに堪えない卑猥なダンスを演じながら恍惚とした表情を浮かべる中年女――2人の娘の心の中には、これまでの母親に対する尊敬心が大きかっただけその反動のような反発心が沸いてくるのだ。
しかし裕子が演じるストリップダンスの次の演目として、貴美子と里佳子のショーが控えているのだ。それを思うと美しい姉妹の伸びやかな二肢は羞恥と恐怖で細かく震え出すのだ。
ストリップダンスを終えた裕子は、拍手と歓声に送られていったん舞台を後にする。
「なかなかの熱演だったわよ」
舞台の袖にたどり着いた裕子のヒップを、香織がニヤリと笑ってパシンと叩く。
「あ、ありがとうございます」
裕子が卑屈な笑みを浮かべ、香織に頭を下げる。2人の娘を人質に取られているためのやむをえない媚態とは言え、貴美子と里佳子にとっては以前の母親の毅然とした態度との落差に失望を禁じ得ない。
自然に貴美子と里佳子の母親に対する視線は冷たいものとなる。2人の娘のそんな侮蔑交じりの眼差しを避けるように、裕子は身を屈めながら控え室に姿を消す。
「さ、次はお2人さんの登場よ。ママの熱演に負けちゃだめよ」
香織は薄笑いを浮かべながら貴美子と里佳子の若々しい尻を交互に叩く。母親の破廉恥な演技に嫌悪の表情を向けていた2人だったが、次は自分たちがそれ以上の恥辱に満ちた演技を披露しなければいけないのだと思うと、羞恥と恐怖に身体が震えるのを抑えることが出来ない。
早朝の露出ショーの後、貴美子と里佳子はすぐに引き離され、貴美子は香織の、里佳子は美樹の管理下におかれた。さらに里佳子の下校ととも今夜のショーの練習が開始されたことから、小椋家の姉妹はそれぞれがどのようなおぞましい運命に見舞われたかについて、ほとんど言葉を交わし合っていない。
しかしながら、朝の東中央公園で互いに晒しあった言語に絶する破廉恥な痴態から、それぞれがとても言葉に出せないほどの激烈かつ屈辱的な責めを受けたに違いないと感じている。また、互いを襲ったいまだ自分にとって未知の汚辱が待ち受けているかもしれないという恐怖感が、姉妹の抵抗の意志を極めて効果的に抑制しているのだった。
照明の落とされたステージで、姉妹によるショーに向けたセッティングが行われる。沢木が飯島に指示しながら、ステージに立てられた2本の柱のうち1本に、セーラー服姿の里佳子を縛り付ける。飯島とともにショーのエキストラを買って出た脇坂と赤沢が、準備運動のつもりかステージの上で体操を始めているのが滑稽である。
セッティングが終わり、いよいよショーの第2幕が切って落とされる。スピーカーから響き渡るピアノソロの悲しげなメロディとともに暗いステージの上の緊縛された里佳子の姿がスポットライトに照らされる。アイマスクで目許は覆っているものの、薄い生地から透けた素肌の新鮮な色気と、儚げな肢体から醸し出される妖しいまでの被虐美に店内を埋めた観客は思わず息を飲む。
もう一つのスポットライトが点灯し、カンフーの衣装姿の貴美子の姿が浮き上がる。音楽がブラスと電子楽器による勇壮なものに変わる。空手の型をとる貴美子の前に、飯島、脇坂、赤沢の3人が立ち塞がる。
次々に襲いかかる男たちに、貴美子が空手で応戦する。もちろん演技は寸止めで行われ、実際に3人の男たちが打撃を受けることはない。貴美子が奮闘するたびにカンフーの衣装の襟元から形の良い乳房がこぼれ落ち、足蹴りを見舞うとノーパンの尻が観客の前に晒される。
悪漢に拉致された妹を救いにきた空手使いの姉という設定のショーであることが観客の目に明らかである。貴美子が実際に空手の有段者であることがショーに迫力を与えており、美貌のヒロインが技を繰り出すたびに観客から歓声と拍手が沸き起こる。
「あっ……」
飯島が貴美子の背後から抱き着き、半ば剥き出しになった乳房を鷲掴みにした。事前の打ち合わせにない弄虐行為に動転した貴美子が見舞った肘打ちが飯島の鼻柱に炸裂する。
「ぐえっ!」
飯島は鼻を押さえてその場に膝をつく。迫力のある演技に観客からわっと笑い声が起こるが、床の上にポタポタと飯島の鼻血が落ちているのを見た香織は、龍に指示して飯島を治療のためいったん舞台脇に下がらせる。
(しまった……)
A工業高校野球部の顧問であり、自分の生殺与奪の権利を握っていると言える飯島に怪我をさせた貴美子は激しく動揺する。
「くそっ、やりやがったな!」
脇坂と赤沢は仲間の敵とばかり2人がかりで貴美子に襲いかかる。脇坂が後ろから貴美子を羽交い締めにすると赤沢が柔道着の帯をほどく。柔道着の前がバラリと開き、貴美子の裸身が半ば以上あらわになる。
「この牝犬っ!」
赤沢が貴美子の鳩尾にパンチを見舞う。ぐっ、とうめき声を上げて身体を折る貴美子。脇坂はそうはさせじと馬鹿力を発揮し、貴美子の身体を起こす。
「くらえっ!」
再び赤沢のパンチ。もちろん加減はされているが、それでも急所を拳で叩かれるたびに貴美子は、胃が裏返るような激烈な苦しみを知覚する。
「このアマっ!」
「ぐうっ!」
貴美子は赤沢の打撃に備えて鍛えられた腹筋を引き締めるのだが、それでも追いつかない。
非力な赤沢だが、自分のパンチで空手有段者が悶え苦しむのが楽しくてしょうがない。美女の腹を思う存分叩けるというのも滅多にない機会である。赤沢は当初打ち合わせの3度のパンチは終わったが、おまけとばかりに最後にやや強めのパンチを貴美子に見舞う。
「げ、げほっ!」
油断して腹筋を緩めていたところに襲った打撃。貴美子の美貌は苦痛に歪み、開いた口からは酸っぱい臭いの胃液がこぼれ落ちる。
抵抗の意志を失った貴美子からカンフーの衣装がはぎとられる。素っ裸の貴美子はステージ上の柱に里佳子と並んで縛り付けられる。
音楽がまた甘いゆったりとしたインストルメンタルに変わる。脇坂と赤沢は里佳子を縛っていた縄を解く。ステージ中央に引き立てられた里佳子はしばらくの間ためらっていたが、脇坂に催促されるようにセーラー服の可愛い尻を叩かれ、ゆっくりと服を脱ぎ出す。

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