第113話 嗜虐の競艶(6)

「何をぼんやりしているんだ。さっさと挨拶をしないか!」
赤沢に再び尻を叩かれ、裕子は震える唇を開く。
「み、皆さま……本日はスナック『かおり』にようこそいらっしゃいました……わ、私、当スナック専属のコンパニオン、お、小椋裕子と申します。よ、よろしくお願いいたします」
観客からわっと歓声と拍手が沸き起こる。文子ほかの4人の女たちも口元に嘲笑を浮かべながら手を叩き出す。
「ね、年齢は42歳と少々トウがたっておりますが、せ、セックスの技巧につきましては少々自信がございます……じ、自慢は人一倍大きく感度抜群のク、クリトリスでございます。後ほど皆さまでじっくりとお確かめください。で、では本日は皆様には初のお目見えとなります私の2人の娘をご紹介致します」
裕子はやや斜め後ろに立つ貴美子と里佳子をちらと振り返る。
「マゾで淫乱、そして露出症の母親から生まれ、その母親に育てられましたことで、ふ、二人とも母親に劣らぬい、淫乱娘に育ちました。ま、まず姉の方から紹介致します。お、小椋貴美子です。皆様、拍手をもってお迎えください」
裕子の言葉を受けて観客から再び拍手と歓声が沸き起こる。貴美子は熱病にかかったようにふらふらと前に進み出て、母親と並んで立つ。
「小椋裕子の娘で小椋家の長女、貴美子と申します。年齢は19歳、け、慶応大学の1年生でございます」
貴美子は母親と同様に両手を頭の後ろに回し、両肢を大きく開き、俯けていた顔を上げる。
貴美子のクリトリスは完全に包皮を弾けさせ、ピンクパールのような新鮮な姿をはっきりと現している。根元に金色のリングをあしらったそれは、まるで陰部に宝石を装飾したような趣きまであり、見るものの目を存分に楽しませるのだった。
「た、ただ今皆様がお聞きになりました通り、い、淫乱女の淫乱マンコからひりだされた貴美子はこのように、ろ、露出症の変態娘に育ちました」
貴美子はそこで横目でちらりと母親の方を見る。その目に侮蔑の色が混じっているのを敏感に察知した裕子は、情欲に満ちた観客の視線以上にそれを辛く感じるのだ。
「ほ、本日は皆様には初のお目見えになりますが、は、淫売の母親ともどもよろしくお引き立てのほど、お願い致します」
喜美子はそう言うと観客の視線を全身で受け止めるように静かに目を閉じ、裸身を心持ち弓なりにそらせるのだった。
そんな貴美子の様子に痛ましげな目を向けていた裕子は、赤沢の咳払いにせきたてられ、おずおずと口を開く。
「つ、次に妹の方をご紹介致します。小椋里佳子でございます。皆様、拍手をもってお迎えください」
里佳子が唇をぐっと噛み、母親の隣に進み出る。先程の貴美子の時と劣らぬ盛大な拍手と歓声が観客から沸き起こる。
「り、里佳子については特に申し上げたいことがございます。里佳子は淫売の私が丹精を込めて、母親の私や姉の貴美子に劣らぬ淫乱女になるよう育て上げましたので、は、早くもレズビアンの悦びとお尻の快楽を覚えるような変態娘になりました」
逆らえば貴美子は裕子とともに吉原のソープに勤めさせられ、里佳子はその痴態を収めた写真やビデオがロリコン相手のいわゆるブルセラショップで売られることになると脅され、血を吐くような思いで娘を貶める科白を吐かされる裕子だが、あまりの屈辱にさすがに声を詰まらせる。
「何をしてるんだ、続きを言わないか」
「は、はい……」
赤沢に尻を叩かれ、再び裕子は口を開く。
「し、しかし、皆さまに申し上げたいことは、り、里佳子がその生まれながらの淫乱さにもかかわらず、い、いまだに処女だということです」
観客の中から軽いどよめきが沸き起こる。一際声が高かった方に目を向けた裕子は、そこに見覚えのある顔があることに愕然とした。
それは東中の国語教師で里佳子の担任、桑田の脂ぎった顔であった。
桑田はなぜか3年の学年主任を勤めているが、生徒の父兄、特に女生徒の母親の仲では極めて評判が悪い。
スキンシップと称して教え子の尻や胸のあたりを撫でるのは序の口で、体育の授業前の着替えの最中に間違えた振りをして教室の扉を開けたり、点検の名目で女子トイレに入ったりすることも度々である。
極め付けは先日行われた修学旅行で、桑田はなんと酒に酔ったあげく、気分が悪くなって別室で休んでいる女生徒の布団の中に侵入し、抱きついたのである。激しいショックを受けたその女生徒は旅行を中断し、帰宅したのである。
さすがにこの時はPTAでも問題になり、会長の裕子は桑田に詰め寄り説明を求めた。しかし桑田はのらりくらりと逃げるばかりで、結局自らの責任を認めることはなかった。
そんな問題教師が放置されているのは、桑田が担当している国語の教育技術においてはかなり優秀であり、新設の東中が模擬試験の結果でも平均をかなり上回る成績を上げて来たからである。桑田以外の国語担当者は若手ばかりで、もし桑田がいなくなれば後を埋めることの出来るものは見当たらなかった。
桑田は自身が国語教師ということもあり、大学の国語講師である裕子にコンプレックス混じりの激しい対抗意識を抱いている。従ってクラスの懇談会や里佳子を交えた三者面談でも桑田が一々裕子の発言に突っ掛かり、気の強い裕子も負けておらず応戦するため、雰囲気は最悪であった。
その桑田がボックス席で、隣にいる小塚美樹となにやらひそひそ話しながらこちらを見ているのだ。裕子は暗い予感を覚えて思わず裸身を震わせる。
「ぼんやりしていないで続けるんだ」
赤沢に尻を叩かれ、裕子は口を開く。
「そ、それでは皆様、再び拍手をもってお迎えください」
脇坂に背中を突かれて里佳子は一歩前に出る。羞恥と屈辱、恐怖と陶酔めいた露出の快感の極限状態にある里佳子はボックス席にいる担任教師も目に入らないようだ。
「小椋裕子の娘で小椋家の次女、里佳子でございます。年齢は14歳。ひ、東中学の3年生でございます」
観客の中から再びどよめきが沸き起こる。朝のジョギングに参加していた人間は里佳子が自慰行為の果てに自分の名前と年齢は、通う中学の名前まで口にしながら崩壊したのを聞いていたが、今夜初めて「かおり」で里佳子を見て、その早熟した乳房の膨らみや身体の丸みなどから、いまだ中学生だということを聞いて驚く客も多いのだ。

「さ、先にご挨拶申し上げました姉と同様、淫乱女の淫乱マ、マンコからひりだされた里佳子はこ、このように、は、露出症の変態娘に育ちました」
そこで里佳子は先程の貴美子同様、裕子の方に恨めしげな視線を向ける。自分がこのような淫らな地獄にたたき込まれ、呻吟の日々を送らざるを得なくなったのは母のせいではないのか。里佳子は裕子によって振われた鞭の痛みを思い出し、やりばのない怒りをひたすら母に向けることで解消を図っているのだ。
「り、里佳子も本日は皆様には初のお目見えになりますが、淫売の母親、変態娘の姉ともどもよろしくお引き立てのほど、お願い致します」
雪白の肌の美少女はそう言うと伸びやかな肢体を弓なりに反らし、実の母親によって剃り上げられた恥丘を誇張するように突き出す。
年端も行かぬ少女をこのようなポルノショーに出演させて良いのだろうか。それを金を払って見に来ている自分たちは罪に問われないのかといった疑問と不安が観客たちの心の中に沸き起こっていた。しかし羞恥のあまり全身を薔薇色に染めている里佳子の姿を眺めているうちに観客たちの頭の中は、現実的な懸念は拭い去られ、変わりにどす黒い淫情によって覆われて行くのだ。

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