第119話 絶望への道程(2)

隣のボックスではやはり里佳子が、男達によって力づくでショーを見せつけられている。里佳子の表情ははっきりとは見えないが、間違いなく羞恥と屈辱、そして貴美子と同様に耐え難いほどの嫌悪感が浮かべていることだろう。自分が懸命に守って来た家族が崩壊する最悪の瞬間が近づいてきたという予感に、裕子はガタガタと裸身を震わせる。
しのぶはがに股のポーズを取り、ゆっくりと男の上に身を沈ませる。サイズは小さいが十分に勃起した肉棒の先端を探るように腰を前後に動かしたしのぶは、男の亀頭を弾力のある肉襞の間に包み込みながら、一気に腰を下ろす。
「おおっ!」
しのぶの中に吸い込まれた男の情けない声が店内に響き、観客の失笑が湧き起こる。しのぶは猛烈な勢いで豊満な臀部を上下させ、男の肉棒はしのぶの熟した膣内で翻弄される。
しのぶは次にさらに深く腰を下ろすと、接合させたままの尻を前後左右にグラインドさせる。そして真ん中の位置でぴたりと止めると、今度は「ううっ!」という掛け声と共に男の肉塊を思い切り締め上げる。
「あっ、ああっ!」
吉原のソープで仕込まれたしのぶの玄人じみた技巧に観客は舌を巻く。裕子もしのぶのそんな大胆な行為に気圧されたような気持ちになっている。
「ううっ……そ、そんなに気持ち良いの? あなた……あ、ああっ……」
しのぶが甘い声をかけながらリズミカルに男を締めつけると、男はガクガクと首を上下させる。
「気持ち良いのなら、気持ち良いと言って……」
「き、気持ち良い……」
男の声に店内から再び笑いが沸き上がる。
「そりゃあ気持ち良いだろうな。あんな風に責められちゃあ、男はたまらないぜ」
「まったく、あのマゾ男がうらやましいよ」
脇坂が里佳子の太腿を撫でながら笑うと、赤沢も幼い乳房を揉み上げながら応じる。
「そういえば確か黒田さんはしのぶを吉原で抱いたそうだ」
「そりゃあうまくやりましたな。俺もしのぶの泡踊りをぜひ見たかった」
「そういえば、今夜は黒田さんの姿が見えないな」
脇坂がそう言いながら店内を見回す。黒田といつもつるんでいる沢木はカウンターの中で俄かバーテンに変身している。「かおり」の常連客である黒田も今日は裏方に回っているのかと思ったら、そんな気配もなさそうだ。
「吉原でしのぶとやり過ぎて、腰でも痛めたんじゃないですか」
「まさか……」
脇坂は笑いながら水割りを飲み干すと、空いたグラスを里佳子に押し付ける。
「ほら、お代わりだ。さっさとしないか」
「は、はい……」
里佳子はグラスを受け取るとウィスキーのボトルを手に持ち、慎重に注ぎこむ。
「いいかげんに俺の好みを覚えろよ。間違えたらまたお尻叩きだぞ」
「そ、それは……」
里佳子は脅えたように裸身を震わせる。その時ステージから男の「あ、愛してるよっ、しのぶっ」という切羽詰まったような声が聞こえたので、里佳子はびくっと肩を震わせ、ステージに目を向ける。
(今の声は……)
里佳子は恐ろしい疑念が浮かんでくるのを打ち消そうと、懸命に頭を振る。
「何を振り子みたいに頭を振っているんだ。水割りはまだか」
脇坂に催促されて里佳子ははっと頭を上げる。脇坂の顔に苛立ちではなく、残酷な好奇心が浮かんでいるのを目にした里佳子に疑念は確信に変わる。
(なんてこと……)
里佳子はかろうじて脇坂に水割りのグラスを渡すと、絶望と衝撃のあまり気が遠くなる。ふらふらとその場に崩れ落ちそうになる里佳子の身体を赤沢が受け止める。
「おっと、気を失ってもらったら困るな。決定的な瞬間を見てもらわないと」
赤沢がニヤリと笑って里佳子の尻の肉を抓り上げる。はっと気が付いた里佳子は無意識のうちにステージに目をやるが、嬌声を上げ合っているしのぶと男の姿に、見てはならないものを目にしたように顔を背けさせる。
「しっかり見ないとまたケツを叩くぞ」
「あ、ああっ……」
ピンク色の乳首をひねり上げられ、里佳子は激痛に涙を滲ませながらステージに目を向ける。
隣のボックスで2人のレズビアン教師の嬲り物になっている貴美子も、里佳子同様に男の声を耳にしてある恐ろしい想像に行き当たり、恐怖と驚愕に目を見開き、身体を震わせている。
「どうしたの、貴美子。こんなに震えちゃって」
「実演ショーを見てそんなに興奮したの? 案外純情なのね」
事情を知らない長岡と酒田はそんなことを言いながら笑い合っている。
「ところであの踊り子は身体も奇麗だし、実演もなかなか堂に入ってるけど、男の方がなんとも見栄えがしないわね」
酒田がステージを眺めながらそう言うと、長岡が不審気に口を挟む。
「あら、順子。あなた、随分見慣れているって感じじゃない。レズの癖に男と女の実演ショーに興味があるの?」
「それは……ただの好奇心よ。女同士の実演は滅多にないし、レズのプレイの参考にもなるでしょう」
「ふーん」
長岡は一応納得したと言うふうにうなずく。
長岡はもっぱらレズ専門だが、酒田は男が駄目という訳ではない。どちらかというとむしろ男の方が好きなくらいである。でっぷり太ったその容姿から男に敬遠されたことからレズに走ったというのが近い。
「私達、温泉のストリップショーでこの手のショーは見たことがありますわ。おっしゃる通り女はそんなショーに出る踊り子よりはるかに上だけれど、男の方がなんともぱっとしないわね」
向かいに座って裕子を嬲っている文子が、女教師たちに声をかける。
「ねえ、良江さん。この前の自治会の役員会の旅行で、一緒にストリップ小屋に入ったじゃない」
「そうそう、あの時のショーは見ごたえがあったわ。ああいうところに出演する男優はやっぱり立派なものを持っているわ。一緒に行った男の役員も感心していたもの」
文子と良江はそんなことを言い合い、キャッキャッと笑い合う。
「でも、男達はやっぱり助平ね。誘ったら全員ついてきたわ。前の副会長はお堅かったから、ストリップ見物なんてありえなかったけど、今度の副会長は話が分かるって喜んでいたわ」
文子はそう言うと、裕子の豊かな乳房をぐいと握り締める。
「そのお堅い副会長が、いまや裸ホステスとはね。世の中変われば変わるもんだわ」
文子がそう言って笑うと、良江が裕子の股間に手を伸ばし、リングに締め付けられたクリトリスを撫でさする。
「そのお堅い大学講師様から、ショーの感想をぜひ聞かせていただきたいものだわ」
「あ、ああっ……」
最も敏感な箇所を巧みに愛撫され、裕子はたちまち電流に触れたような快感を知覚し、なよなよと身悶える。
「どうなの? 裕子。あの男のおチンチン。今まで50本以上も食べたんでしょう? その中では大きい方、小さい方?」

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