第126話 絶望への道程(9)

「どうして興奮したの? 言いなさい、留美」
「健一さんと香奈が……苛められる姿を見て興奮しました」
「なんだって? 聞こえないわ。もっと大きな声で」
「健一さんと、香奈が、苛められる姿を見て興奮したのっ」
留美が自棄になったようにそう言うと、史織はにやりと笑みを漏らす。
「あと3分」
香織が非情に時間の経過を告げる。
「が、頑張るのよっ、健一っ、香奈っ。負けたら私たち、素っ裸でジョギングしなければならないのよっ」
脳乱の極にあるしのぶはそんなことを口走る。早朝ジョギングの経験があるのはしのぶの他は裕子と貴美子、いずれも小椋家の人間である。今朝はジョギングの終着点である東公園で健一も素っ裸で引き出され、恥ずかしいオナニーショーを強制されたが、自分たちがそんな惨めな姿を晒したのは街の一部の人間に過ぎない。
(自分が恥を晒すのはもう仕方がない、せめて健一と香奈は守らないと……)
いまだ中学生の健一と香奈が素っ裸で街中を走ることになれば、取り返しがつかないことになってしまう。世の汚れを知らない香奈などは自殺してしまうのではないか。しのぶは歯を食い縛って裕子の攻撃を耐え抜こうと決意するとともに、健一と香奈を必死で励ますのだ。
しかし、小椋家の3人にとっても事情は同じである。早朝の公園や「かおり」の店内などで一部の人間に恥を晒すのと、公道で全裸ジョギングをするのとでは大きな違いがある。
(自分はもうどうなってもいい……貴美子と里佳子にこれ以上の恥をかかせるわけにはいかない)
責める裕子も必死なら受けるしのぶもまた必死である。しのぶがギリギリのところで裕子の攻撃をしのいでいるところで、「あと2分」と香織が残り時間を告げた。裕子の表情にはっきりと焦りの色が見える。
(これなら何とか耐えられるかも……ああ、早く時間が経って……)
(このままじゃあ逃げ切られてしまう……なんとか追い込まなくては……)
しのぶと裕子の思いが交錯しあう。切羽詰った裕子は指先をしのぶの果汁でたっぷり濡らすと、ふっくらした双臀の狭間に秘められた菊の蕾をまさぐる。
「ああっ! だ、駄目っ!」
途端にしのぶは甲高い悲鳴を上げて、腰部を激しくくねらせる。
「おとなしくするのよっ!」
裕子はむずがる子供を叱るように、しのぶの形の良いヒップをぴしゃりと平手打ちする。
「あっ! あっ! ゆ、裕子さんっ! 許してっ」
「思ったとおり、こちらが感じるみたいね」
裕子は勝ち誇ったような笑みを浮かべてそういうと、「貴美子、里佳子、健一君と香奈ちゃんのお尻を責めるのよっ」と2人の娘に声をかける。
里佳子は一瞬ためらうが、裕子が「早くしなさいっ」と再び声をかけると思わずうなずき、白魚のような指を美少女の股間にくぐらせる。
「あ、あっ、な、何をするのっ」
思いがけぬ箇所を攻められ、うろたえる香奈は涙声を上げる。里佳子は心を鬼にして美樹から仕込まれた淫靡なレズビアンの技を駆使しつつ可憐な美少女を攻め立てるのだ。
「許してっ、香奈ちゃん。こうしないと私たちがっ」
「あっ、あっ、そ、そんなっ、ひどいわっ」
貴美子も母親に倣うように、健一の肛門に指をはわせる。誠一によってすっかり開発されている健一のその部分は貴美子の責めにたちまち反応し、微妙な緊縮力さえ発揮し始める。
「健一君ったら、いけない子ね。お尻の悦びをすっかり知っているのね」
貴美子はそう言って笑うと、両手で健一の前後の急所を責め立てる。
「あ、あっ、お姉さんっ、僕っ、もうっ」
「イキそうなのね? イッていいわよっ」
「う、うっ、い、イクっ!」
健一は悲痛なうめき声を上げると、限界まで張り切った陰茎の先端から白い樹液を高々と噴き上げる。そんな兄の後を追うように香奈が「ああっ、も、もうっ」と断末魔の叫び声を上げ、幼い裸身をブルブルと震わせる。
「ほら、健一君と香奈ちゃんが仲良く気をやったわよ。子供たちにだけ恥をかかせておいて良いの? しのぶさん」
裕子はそんな言葉責めを交えながらしのぶを追い込む。絶頂寸前で必死に堪えていたしのぶだったが、禅門への刺激に加え、沢木によってすっかり開発された肛門の性感を同時にかき立てられ、ついに崩壊する。
「あっ、ああっ、く、口惜しいっ」
しのぶはそう叫ぶと妖艶な裸身をまるで電流に触れたようにブルブル震わせる。華麗なクライマックスの姿を相次いで晒す加藤家の美しい親子の姿に、「かおり」を埋め尽くした客はいっせいに拍手するのだった。
「うっ……ううっ……」
ステージの脇では香奈とほぼ同時に絶頂に達した留美が、史織に預けた身体をブルブル震わせていた。
「留美、これでもう私達の仲間ね……」
史織は口元に悪戯っぽい笑みを浮かべながら、幼い快感に震える留美の上気した顔を楽しげに眺めていた。

「かおり」での一夜の性の狂宴はようやく終了し、勝負に負けた加藤家のしのぶ、健一、香奈の三人はそのまま「かおり」で仮眠を取らされた後、黒田と沢木の指示の下で全裸ジョギングに出発することとなった。
ジョギングに伴走するのは赤沢、朽木といった常連に加えて佐藤、瀬尾、そしてその夜のショーから加わった新顔の客たちである。
東中の教師である桑田はさすがにジョギングへの参加は見送り、誠一とともに終点の東公園で一行を待つことになった。
一方、史織とともに香織のマンションで泊まった山崎留美も、誠一たちとは別に先行し、親友の香奈やその兄の健一が素っ裸のまま公園に走り込んでくるのを待つ。
裕子、貴美子、そして里佳子はようやく小椋家に戻された。しかし彼女たちは解放された訳ではなく、店の後始末を龍に任せた香織の他、佐藤文子、瀬尾良江、小塚美樹、そしてA工業高校の教師、長岡敦子と酒田順子の6人の女達が同行することとなった。
総勢9名の女がタクシーに分乗して小椋家に到着したのは午前3時頃である。
タクシーから降ろされた裕子、貴美子、里佳子の三人は素っ裸の上に薄いコートを羽織らされただけという惨めな姿であり、貴美子に至っては空手を使っての抵抗を警戒して、後ろ手に縛られている。
すっかり酔っ払った女達は深夜にもかかわらず家の前で嬌声を上げて騒ぎ立てる。
「さあ、裕子、懐かしのわが家に戻って来たわよ」
「もう今日はお腹が一杯かしら、オチンチンの食べ過ぎで」
「素っ裸でジョギングするところが見られなくて残念だわ」
小椋家の両隣の家に明かりが灯るのを見た裕子は慌てて香織に「こ、こんなところで騒がないでください。ご近所に何と思われるか」と哀願する。
「それじゃあ、早く家の鍵を開けなさい。中にいれないといつまでもここで騒ぐわよ」
「わ、わかりました」
裕子はコートのポケットに入れられた鍵を取り出し、玄関の扉を開ける。
(ああ……ついにわが家まで……)
悪鬼たちに明け渡してしまった――という思いが裕子の心を苛む。
家族の夢であったニュータウンの瀟洒な一戸建て、裕子が夫の道夫とともに築き上げた小椋家の城、家族の象徴とも言うべきわが家に淫鬼たちを招き入れることになるのだ。裕子の心は悲しみで押し潰されそうになる。

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