「これでいいかしら」
大幅に露出した香奈の太腿を留美はちらと眺めるが、すぐに「まだ長いと思うわ」と返事をする。
「……わかったわ」
香奈は再び調整するがそれでも留美のOKは出ない。ようやく留美が満足げにうなずいた時、香奈のスカートはほとんどパンティが見えそうなほどになっていた。
「こ、こんな格好で学校へ行けというの?」
「あら、私は何も強制していないわよ。香奈が自分の意志でスカートを短くしたの。私はただアドバイスをしただけ。誤解しないでね」
その時、後ろから「おはよう、留美」と声がする。
「おはよう、史織」
振り返った留美はにっこり笑い、香奈に視線を向ける。
「心配しなくてもお仲間が来たみたいだわ」
留美に倣い振り返った香奈は思わず言葉を失う。後ろから近づいて来たのは世良史織と小椋里佳子である。
里佳子は香奈と同様、いや、それ以上にスカートの裾をたくしあげ、生々しい太腿を露出させている。下級生である史織に命令され、そんな屈辱的な姿を強いられている里佳子の表情は今にもべそをかきそうに引きつっている。
足元は頼りなく、時折ふらついて史織に支えられている里佳子は赤く火照らせた顔を恥ずかしげにそらす。
(里佳子先輩……)
哀れな里佳子の姿を見た香奈は、昨夜の出来事が決して悪い夢などではなく、現実のものだということを改めて思い知る。
「一緒に行きましょう、良いわね?」
史織の言葉に香奈は引きつった表情でうなずく。里佳子と香奈は史織と留美に挟まれるようにして歩きだす。
「東中のミニスカコンビの誕生ね」
史織がそう言うと、留美が迎合的にくすくす笑う。
「里佳子先輩も香奈も奇麗な脚をしているんだから、見せびらかせてあげればいいじゃない」
「そうよ、堂々と胸を張って歩きなさいよ」
史織と留美はそんな風に言うと里佳子と香奈の尻をスカート越しにパシンと叩く。往来の真ん中で下級生やかつての親友から尻を叩かれる屈辱に2人の美少女はキリキリ歯を食い締めながら顔を上げる。
「里佳子先輩、は、恥ずかしい……」
「わ、私もよ。香奈ちゃん……」
里佳子の顔色が朱を染めたように赤く、足取りもどこかおぼつかないのは、昨夜大量に飲まされた赤ワインが身体の中に沈殿し、二日酔いの症状を示していることによる。
パンティも覗けそうな超ミニスカートに身を包んだ東中屈指の2人の美少女、里佳子と香奈は羞恥に身を焼かれる思いで歩き続ける。その姿に目を留めた登校の生徒たちが始めは遠巻きに、次には好奇心を露骨にして近寄り、4人のグループは徐々に大集団を成して行く。
里佳子と香奈は気が遠くなるような長い道程の果てに東中についた時点では、数十人の生徒の集団登校の中心にいたのだった。
裕子や里佳子とともにほとんど徹夜で香織たち6人の女達のなぶりものになった翌日から、貴美子にとっての地獄のような日々が始まった。奴隷マネージャーとしての本格的な勤務が開始されたのである。
「おはようございますっ!」
貴美子は飯島に命じられた通り朝6時には部室に出頭する。挨拶は常に直立不動、腹の底から絞り出すような大声で行わなければならない。
(うっ……)
里佳子同様、貴美子は昨夜の大量のワインによる不快な酔いが冷めていない。自らの大声が頭の中に響き、貴美子は激しい鈍痛に顔をしかめる。
服装は命じられた通り、臍まで見えそうなTシャツにホットパンツである。ブラジャーは許されておらず、下着は真っ赤なTバックパンティのみである。
飯島は早くも出勤してきており、木製のバットを手に持って金属パイプの椅子に座ったまま、貴美子の顔を見るなり「遅いっ、遅刻だっ!」と怒鳴りつける。
「で、でも……ちゃんと時間どおりに…」
貴美子が部室の時計を見上げると、それはすでに6時20分になっている。貴美子は愕然として声を失う。
「あっ……」
「20分も遅刻をしておいて何をいうっ」
「こ、この時計、進んでいます。まだ5時50分ですわっ」
貴美子が腕時計を見て飯島に抗議するが、スポーツ刈りの体育教師は「馬鹿野郎っ」と貴美子を怒鳴りつける。
「教師に口答えをするやつがあるかっ。根性を叩き直してやる。脚をしっかり開いて歯を食いしばれっ!」
「な、何を……」
貴美子は脅えて飯島を見上げる。
「口を閉じろっ。舌を噛むぞっ」
飯島は思い切り右手を振りかぶると貴美子の頬に一閃させる。
「ああっ!」
頭がくらくらするような痛みに貴美子は思わず身体をふらつかせる。そこに再び、逆方向から飯島の平手が飛ぶ。
「うぐっ!」
手加減して入るものの屈強な男性体育教師の平手打ちをまともに浴びた貴美子は、脳震盪を起こしそうな衝撃をぐっとこらえる。
「あ、ありがとうございましたっ!」
このようなあからさまな体罰とも言えぬ暴力に対しても、大声でお礼の言葉を口にしなければならない。さもなくば暴力は数倍になって返ってくるのである。
(私の空手を使えれば……こんな男など……)
飯島は確かに体格も良く力も強いが、仮に貴美子と1対1の勝負になれば打ち負かす自信がある。それは昨夜のショーで貴美子が無意識のうちに放った肘打ちが飯島の鼻柱に見事に決まったことからも裏付けられている。
無念そうな表情を見せる貴美子の心を読んだように、いまだ鼻を赤くしている飯島が口の端を醜く歪めて笑う。
「昨夜はよくも男の顔に傷を付けてくれたな、貴美子」
「あ、あれは……」
貴美子はつい今し方の強気もたちまち消えうせ、飯島の残忍そうな視線に脅えて唇を震わせる。
「練習が始まる前にたっぷりお礼をしてやるぜ」
飯島はバットを手に持つとゆっくり立ち上がる。
「す、すみません……あれは、決してわざとじゃないんです」
「うるさいっ!」
飯島は貴美子を怒鳴りつける。
「ケツを出せ」
「許して……お願いです」
「愚図愚図していると回数が増えるだけだ」
「ああ……」
貴美子はべそをかきそうな顔で飯島を見ていたが、やがて諦めたようにホットパンツとTバックパンティを降ろし、壁に手をついて形の良い尻を突き出す。
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