第139話 吹きすさぶ淫風(6)

「へえ、小椋さんと加藤さんが同性愛の恋人同士だって、信じられないわね。あなたたち、どう思う?」
裕子としのぶの不正行為を察知した自治会役員の文子や良江と、見過ごしていた昌子と美智恵たちには微妙な力の上下関係が生まれつつあった。文子が昌子や美智恵に訊ねる口調もややぞんざいなものになっている。
「い、いえ……」
「私たちも信じられませんわ」
昌子と美智恵は揃って首を振る。
「小椋さん、どうなの? あなた、加藤さんと恋人同士だったの?」
香織が裕子にたずねる。
「それとも、あの場にはだれか別の人がいたの?」
「い、いえ……」
裕子はあわてて首を振る。
「観客の殿方たち以外は、私達二人だけでした」
「それじゃあやっぱり、お二人はレズの恋人同士だったの?」
「そうです……」
裕子はためらいながらも小さくうなずく。
(どうしてあんなことを聞くのだろう)
奈美の頭の中にそんな疑問が湧くが、それを深く追求しようとするとたちまち思考がとりとめもなく拡散していく。先程からの妙な身体の火照りが奈美の集中力をすっかり奪っているのだ。
それだけでなく香織や文子が「バイセクシャル」とか「同性愛」とか「レズ」といったきわどい言葉を口にし、しのぶと裕子がそれをさも恥ずかしげに肯定するたびに、奈美の身体の火照りはいっそう激しくなり、思考はますますあやふやなものになって行くのだ。
隣の摩耶も苦しげな表情で指先で額を押さえている。その頬は紅潮しており首筋には汗の粒が浮かんでいるのを見ると、奈美と同様、あるいはそれ以上の異変が生じているようである。
「ふうん、レズの恋人同士だというのならわかるわ。誰が通るかもしれない集会室の裏で、素っ裸を男たちに見られただけで興奮するなんて、露出狂でもない限りあり得ないと思っていたのよ」
文子が意味ありげに笑うと、良江が追従笑いを浮かべる。
「あら、まさか。知性と教養に満ちた小椋会長と、お淑やかな加藤さんが露出狂なんてこと、あるはずがないじゃない。そうよね、小椋さん?」
「は、はい……」
裕子は消え入りそうな声で頷く。
「お二人とも、自分の裸を見られるからじゃなくて、レズの恋人の裸を見たら興奮するのでしょう? それで男たちに見られていてもあんな恥ずかしいことができたのよね」
「は、はい……おっしゃるとおりですわ」
露出狂の烙印を押されるのとレズビアンと決めつけられるのではどちらがましなのだろうと裕子はぼんやり考える。しかし、確実に言えるのはこの場で香織や文子の意に沿わない返事をすれば、貴美子や里佳子、憲一や香奈にまで累が及ぶということである。いずれにしても裕子には、香織たちに阿るような答えをするしかないのだ。
「それじゃあちょっと証拠を見せてよ。そうね──お二人でキスをしてもらえない?」
「ええっ?」
「そ、そんなっ」
文子の言葉にしのぶと裕子はさすがに一瞬悲痛な表情を見せる。総務の岡部摩耶が見かねて声を上げる。
「そんなことをする必要があるの? 今はPTA執行部の会議中でしょう。時と場合をわきまえるべきだわ」
「あら、時と場合はわきまえているわよ。十分必要なことだわ」
香織が冷たい笑みを浮かべながら口を挟む。
「PTA執行部としては小椋会長と加藤さんの不正行為を公にはせず、内々に処理することに決めたのでしょう? それなら小椋会長と加藤さんがやってことをきちんと把握しておく必要があるわ。特に売春行為の勧誘にかかわることは詳細まですべて知っておかないと、後で警察沙汰にもなりかねないのよ」
香織にそう決めつけられると摩耶は口をつぐまざるを得ない。
「助平心を出してお2人の誘いに乗った男たちが自分からわざわざ名乗り出るとは思えないけれど、今後このようなことが絶対に起きないように。この際事実関係をきちんと検証する必要があるわ。執行部の役員なら当然のことでしょう?」
「そ、そうだけど……」
口ごもる摩耶の身体に突然痺れるような感覚が走り、思わずテーブルに手のひらをつく。
「どうしたの? 岡部さん」
「い、いえ……何でもないわ」
摩耶は必死で身体を起こし、心配げな顔を向けている春美に答える。
香織の言っていることは何かおかしい。摩耶はそう思うのだがさっきからなぜか身体が火照ったようになり、思考も一向にまとまらない。
「いいわね、池谷さん、長山さん」
夢を見るような目付きになっていた副会長の昌子と書記の美智恵は、いきなり香織に声をかけられ慌てて「え、ええ……」と頷く。
「中城さんと福山さんはいいかしら?」
「もちろんかまわないわ」
監査の圭子と会計の春美は余裕のある笑みを浮かべる。
「岡部さんと山崎さんもいいわね?」
「い、いいわ……」
摩耶と奈美もその場の雰囲気に飲まれ、こくりと頷く。香織は満足げな笑みを浮かべると、裕子としのぶに向かって「始めるのよ」と命じる。2人は困惑の表情を浮かべたがやがて諦めたように顔を伏せ、「わかりました」と頷く。

それから30分後、37歳と42歳の美しい人妻はPTAの集会場の真ん中でパンティ一枚の半裸の姿で、全身に観客の視線を浴びながら熱い接吻を交わし合っていた。
身長160センチ強のしのぶは乳房は幾分小ぶりだが、双臀は逞しささえ感じさせるほど大きく、かつ形の崩れもなくプリンとした感じで突き出している。一方、170センチを超える長身の裕子は巨乳といってよい豊かな乳房の持ち主である。さすがに年齢のせいかその豊乳はやや垂れているが、ふくよかなそれを見た男は触れずにいられないような魅力を感じさせる。
「あ、ああ……」
「うふん……」
互いの乳房が押し付けられ、ゴムまりのようにぶるぶると揺れる。裕子としのぶは時折むっちりと肉の実った太腿を相手の太腿の間に差し入れ、パンティに覆われた股間をくすぐるように動かし、熱い吐息を交し合っているのだ。
裕子としのぶはPTA執行部の女達の前で何度もキスを演じさせられたあげく、ベアトップのカットソーとスカートを脱がされ、本格的なレズビアン行為に移行させられていたのである。
2人の美しい人妻は、レズを演じさせられるのはこれが初めてではないが、筋金入りの同性愛者である美樹に調教されている里佳子や、敦子と順子というレズ教師コンビに責められている貴美子に比べると経験は浅い。しかしながら初めのうちはぎこちなかった2人も、甘い被虐性の快感に浸りながら強いられた演技を続けていくうちに、徐々に激しさと懸命さを発揮し始める。

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