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第152話 牝獣たちの狂宴(9)

昌子と美智恵が衝撃を受けたのは、その淫らな踊りだけでなく、素っ裸のまま軍国主義礼賛の歌を大声で歌う裕子の姿である。PTA会長として日頃から苛めや暴力に対する反対の姿勢を貫いてきた裕子が、その思想の対極にある軍歌を大声で歌い、それに合わせて女の象徴を振りたてる。それは昌子たちの偶像が無残にも打ち砕かれた瞬間だった。

戦争(いくさ)する身は かねてから
捨てる覚悟で いるものを
鳴いてくれるな 草の虫
東洋平和の ためならば
なんの命が 惜しかろう

(ああ……なんてこと……)
自分のあまりの情けなさに裕子の目尻から口惜し涙が一筋、二筋と流れ落ちる。もとは親友であるしのぶの態度を不審に思ったことから、彼女がアルバイトをしている勤めている「かおり」の様子を夫の道夫に見に行ってもらったことがきっかけである。
そこで一服盛られた夫がしのぶとの観客の前で実演ショーを演じさせられ、さらに呼び出された自分が「しのぶ」酔客たちに輪姦された。その様子を撮影されただけでなく夫と自分の携帯を押さえられたのだ。
そこからはまさに坂道を転がるような転落振りだった。自分だけならまだしも、娘の貴美子と里佳子にもそれぞれ別の罠が伸び、貴美子は龍によってA工業高校野球部の奴隷マネージャーに、里佳子は東中の女教師小塚美樹のレズビアン奴隷に落とされた。
そして今は、同じPTA執行部のメンバーであり、会長である自分を守り立ててくれた仲間たちが次々に悪鬼たちの餌食になっているのだ。
裕子が何度か演じるうちに、昌子と美智恵も見よう見まねでその軍歌を歌いながら瓶釣り踊りを演じ始める。どうにか一番を覚え歌うことができるようになったのを確認した香織は、再び3人の美熟女を前向き並べ、リズムを合致させるべく調教の手を強める。
「勝って来るぞと、勇ましく!」
東中PTAの三役が大声で軍歌を歌いながら、言語を絶する卑猥な芸を演じるその姿を、脇坂が自慢のビデオカメラで収めて行く。
「これは傑作だわ。今度、自治会の老人会の余興でやらせてみようかしら。年寄りたちが大喜びするわよ」
文子がケラケラ笑いながら3人の滑稽なまでに淫らな芸を眺めている。
「そうね、うちの老人会は大正生まれの旧軍人たちがまだ何人もピンピンしているから、きっと大喜びするわよ」
良江が文子と調子を合わせて嘲笑を浮かべる。
「爺さんたち、喜び過ぎて腰を抜かすんじゃねえか」
「それくらいですむといいけどね。だけど、それはそれで幸せじゃないの」
脇坂と文子が笑い合っていると手に桝を持った黒田が近寄って来る。
「あら、黒田さん。本当に摩耶のお尻で暖めたお酒を飲んでいるの?」
良江が目を丸くして黒田に尋ねる。
「当たり前やないか。何も腸の中に直接入れていた訳やないんやから、奇麗なもんや」
「ちょうど人肌に暖まって、なかなか乙な味だぜ」
赤沢も手に持った桝から酒をすすり、ニヤリと笑う。
文子と良江が振り向くと、岡部摩耶は沢木に尻をぴしゃぴしゃたたかれながら脂汗を流し、肛門から沢木が手に持った桝に向かって酒を迸らせている。
「なかなかうまくなったじゃない。あれも何かの余興に使えるかしら」
文子が裕子たちに劣らないほど卑猥で滑稽な摩耶の様子に、思わず噴き出す。
「そうね、今夜店でサーバー代わりに使おうかしら」
香織がそれを聞いて冷たい微笑を浮かべる。
視線を転じると、加藤しのぶと山崎奈美が素っ裸のまま後ろ手に縛り上げられ、和式トイレに座るようなスタイルで向かい合い、互いに女の羞恥の部分をさらしながら、朽木によって「めんどり」の特訓をつけられている。
ゆで卵を秘奥に含んでめんどりの鳴き声を真似ながら産み落とすという、しのぶが仕込まれた珍芸の中では比較的簡単なものだが、奈美にとっては初めての経験である。奈美は2人の娘を持つ経産婦だが、それでも繊細な箇所に朽木から卵を押し付けられると鋭い痛みが走り、思わず悲鳴を上げるのだ。
それまで摩耶をいたぶっていた圭子と春美が、酒の桝を片手に哀れな2羽のめんどりに近寄る。
「だらしないわね、まったく。卵の一つや二つ呑み込めなくてどうするのよ」
「あんまりてこずるようだと、有美ちゃんや留美ちゃんにやらせるわよ。若い娘の方が飲み込みが早いんじゃないの」
圭子と春美はそういってケラケラ笑うと、奈美の丸く形の良い尻をピシャピシャと叩くのだ。
「少し身体をほぐしてやりましょうよ」
圭子が奈美の背後に回り、背中から手を回して奈美の形の良い乳房を揉み始める。
「あっ、あっ……や、やめてっ……」
いきなり同性に愛撫された奈美はうろたえて圭子の手を振り払おうとする。
「おとなしくするのよ、山崎さん。ほら、加藤さんなんか気持ち良さそうにしているでしょう」
圭子の声に奈美は、正面に座るしのぶもまた春美から同様のいたぶりを受けて悶え始めているのを見る。
(加藤さん……)
春美に柔らかい乳房を揉み立てられ、切なげな吐息を吐いているしのぶを目にした奈美の身体から力が抜けていく。
「ほーら、美味しそうに呑み込んでいくわ」
圭子の声にはっと気づくと、奈美は自らの体内にゆで卵を既に半分ほども呑み込まされているのに気づく。
「ああっ」
そんな自分に驚いている間もなく、最も直径の大きな部分が膣口を通過すると、卵はするりと奈美の中に呑み込まれていくのだ。
「うっ、ううっ……」
奈美は秘奥で卵を呑み込まされるという極限の羞恥の中で、そこにまるで巨大なペニスを挿入されたような快感を知覚し、思わず裸身を捩らせるのだ。
「や、山崎さん、見ていて」
一足早く卵を呑み込んでいるしのぶが、奈美に声をかける。
「めんどりの芸とは、こういう風にやるのよ。山崎さんもしっかり覚えて」
そう言うとしのぶは双臀を慌ただしく左右に振りながら、「コココ、コケッコ!」と鶏の鳴き真似をするのだ。
その様子を見物していた朽木、圭子、そして春美からどっと笑い声が沸き上がる。
「これは傑作だわ」
文子や良江たちと同様、ニュータウンの先住民である圭子と春美には奈美と同様東中の3年と1年に通う男の子がいる。兄弟の両方でしのぶの息子の健一と香奈、そして奈美の娘の有美と留美たちと接点がある訳である。
圭子と春美の息子たちは小学校のころは比較的成績の良い方だったが、ニュータウンにある東中に通うようになってからは、生活水準が高く教育熱心なしのぶや奈美たちのような新しい住民の子弟にたちまち追い抜かれたのである。
子供の成績が母親の人間的な価値に反映されるような感覚を持っている圭子と春美は、小椋裕子に代表される新住民に潜在的な反感を持っている。

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