第171話 幼い贄(1)

そんな裕子が、東中きっての美少女であり成績優秀でも知られる娘の里佳子から侮蔑の言葉を浴びせられ、ステージの片隅で気弱に肩を震わせている。昌子たちはそんな裕子の変貌が信じられない思いであった。
昌子たちにとって何よりも衝撃だったのは、裕子や里佳子それぞれが堕とされていくことよりも、「小椋家」という家族そのものが香織たちの手によって崩壊させられる様子をまざまざと見せつけられることだった。自分一人が牝奴隷の地位に堕とされることはまだ我慢できる。しかし彼女たちにとって掛け替えの無い存在である子供たちがともに性の奴隷にされ、愛情と信頼に満ちた家族の関係を粉々に砕かれることは耐え難いことだった。
しかし、香織の最終的なねらい、加藤家と小椋家の被虐の着地点がその平和で穏やかな家族関係の崩壊にあることに気づいた昌子たちは、恐怖にガクガクと身体を震わせるのだった。
続いてスポットライトはしのぶ、健一、香奈の母子を照らし出す。赤いボンデージ衣装に身を包んだしのぶが、氷のように冷静な声音で話し始める。
「皆様、私、当スナック『かおり』専属の牝奴隷、A級奴隷の彩香こと加藤しのぶでございます。本日はお忙しい中、私の息子の健一と娘の香奈がそれぞれその童貞と処女を喪失するショーにお運びいただき、誠に有り難うございます」
昌子たちはしのぶが奴隷の中では唯一の「A級」であることに驚く。3つのランクを決めると香織が宣告し、B級とC級がいるのだからA級奴隷が存在するのは不思議ではないし、もっとも調教歴が長いしのぶがそうだというのも不思議なことではない。
しかし、PTAの役員会でも常に控えめで、常に会長の裕子を立てているしのぶのキャラクターと、時には調教師を兼ね、他の奴隷たちの指導にあたるというA級奴隷という格がどうにも似つかわしくないのだ。
「小椋裕子同様、いえ、それ以上の淫乱マゾの露出狂であるしのぶのマンコからヒリ出された息子の健一も、また娘の香奈も、兄妹そろって恥知らずの淫乱に育ちました。本日はそんなマゾ兄妹がそろってその童貞と処女を捧げ、感激に噎び泣く姿を、皆様ごゆっくり堪能ください」
再び観客が拍手し、口笛を鳴らす中、健一と香奈が続けて挨拶する。
「みなさま、た、ただ今ご紹介に預かりました加藤健一でございます」
「同じく、香奈でございます」
健一と香奈はそこまで口にすると耐えられなくなったのか、肩を震わせて嗚咽する。すかさずしのぶが手にした乗馬用の鞭で二人の肩をピシリッと打つ。
「ああっ」
健一は必死でこらえるが、香奈は鋭い痛みに悲鳴を上げる。
「しっかりしなさい! 里佳子はきちんと挨拶が出来たわよ。裕子や摩耶のようにC級奴隷に落とされてもいいのっ」
名をあげられた摩耶は驚きに、女体盛りにされた裸身をくねらせてステージを見る。
しのぶが再び健一と香奈を鞭で打つと、2人は声を震わせて挨拶を始める。
(これは教育や躾といったものの、醜悪なカリカチュアだわーー)
摩耶は朽木に箸の先で乳首を捻られながら、そんなことを考える。
おそらくはしのぶはこれまで子供たちに対して体罰など行ったことがないだろう。しかし、子供を育てていく中で、他の家族に対する競争心というのは自然に生じるし、時にはそれを口に出したりもする。そんな誰にでもあるような利己的な感情を、香織は舞台の上で増幅させて見せているのだ。
それにしても香織の、いわゆる平和な家庭に対する憎悪はすさまじい。それが香織の倒錯的な性欲や邪悪なまでに鋭い頭脳、行動力とあいまって加藤家、小椋家、そして自分を含む他の東中PTA役員の家庭を次々に崩壊に導いているのだ。いったい何が香織をそうさせているのか。
ようやく健一と香奈の屈辱的な挨拶が終了し、いよいよ処女・童貞喪失ショーが開始される。舞台の上の5人の奴隷たちは不安げな表情を隠せない。
スポットライトが消され、一瞬舞台の上は真っ暗になる。
「それではショーの開幕です。トップバッターは……」
香織のアナウンスに観客席の緊張と期待が高まる。再びスポットライトが照らされ、健一の身体が浮かび上がる。
「加藤健一です!」
観客がいっせいに拍手する。健一は指名された場合はそうせよと予め指示されていたのか、一歩前に進み出る。
「続いて健一の童貞を奪う栄誉を担うお相手ですが……」
香織の声に再び観客席が静まり返る。
舞台上の里佳子は恐怖と不安、そして緊張に押し潰されそうになりながらも、心臓をドキドキさせつつ香織の言葉を待っている。
(出来ることなら……私が……)
互いにいずれ辱めを受けなければならないのなら、自分は健一と結ばれたい。自分の初めてのものは健一に捧げたい。それが健一をこの地獄へと引き込んだ里佳子の償いの気持ちだったし、互いに好意を抱きあったものとしての自然な感情だった。
(いえ、他の女の人に渡すのは絶対に嫌ーー)
里佳子はそう思い直す。里佳子は美樹の部屋で並んで辛い調教を受けた健一に対して奴隷としての同士、いや、それ以上の感情を抱いていたのだ。恥ずかしい崩壊の姿を晒しあった里佳子と健一は、いわば疑似的なセックスを行ったようなものであった。
「……こちらの紹介はもう少し後にさせていただきます」
香織の思わせ振りな演出に観客席からため息と共に小さな笑いが漏れる。
「まずは昌子と美智恵、ステージの上にいらっしゃい」
いきなり指名された昌子と美智恵は驚愕に目を見開く。尻込みをしている2人の人妻に、しのぶの鋭い声が飛ぶ。
「近藤さん、長山さん。何をぐずぐずしているのっ。
早くステージに上がるのよっ」
しのぶがまるで人が変わったような調子で昌子と美智恵に怒声を浴びせたので、観客は驚きの表情を見せる。
「あなたたちはB級の牝犬奴隷。A級奴隷の言うことはぜ、絶対服従よ」
しのぶに決めつけられた昌子と美智恵はよろよろと立ち上がる。昌子は羽田や成田に、美智恵は朽木と赤沢にそれぞれ背中を押されるようにしながらステージに上がる。それぞれ緑と青の艶っぽいチャイナドレスに身を包んだ昌子と美智恵は健一の隣に立たされる。
「健一のオチンチンを元気にさせなさい」
「えっ」
しのぶのとんでもない命令に昌子は耳を疑う。
「聞こえなかった? 健一のオチンチンを元気にさせるのよ。お前のその舌と、乳牛のようなオッパイを使ってね」
「か、加藤さん……なんてことを」
美智恵がぱっちりした目を大きく見開きながら首を左右に振る。
「そ、そんなこと出来るはずがないわ」
「あら、逆らおうっていうの?」
しのぶは冷たい視線を美智恵に送ると乗馬鞭を振り上げ、美智恵の肩をしたたかに打ちすえる。
「ああっ!」
鋭い痛みに美智恵は悲鳴をあげる。
「加藤さん、何をするのっ」
抗議の声をあげる昌子の肩にも乗馬鞭が飛ぶ。2度、3度と鞭が奮われ、昌子と美智恵は痛みに泣き叫ぶ。
「やめてっ、やめてっ」

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