第173話 幼い贄(3)

昌子と美智恵はもはや開き直ったような気分になったのか、まるで健一を愛人に見立てたかのような本格的な愛撫を注ぎ込む。豊満な乳房で健一を「パイズリ」で責めていた昌子はいったん身体を離し、少年の若々しい肉茎にそっと接吻する。唇でその先端にチュッ、チュッと音を立ててキスをし、次に舌先でチロチロと鈴口のあたりをくすぐると、健一のそれは鉄のように硬化し、鎌首をぐいと持ち上げてくるのだ。
「あっ、ああっ……」
健一の口からまるで少女を思わせる小さな悲鳴が漏れる。次第に迫ってくる情感に耐え兼ねてしなやかな裸身をくねらせている美少年に注がれるを観客の視線は次第に熱気を帯びてくる。特に圭子、春美、文子、良江と言った女達、そしてホモセクシュアルの趣味を持つ村松の目は欲情にギラギラと輝き出すのだ。
一方の美智恵は悪戯っぽい笑みを口元に浮かべると、人差し指を健一の肛門にぐいと装填する。誠一によって散々開発され、その部分はすでに処女ではなくなっている健一だったが、それだけにそこから生じる快感は痛烈なものが有った。健一の肉剣はますます高々と隆起していく。
母親と同世代の熟女二人からねっとりと愛撫されている健一の身体がすっかり準備が整ったのを確認した香織は、勝ち誇った笑みを浮かべながらマイクを取り上げる。
「健一はじゅうぶん戦闘体勢完了のようです。それではいよいよ健一の童貞を奪う栄誉を担う女性を紹介します」
熟女二人と美少年の淫靡な絡み合いに見取れていた観客ははっと我に返る。これまでのショーはあくまで前座なのである。
スポットライトが思わせ振りにステージ上の奴隷たちを順にゆっくりと照らして行く。特に小椋家の三人、裕子、貴美子そして里佳子の上で光が止まるたびに、三人はブルッと小さく裸身を震わせる。
裕子は、さすがの香織もこの場で近親相姦を強いることはないだろうと考えていた。そうするとしのぶと香奈の二人は対象から外れ、有力な候補となるのは自分たち小椋家の三人である。
(どうせなら里佳子が……)
健一の相手になれば良い、と裕子は思う。里佳子も健一に続いてこのステージで純潔を散らさなければならない身である。それなら互いに好意を感じ合っている里佳子と健一が結ばれた方が良いのではないか。
(いや、それでは……)
まさかこの状態が一生続くことはないだろう。いつか里佳子と健一が香織たちから解放された時、その悲惨な初体験は二人にとって拭いようのないトラウマになるのではないか。それならいっそ自分が――。
裕子はそこで恐ろしいことに気づく。自分たちがいつの日か奴隷の身分から解放されることがあるのだろうか。
それに解放とはいったいどういうことを言うのだろう。以前のような家族での平和な生活のことか。
もしそうなら、その機会は永遠に失われてしまった。裕子にとってもはや帰るべき平穏な家庭はないのだ。それだけでなく、これまで属して来た地域社会、たとえば自治会や東中のPTAでの居場所も裕子は失っている。そこでは裕子は軽蔑すべき横領犯であり、友人であり自らのシンパであった昌子や奈美たち同僚のPTA役員を奴隷の身分に叩き落とした張本人なのである。
たとえこのAニュータウンから引っ越したとしても、夫婦、そして母娘の間に入った亀裂はもはや完全に埋まることはない。休みがちになっている大学講師の職もいずれ間違いなく失うだろう。
裕子はすべての身分、権利を剥奪された奴隷そのものなのだ。いや、南北戦争前のアメリカの黒人奴隷でさえ、奴隷同士の間で疎外されていなかったという点で、裕子よりはましではなかったか。
そんなことを裕子が考えていると、思わせぶりに左右へ踊っていたスポットライトが急に消され、ステージ上が真っ暗になる。
いきなりアニメーションの主題歌のような派手な音楽が鳴り響く。ざわめく観客たちをよそに、十秒ほどしてから再びライトが灯される。ステージの中央で明るいライトに照らされていたのは、セーラー服に似た扇情的な衣装と金髪のウイッグを身につけ、バトンのような棒をもち、マスクで顔を隠した少女だった。
「ご紹介します。本日のステージの特別ゲスト、少女Lです」
意外な展開に観客たちはどよめく。少女の隣には香織の娘の史織が、ボンデージ衣装を身につけた中学一年という年齢が信じられない妖艶な姿を晒している。
(誰なの?)
ちょうど自分と同じ年頃の少女がいきなりステージに現れたのに香奈はこの後自分を待っているおぞましい運命も忘れて驚き、かつ動揺する。金髪の少女はライトの明るさに目を細めながら、緊張と羞恥、そして恐れに身体を小刻みに震わせている。
「少女Lもまた舞台の上で兄やボーイフレンドの決定的瞬間を待つ香奈や里佳子同様、男を知らぬ処女です。自らの純潔と引き換えに想い人の童貞を奪う役割を担うべく志願した勇気ある少女に拍手をお願いします」
少女Lは観客の拍手に応え、バトンを手にもってステージ上で踊るように身体を回転させる。短いスカートがひらりと翻り、生々しい太腿と純白のパンティが露わになる。
「始めるのよ」
史織から肩をポンと叩かれた少女は無言のまま頷くと、健一に近づく。少女はバトンを床に置くと健一の身体に手をかけ、後ろ向きの姿にさせる。健一の少女のような丸い尻が観客の方を向く。
少女はバトンを取り上げ、いきなり健一の尻を打つ。
「あっ!」
健一の喉から悲鳴が漏れるとともに、二人の様子を見守っていたしのぶも驚きの声を上げる。2回、3回、少女はバトンを鞭替わりにして健一の尻を打ち続ける。さほど強い力ではないが、堅いバトンで打たれる健一の白い尻はたちまち赤く染まっていく。
リズミカルな音楽はここでスローな甘い旋律に変化する。少女は再びバトンを床に置き、健一の足元にゆっくりと跪くと滑らかな下腹部にそっと唇を当てる。昌子と美智恵の愛撫によってすっかり高められていた健一は少女のぎこちないその愛撫にも反応し「あっ」と小さな悲鳴を上げる。
少女の唇と舌を使った愛撫を、史織が隣からこと細かく指導する。
「もっと思い切って舌を出して……犬みたいにペロペロなめるのよ……そう、その調子よ」
そんな風に耳元で史織に吹き込まれながら、少女は徐々にそんな淫らな行為に夢中になっていく。
「ああ……」
少女は掠れたため息を上げながら、健一のそれを粘っこく愛撫する。時々史織が指先で少女に蜜のようなものを与えている。それをペロリと嘗めるたびに、マスクの下の少女の目がトロンと潤んでいくようである。
「そろそろいいみたいね」
ステージにこれも黒いマスクをつけた二人の男が現れる。体格から判断して黒田と沢木のようだが、二人は無言のままステージの床にマットを引くと、健一を仰向けに横たわらせる。健一はもはやすべての望みを捨てたように軽く目を閉じ、その瞬間を待っている。
「それじゃあ、つながるのよ」
史織の命令に金髪の少女は小さく頷くと健一を跨ぐような姿勢で立つ。曲調は再びダンス音楽のようなリズミカルなものに変化する。少女は軽く身体を揺らせながら身につけた衣装を次々に脱ぎ捨てる。少女は最後に薄いピンク色のパンティを脱ぐと、健一の顔の上にはらりと落とす。純白のその若々しい裸身がステージ上の香奈とほぼ同じくらいであることを認めた観客から改めて驚きの声が上がる。

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